- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396114206
感想・レビュー・書評
-
既読本。記録のため登録
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館でなんとなく手に取って閉館時間ギリギリまでかかって一気読みした。佐藤氏の著作を読むのは初めて。
キリスト教神学を大学/院で専攻したクリスチャンであり、外務省の元官僚という経歴が露骨に出ている著作だった。そういう人が、意識の高いビジネスマン向けに書いた広範的・雑多な教養啓蒙書といった印象。じぶんは意識が高くもビジネスマンでもないのでまぁ……といった感じ。国際政治のトピックについては勉強になった。経済学と法学の話題はサッパリだった。
基本的にリベラル左派ではあるが外交官という身から「愛国者」を自負しており、そこの歪みというか姿勢は逆に人間味・リアリティを感じられた。
柄谷行人をひたすらに信奉するのはこの世代の人だな〜という理解で片付けてしまって良いものか。
沖縄論に関して、2014年の県知事選でオール沖縄の翁長知事が当選したことを肯定的・希望的に評価しているが、こないだ読んだ目取真俊の対談集『沖縄と国家』で語られていた目取真による翁長評を思い出すとより多角的な印象が持たれる。
当時のウクライナ”危機”、プーチン大統領の思想やイスラム国(IS)のテロリズム、そして安倍晋三政権についてなど、2022年末のいま読むと、ここ数年で本当に世界が激動しているなあと痛感させられた。
外国語習得のコツは「時間とお金の投資」そして「語彙と文法」!という当たり前のことしか言ってくれない。その後の日本の教育政策批判も誰でも言えそうなこと。まあ文科省の人じゃないからしゃーないか。
「反知性主義」を批判対象として設定するのはいいんだけど、それに陥らないために大事だとして掲げる「客観性」と「実証性」の内実が曖昧なまま、さまざまな分野の、筆者が読んだ文献の引用の羅列で最後まで進むので乗り切れないまま終わった。
「目に見えないが確かに存在するもの(愛とか希望とか信頼とか)」にちゃんと向き合っていこう!という論調だが、それってふつうに陰謀論や反知性主義に相性がいいのでは?と思うことしきり。(そもそも”存在論”ってそんな単純なものなの?と訝しんだ。)
このへんは筆者の愛国主義や信仰心が関わっているんだろうな、というのはわかる。
-
面白かった…!そして怠惰な自分を反省しました。
ふんだんに本が紹介されてるので、ぼちぼち読んでみようと思います。
「反知性主義」っていう言葉を流行らせたのはこの人きっかけなのかな。
「実証性、客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度」と定義されてます。なるほど。
反知性主義がもたらす害悪とそこに陥らないための方法が書かれてます。
大変面白かったです。 -
本書は、いま、日本に蔓延している「反知性主義」について、具体的事例を紹介しつつ、それに対抗するための「知性」を体得するためにはどうすればいいかを提示している本である。
ちなみに「反知性主義」とは、「実証性と客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するような世界を理解する態度」のことで、歴史修正主義、ナショナリズム、国語力の低下などさまざまな局面で起きている、のだそうだ。
簡単にいえば、
・自分の発言の影響が想像できない
・一つの事実に複数の見方があることが理解できない
・他人の気持ちになって考えることができない
・事実に基づいた反証を受け入れない
という特徴がある人たちということだろうか。
そんな反知性主義に対抗するためには「知性」が必要であると、著者は説く。具体的には、
・読書によって優れた先人の業績を解釈もしくは再解釈して知性を復権すること
・他人の気持ちになって考えることができるようになること
・近過去に目を向け、そこで強靭な知力によって反知性主義と闘った人々の経験を追体験すること
・目には見えないが、確実に存在する人間の心の働きを、客観性、実証性、合理性よりも重視し、お互いの心を理解すること
等により、反知性主義を克服し、反知性主義者を公共圏から排除するのだという。
非常にいい内容だったと思うのですが、なぜ政権批判をしたのか。
著者は、売れるからと言って「嫌韓本」等の感情をむき出しにした批判本はいかがなものか疑問を呈しているが、この本のような「反アベ本」も同じように見られるのだということは理解しているのだろうか。
政権批判をしなくても十分にいい本だっただけに、その点が鼻についたのは残念である。
なお、「知性」を体得するための、読書術及び外国語学習法は参考になった。 -
佐藤氏が好きそうなテーマ。自分の生活と身のまわりのみ心配し、選挙に行かない、政治に興味を持たない、何かの事件には感情論をふりかざす「反知性主義」。安保関連法案には切り取った部分のみで賛成か反対。安倍首相はヤンキーがそのまま政治家になったようなもの、といった内容。
-
"反知性主義とは何かを定義することから始まる。
反知性主義とは、実証性と客観性を軽視、もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度のこと。
そうのような思考に陥らない知性を身に着けるためには、どんなことをすればよいのかを提案している。
「外国語上達法」千野栄一
「20か国語ペラペラ」種田輝豊
は読んでみたい。" -
オーディオブックで読了。
佐藤優さんの本は知らない世界を垣間見させてくれるので、結構好きです。本書の面白い所は、反知性主義とはどういうものかを検証する中で、知性とは何かを明らかにするアプローチです。
佐藤優さん曰く、反知性主義とは「実証性や客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度」ことであり、政治エリートや官僚が反知性主義に陥ることで日本の国益が損なわれるという主張が多く見られました。(そして、その事例のなんと多いことか)
日本という国も、私たち一人一人も、グローバル化の波に飲み込まれてしまっており、自分たちだけが正しいと考え「分からないあいつらがおかしい」としてしまうことは、他者(他国の人々)の理解を得られずに孤立を招く等不利益に働くのは確かです。安易に自己正当化に走らず、自分たちの言動にはせめて他者の視点を鑑みる心がけは必要だなと思いました。
一人一人が知性を身に付けること、或いは反知性主義に陥らないように注意することで、民主主義がポピュリズムに陥ることをある程度抑止できるかも知れませんが、中々に短期スパンでどうにかするのは難しいかも知れません。まずは、後世に社会をバトンタッチする我々現役世代が地道に取り組むしかないのだろうと思います。
はじめに
第1章 日本を席捲する「反知性主義」??安倍政権の漂流
第2章 歴史と反知性主義??ナショナリズムをどうとらえるか
第3章 反知性主義に対抗する「知性」とは? (1)言葉の重要性
第4章 反知性主義に対抗する「知性」とは? (2)反知性主義の存在論と現象論
第5章 どうすれば反知性主義を克服できるか?
第6章 知性を身につけるための実践的読書術
あとがき -
スコットランド独立運動を沖縄独立とを重ねた視点で書かれた琉球新報の記事が興味深かった。僕は沖縄は日本の一つの県だと普通に思っていたけど、沖縄の人たちの中には日本から独立(自己決定権の確立)したいと思ってる人もいるそうです。なので、スコットランド独立運動に対する見方が、そういう沖縄の人とそれ以外の人(例えば僕)で全然違うみたい。そういう自分の予想もしてないような視点を意図的に得るのは難しい。けど、大事なことだと思った。
-
レビュー省略
-
だいぶ前にかじっていたものを読み通した。
本書を購入するきっかけとなったのは、田坂広志氏の「知性とは正解のないものを問う力」という言葉に出会い、「知性とは何か」を探求したかったからだ。
本書は2015年に書かれている。
斎藤環氏の『ヤンキー化する日本』が引用されていたり、柄谷行人について言及していたりと、偶然にも私自身が最近または直近で気になっていたことと合致して嬉しかった。
佐藤氏の書物は難解に感じるものが多かったが、本書は理解できるところが多かった。
また、参考になる文献の紹介もあった。
しかし、それは佐藤氏が内容のレベルを下げているからだと推測する。
「知の怪物」佐藤氏にしては、ずいぶんと噛み砕いて書かれていた。
反知性主義に傾きそうな読者に知性を与えたいと考えて噛み砕いているとすれば、複雑な心境になる。
とはいえ、佐藤氏の「目に見えないもの」まで分析するインテリジェンスの力に触れることができた一冊であった。