まほろ市の殺人 (祥伝社文庫)

  • 祥伝社
3.37
  • (2)
  • (16)
  • (32)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 231
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396338145

作品紹介・あらすじ

まほろ市-そこは不思議な事件が勝手に集まってくる、普通に見えて、どこかおかしな街。春には幽霊の痴漢とバラバラ遺体が。夏には新人作家への一通の手紙から不思議な恋と親友の死が。秋には連続異常殺人が。冬には大金に目が眩んだ男の前に双子の兄の亡霊が。同じ街を舞台に、人気ミステリ作家四人が描く、息を呑む驚きのトリックの数々!傑作推理アンソロジー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  架空の街・真幌市を舞台に繰り広げられる、四季折々の殺人事件4編を収録したシェアードワールド・ミステリー。


     図書館本。
     元は祥伝社から文庫本として出版された4作を1冊にまとめたもの。確かに、うっすい文庫本を見かけた覚えがある。
     薄すぎて読み応えがなさそう、どうせ作者の短編集に収録されるんでしょ?と無視してしまった作品が一度に読めるのは有難い。お値段的にも、本書の方がたぶんお得(笑)。
     
     どの作品も、当時の作者の“らしさ”がよく出ていると思う。ファンなら読んでも損は無いのでは。
     ただ、やはり推理小説の肝は謎解きにあるわけで。やや長めとはいえ短編なので、風景の描写や雰囲気作りにばかりページを割くわけにもいかないし。シェアードワールドにする意義ってほぼ無いなあと思う。


    ◆倉知 淳「春 無節操な殺人」
     強風被害の相次いだ翌日、大学生・湯浅新一の周りでも事件が。幽霊に痴漢されたと憤る彼女・美波。7階のベランダから侵入しようとした男を突き落としたかもしれないと憔悴する、美波の友人・カノコ。しかし男が墜落した痕跡は何一つ無く、警察にも相手にされない。
     ところが一転、警察が本腰を入れて事情聴取を開始。市内の川で発見されたバラバラ死体と関係が……?
     美波の弟・渉も加え、新一と美波はカノコの容疑を晴らすべく調査に乗り出す。

     んん~、あまりにも事前情報が多すぎて、動機はともかく何がどうなったかは早い段階で見当がついてしまう。そこから延々と素人探偵たちの捜査が続くので、真相に気付いた読者には冗長と感じるかも。
     で、あの状況でそんなにはっきりと指紋が付くもんですかねえ。痕跡がどこにも一切無いってのもねえ……。


    ◆我孫子武丸「夏 夏に散る花」
     デビュー作を出したきり鳴かず飛ばずの作家・君村。そんな彼に19歳の女性から初めてのファンレターが届く。ファンレターの主・みずきと会った君村は恋に落ち、やがて恋仲となった2人は幸せな日々を送る。しかし、君村の友人・小山田の死をきっかけに事態は急変する。みずきとその妹、そして小山田……君村の周囲の人々に一体何があったのか?

     我孫子武丸らしい作品、かな?最近の作品はほとんど読んでいないのだけど。落ち着くところに落ち着いたというか、しっかりまとまった話だと思う。
     ただ納得いかないのは、主人公のモテっぷり。ハーレムラブコメよりもキャラ設定が甘くないか?!


    ◆麻耶雄嵩「秋 闇雲A子と憂鬱刑事」
     真幌市で相次ぐ殺人事件。被害者の側にいつも残されている小物の意味は? 人気作家・闇雲A子と、彼女に目をつけられた天城刑事が連続殺人犯“真幌キラー”を追うが、キラーの魔手はA子の近くにも……。
     殺人を嫌う怪盗・ビーチャムまでもが出現し、真幌市に平和は訪れるのか?

     これまた麻耶雄嵩らしい、読みにくい作品。ややアンチ気味の私にとってはかなり鬱陶しい書き口で、途中で思考放棄してしまった。
     細部まで熟読してはいないが、まあフェアな方かとは思う。ただねぇ……真相がしょーもないわ(笑)。


    ◆有栖川有栖「冬 蜃気楼に手を振る」
     蜃気楼に手を振ってはいけない、蜃気楼に連れて行かれてしまう……真幌市の子供たちが必ず聞かされる言い伝えだ。5歳の時、蜃気楼に手を振った三つ子の兄弟の1人・浩和は交通事故で命を落としてしまった。
     それから25年。認知症の母の介護費用、自堕落な兄弟・史彰の示談金と、金策に追われる満彦はオートバイの事故現場から大金を横領する。更に、それを警察に届けようとする史彰をはずみで殺してしまい……。 
     三つ子の最後の1人である満彦の行く末は?

     倒叙のように見せておいて、推理の要は別の所に! この真相、人によっては噴飯ものかも?! クイズが得意な人なら、見当がついてしまうのでは。
     サスペンスとして面白く読めたが、満彦の見通しの甘さが非常に気になった。警察ナメすぎ(笑)。

  • 倉知淳【無節操な死人】
    我孫子武丸【夏に散る花】
    麻耶雄嵩【闇雲A子と憂鬱刑事】
    有栖川有栖【蜃気楼に手を振る】
    全4編収録。

    架空の街「真幌市」を舞台に4人の作家が書き上げた短編集です。どれも「らしさ」を感じられる作品ですし、建物や人物など、どこかに共通点があるので、それを見つけるのも楽しいです。
    ベストは【夏に散る花】です。ひと夏の淡い思い出のような雰囲気から徐々に怪しくなっていく展開はとても惹き込まれます。トリックは比較的予想し易いのでやや物足りない気がしますが、それでも小山田が見破った伏線は良く出来ていますし、それぞれの揺れ動く切ない気持ちが表現されていて、中々の良作だと思います。

  • ”まほろ市”という架空の街を舞台にした競作。
    ラインナップはなかなか魅力的。
    ただ”まほろ市”という街をわざわざ限定した意味はないような気がするのが残念。
    地名などにミステリ好きをくすぐるお遊びが散りばめられていたので
    もうちょっとそこを利用して楽しませて欲しかったかな。
    ラストが悲しいのもちょっと残念、かな?
    そこは好みですが。
    どれも読み応えはあるので、後一歩なにかが欲しい感じ。

  • 真幌市という架空の街を舞台にした競作。四つの話が収録されているがそれぞれ作風の違いが出ていて面白い。余韻がめっちゃ残ったのは我孫子先生の「夏に散る花」かな。麻耶先生の話は中編で使い切ってしまうには惜しいぐらいキャラが濃くて流石麻耶先生といった感じ。

  • 架空の都市「真幌市」を舞台に、季節ごとに起こる事件を描いたアンソロジー。
    巻頭の地図に記された地名等に遊び心があって面白いですね。ミステリに詳しい方なら楽しめそう。
    舞台が共通しているだけに、もう少し作品間の繋がりが欲しかったけど、ユニークな試みには心惹かれるものがありました。
    願わくは、様々な作家さんによる続編が読みたいものです。

  • 『花の贈り物は隠れたメッセージ』

    まぼろし(まほろ市)がテーマのアンソロジー。ただの依怙贔屓だが我孫子武丸が一番。

    全体的に退屈。ページを捲るのが億劫だった。アンソロジーは新しいし出会いがあるので嫌いではないが、今回はハズレだったみたいだ。我孫子作品はなかなかに面白かったが、もう一捻り欲しかった。

    わざわざ買ってまで読む必要はない。

  • 三浦しおんさんの、まほろ駅前多田便利軒シリーズのまほろ市(町田市がモデル)とは、あんまり(というか、全然)関係がないようです。
    こっちは、漢字で真幌市。県警本部があるということは、県庁所在地、どことなく千葉県を思わせる要素がちらほら。と考えるのは無粋でしょうか。

  •  架空の都市を舞台にしたミステリアンソロジー。
    「蝦蟇倉市事件」を思い出したり。

     この短さでミステリが成り立つんだからすごいよね。

  • 舞台が同じで他の話とも繋がっている、というところは面白い設定だと思うが、真幌市を舞台にする必要が感じられない話もありそこは残念だった。「蝦蟇倉市事件」の方が設定が作り込まれていたと思う。

  • これだけ豪華な面子のアンソロジーには中々お目にかかれない。
    特に我孫子さんの作品が堪らなくいい。あっと驚く仕掛けに何とも切ないラストに胸が詰まります。

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

有栖川有栖の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×