- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396614379
感想・レビュー・書評
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読書録「ヘンな日本美術史」3
著者 山口晃
出版 祥伝社
P90より引用
“取捨選択の何処にオリジナリティがあるの
かと言われそうですが、それができるのはキ
チンと軸を持っているからです。軸があれば、
オリジナリティなどはそのゆらぎから生まれ
るようなものですから、すでに事足りている
のです。”
目次から抜粋引用
“日本の古い絵
こけつまろびつの画聖誕生
絵の空間に入り込む
日本のヘンな絵
やがてかなしき明治画壇”
画家である著者による、昔から伝わる日本
の絵を解説する一冊。
鳥獣戯画から明治期の絵まで、海外からの
影響や対比を混じえて書かれています。
上記の引用は、日本人とオリジナリティに
ついて書かれた項での一文。生きているうち
に自分ならではの何かを得たいのであれば、
人には見ることの出来ない基準をしっかりと
持つのが大切であるということでしょうか。
絵に素養があるからこそ、日本の絵の変な
ところや面白いところを楽しめるのでしょう。
私には、もう少し勉強してからのほうが楽し
めそうな一冊でした。
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タイトルが大上段すぎて勿体無い。もっと力を抜いても良いのでは。技術的な部分はよくわからないが、数点描かれる筆者の解説イラストがシンプルな線ながらグッとくる。これの点数をもっと増やすべきだった。
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めちゃくちゃ面白い本で一気に読んでしまった。
山口さんはとても好きな画家だけど、やっぱり面白い絵を描く人は、美術を見る視点も面白いものなのか。
描く人が語っているから、書き手の気持ちもあって面白い。
日本画から見た西洋絵画の見方も面白い。
現代から遡る視点で昔のことを考えてしまう誤ち
仕上げすぎない
上手が本当に上手になると、むしろ嫌味がなくなる
軸と崩し
人の「実感」というものが「正解」
「見立て」の面白さ -
絵画の観賞はそれなりに好きだけど、日本画は退屈な印象があっていままであまり見る機会を作っていなかったように思う。
本書を読んで、日本画に表現された「ヘンな」描き方の面白さや奥にある力強さを感じることができたので、改めてそういう感覚で日本画を眺めてみたい。 -
あたり一変の論評でない、絵画の技術を会得している専門家による論考だが、非常に素晴らしい.雪舟の「天橋立図」の解説も面白かったが、216ページの次の文言に共感する.「近代日本画は、西洋美術の向こうを張った、多分に対外的な日本美術を打ち出した」 最後の章で取り上げている河鍋暁斎、月岡芳年、川村清雄は重要な人物だと思うが、如何に知らしめるが重要だ.PR作戦の構築が必要だ.
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素人には難しい部分もあり。
でも山口さんの雰囲気?と山口さんの絵は好き。 -
日本画は線が大切、と聞いたことがある。
線の美しさを語る評論にも接してきた。
正直、線が美しいというのがどういうことか分からずに来た。
本書で、少しそれが分かったような気がする。
ダメな線というのは、「ボソボソした線」「ためらいながら描いた線」。
実際それらがどんなものかも、頼朝像から分かった。
以前読んだ藤森照信との『日本建築集中講義』では、藤森さんの攻撃をいなす人、という役回りだったような。
それで割とソフトな解説になるのかと思ったら、厳しいこともバンバン言っていた。
そのうちのいくつかは、私たち一般の鑑賞者にも向けられている。
例えば、素人は「小上手い絵」をやたら持て囃すという指摘。絵心とテクニックをどう評価すればよいのか、たしかに我々素人は分かっていない。ごもっとも。
最終章は「日本美術」が立ち上がる明治の画壇の困難を説明し、そこで埋もれていった河鍋暁斎他二名の再評価を行っている。
かなり力の篭った章だった。 -
透視図法とは異なる観点で遠近を表現していた日本の美術作品。その構造を教えてくれる。
そこに西洋から透視図法が輸入されて混乱。特に欧州の美術が発展していた時期だったために、留学生がそれぞれ新しい技法を持ち帰ったことの影響を説く。
透視図法による写実を身に付けながら浮世絵の画法も活かして対比して描いた月岡芳年の話は面白かった。 -
筆者の見識の深さと人柄のよさが存分に伺える本かと。
かなり前の現代アート展で作品にお会いして以来、
小さな追っかけ…というか、ただのファンです。
筆者の好みがありつつも結構有名どころの作品を抑えているのに、
ヤヴァイ。知らないぞ?という人も結構いたので、
今年は…まずこの本を中心に、知らない作家さんについて学んで以降と思います。