- Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396636241
作品紹介・あらすじ
消えてしまったあなたへ――
突然の失踪。動機は不明。音信は不通。
足取りを追って見えてきた、失踪人たちの秘められた人生。
喪失を抱えて立ちすくむ人々が、あらたな一歩を踏み出す物語。
「知っている人がいて欲しい」
主婦の上田亜矢子は、疎遠だった弟・和也が消えていたと知り驚愕する。
行方不明者捜索協会に依頼して、担当になった西山静香と、和也の行方を追うことに。
和也と時間を共にした人たちから聞かされる話は、亜矢子が知っていた弟とは違っていて……(「第一話 弟と詩集」)。
行方不明者捜索協会を訪れる依頼人と、そこで働く西山静香。
消えた人の人生を「物語」と呼ぶには、ある事情があって――。
捜索のはてに、彼らがみつけたものとは。感涙の連作集。
感想・レビュー・書評
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突然の失踪
動機は不明
音信不通
警察に届けてはみるが、大人の場合事件性がないと捜索はしてもらえない。
探偵事務所に頼む他にもいろいろな方法があるらしい事を作品で知りました。
行方不明者捜索協会(作中では)に訪れる依頼人を
サポートする女性・静香さんが冷静にサポートして
発見に尽力してくれます。
短編5話はどれも辛い話でした(*_*)
けれど見つからないままでは先に進む事ができない
失踪理由はさまざま、亡くなった理由も…
失踪してから亡くなるまでの物語
悲しい話だけど一歩前に進む希望のある結末です。
最終話はサポート静香さんのお話
静香さんがまた笑える日も近いといいな(^ ^)
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※
喪くした人との記憶を手繰り寄せることで、
大切な人を失った事実を少しずつ理解していく。
喪失を受け入れ新たな一歩を踏み出す物語たち。
故人の足跡を辿るとこは、残された人が
その人の物語は終わったんだと納得して
なんとか自分なりに物語を完結させるため。
事実かどうかが大事ではなく、
時には周囲の人がその人の死を納得しやすい
物語であってもいいのではないか。
だから残された人が物語を“編む”んだな、
とストンと心に落ちてきました。
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行方不明捜索協会は、警察の捜索とは違う民間企業で行方不明の方を主にネットやSNSを使って情報を集めたり調べたりする。
生きているのかどうかは、念のために遺体で発見された身元不明情報が掲載されている警察のホームページをチェックすることが先決である。
突然消えた人の人生には、なんらかの事情がある。
知っている時の記憶を思い出して、遡ってみるが
失踪してからの期間がかなりあるとその間の失踪人たちの事情が違って見えてくる。
ここには、それぞれ5つの物語がある。
弟や大学の同級生や夫や社長、そして実母とすべて亡くなっていたのだが、いちばん心に深く残ったのは、第一話の「弟と詩集」である。
ずっと疎遠だった弟の人生を知ることにより、いつも誰かのことを考えて親切にしてたと聞かされるだけでも安心するものである。
寂しかった人生だったのかも知れない…
だが、弟のことを嫌わずにずっと思っていけるのではとそして今の生活に丁寧に向き合えるのだと感じられた。
動機不明で音信不通の中、失踪者を知る人たちから自分の知らない失踪者の人生を見る。
それがとても辛いものであっても知ることで、思いだして記憶に残すことは、大切なんじゃないかと思った。 -
行方不明者を探す団体があるのは初めて知りました。
いなくなった人を探す人々に寄り添った話。
どれも辛い話ですが、自分なりの結着をつけるのは大事なのかなと思いました。
生きるということは辛いこと。そう知らされた本です。 -
第三話以外はかなり辛かった。
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疎遠になった家族や親しい人が、実は孤独の中亡くなっていた。
その死を確認するため、受け入れるため、行方不明者捜索協会の手助けを借りてその人の生きた人生を追う――。
連作になっていて、タイトル通り悲しい別れをした人が登場する。亡くなったことを知る時は絶望するけれど、当時を知る人たちから話を聞いていくと、また少し変わった見方ができるようになる。
でも、やはりどのお話もつらい。幸せに天寿を全うしたという死ではなく、自死や事故死によるものなのでやはりつらい。
色々考えさせられる一冊だった。 -
人が亡くなった場合、お葬式またはお別れ式や最近ではシンプルにお見送りのみをして火葬へと流れます。これは亡くなった人を送る儀式でありながら、残された人達が別れを実感するための儀式でもあります。この本では行方不明者を捜索しますが残念ながら皆亡くなっています。儀式がないまま亡くなっていると、亡き人の死を実感できなないので気持ちの整理がつかないことがあるでしょう。それを行方不明創作協会のサポート部のサポートを受けながら生前の亡き人を知ることで気持ちに整理をつけていくというお話で、まるでお葬式の儀式に似ているように感じました。
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この本はまたとてもとても良かった。
人間に必要なのは、真実ではなく物語、というキーワードにぐっときた。