挿絵画家ア-サ-・ラッカムの世界 (ビジュアル選書)
- KADOKAWA(新人物往来社) (2011年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
- / ISBN・EAN: 9784404040183
感想・レビュー・書評
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ブク友さんのレビューで「しまった、読もうと思っていたのに!」と急ぎ借りてきた本。
教えて下さったブク友さん、ありがとうございます。
アーサー・ラッカムという名前を聞いてピンと来なくても、この表紙画像だけでも見た覚えがある方は多いかと。中を読めばますますその感は強くなること請け合いで、どこかで見た・・・でもどこだったろう?と記憶の糸を手繰り寄せる作業になりそうだ。
ひと言で言い表すなら、そんな「懐かしい絵」と言える。
1867年ロンドン生まれの挿絵画家さん。
英国の昔話や民話に頻繁に登場する妖精さんたちが、随所に描かれる。
特徴的な、精密な線画に淡い色彩の水彩を施してあり、色数はごく少なく、あっても同系色か差し色にスモーキーな赤や蒼が入る程度。
幻想的で美しく、時に恐ろしく、雄弁な絵画だ。
載っているのは「ワンダーブック」「不思議の国のアリス」「ピーター・パン」、そして「真夏の夜の夢」、圧巻はブク友さんおすすめの「ニーベルングの指環」。
ワーグナーのこの超大作は、4日間で合計15,6時間を覚悟しなければならないというとんでもなく壮大な話で、三枝成彰さんによれば「決して初めてのオペラ鑑賞に選んではいけない作品」だと言われる。理由は「辟易して、オペラが大嫌いになるから」らしい(笑)。
人間の終末、キリスト教の終末、そしてドイツの神話物語と、様々な見方があるこの話を挿絵で表現したというその一枚一枚が、まことに力強く美しい。
水の流れ、乙女たちの黒髪、空気や雲の流れ、登場人物の表情や衣装などが、時に話以上にドラマチックで見飽きない。
どの絵も解説付きなので、原話を知らなくともついていけるが、絵そのものの魅力に囚われてしまいそうだ。
ここでは「絵を見る技術」は必要ないかも。
そんなワタクシは子供の頃「不思議の国のアリス」の挿絵で知った挿絵画家さんだ。
「総論」によれば、1907年にこのお話の出版権が消失したそうで、多くの画家がアリスの挿絵を描いたのだそうだ。
ところが、ラッカムの描いた等身大のアリスは酷評だったそうで、何だか意外な話だ。
それ以降は「鏡の国のアリス」の依頼も断ったというが、人気は落ちることなく上記の「ニーベルングの指環」や「イソップ童話集」や「マザー・グース」などを次々に手掛けている。
数々の歴史的名作が生まれた土地だからこそ、その挿絵文化も黄金期を迎えたのだろう。
印刷技術が発達していった時代というのも、大きな推進力だ。
ところで、アリスの挿絵に登場する「賢いドードー鳥」に憧れた小さな私は、その後人間たちの乱獲によってこの鳥が絶滅したと知り、さめざめと泣いた過去がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アーサー・ラッカムは19世紀末~20世紀初頭にかけて活躍した、イギリスの挿絵画家。
本書は、『ワンダー・ブック』『不思議の国のアリス』『ケンジントン公園のピーター・パン』『真夏の夜の夢』『ニーベルングの指環』を収録。
髪の毛まで書き込んだ繊細な線と、セピア調の彩色が印象的。幻想的な雰囲気と豊かな物語性が持ち味である。
表紙のような愛らしい『不思議の国のアリス』が、失敗作として酷評されたというのは意外だった。
しかし、不思議の国の住人が生き生きとしているのに比べると、アリスは傍観者のように無表情。ハートの女王に喧嘩を売るような図太さもアリスの魅力なので、ラッカムのアリスは少し物足りない。
私が好きなのは、『ニーベルングの指環』。
まばゆい光や吹きすさぶ風がこちらにまで届きそうで、迫力のある画面に圧倒される。また、ブリュンヒルデやライン川の乙女たちの神秘的な美しさが際立っている。
どの作品も細部まで描き込まれているので、ゆっくり楽しみたい。 -
緻密に描かれたペンラインと優しい色合いの水彩絵の具で描かれたA・ラッカムの作品。この本では『不思議の国のアリス』をはじめとする5作品のあらすじとともに、彼の180点の挿絵が堪能できます。
読んだことのない物語でも楽しめ、昔読んだ懐かしい物語はも1度読みたくなる1冊です。
(natural color) -
『真夏の夜の夢』のモノクロームの絵はビアズリーを想わせる。そして、『ワンダーブック』の子どもたちが林檎の樹の周りに集う絵はケイト・グリナウエイにも似ているし、全体にはバーン・ジョーンズの雰囲気もある。同時代のイギリスに生きた彼らは、相互に影響を与えあいながらも、それぞれに個性を横溢させている。絵の持つ物語性という点では、ラッカムがあるいは1番かも知れない。アリスは不評だったらしいが彼の描く少女は実に愛らしいし、またブリュンヒルデはこれ以上のものを想像できないほどだ。いずれも幻想がまさに眼前に出現する絵だ。
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イギリスの挿絵画家・アーサー・ラッカム。簡単な解説と、5つの作品を物語と挿絵とで紹介しています。
セピア色とその画風が、古き良き…といったどこか懐かしい感覚を覚えます。女性や妖精の絵などで今でも見かけるため、絵に詳しくなくても見たことのある人は多いでしょう。全体がセピア色ですが、「ケンジントン公園のピーター・パン 28」や「真夏の夜の夢 22」のように青系の絵もいい。
「ケンジントン公園のピーター・パン」「ニーベルングの指環」などは絵もいいが話も面白くて、思わず夢中になって読んでしまいました。おおまかな内容でも全く知らなかったので、面白かったです。 -
本当に綺麗!!!
ただ可愛らしいだけじゃなく、邪悪な感じのする妖精達。
真夏の夜の夢は特におすすめです♡
まぁ、不思議の国のアリスに関してはジョン・テニエルの挿絵の方が好きですが。。。 -
98ページの困惑するヘレナ(真夏の夜の夢)の絵が一番好きです。
もちろん挿絵メインなので物語がすっ飛ばされるのは仕方がないのですが、飛ばしすぎじゃないかと思わなくもない。
アリスはかわいいが、確かに生々しさがあるなとは思う。
画家自身をモデルにしたいかれ帽子屋は、本気で似てて笑った。デフォルメしつつここまで似せるとか。
ニーベルングの指輪は、神々の名前がどこの国の呼び方なのか、一般的な北欧神話の呼び方でなかったので若干困惑した。
人間の名前に合わせるとそうなるんだろうか。
ケンブリッジ公園のピーター・パンは、そんな元話があったのかという点の方に注目してしまった。
この話こそ、妖精画家の真骨頂だなあと思いました。人間と動物と植物とそれ以外のものが、全く違う頭身で描かれているのになにも壊さない。
好きな絵です。 -
★P.N ガブガブーブさんのおすすめコメント★
セピアな世界に描かれた豊かな表情の人物や動きを感じさせられる絵の構図が「不思議の国のアリス」や「真夏の夜の夢」など物語をより深く表現されています。
いざ、絵の物語の中へ!!!
OPACへ ⇒ https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=9000800742 -
大好きな挿絵画家です。この本は時々眺めてニンマリする本ですね。(ビアズレーとの接点を始めて知りました)