必然という名の偶然 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408551173

作品紹介・あらすじ

結婚式会場から姿を消した花嫁が。見知らぬマンションで夫が、名簿に名を連ねる同窓生たちが。嵐の夜に学校で妻が…。"腕貫探偵"シリーズでお馴染みの"櫃洗市"で、住人たちが次々に変死する。腕貫さんなくして謎は解けるのか?大富豪探偵・月夜見ひろゑが驚くべき方法で事件解明に挑む!殺人街と化した櫃洗市での奇妙・珍妙な事件を描く連作ミステリ6編。

感想・レビュー・書評

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  • 櫃洗市が舞台の連作短編。しかし、腕貫探偵はいない。最初と最後の事件は登場人物が共通しているが、後は別に人物が登場する。男女のどろどろや嫌な関係のものが多いし、ほとんどが後味が悪い。恐らくはそれを狙っているのだろう。ただ、倉橋君と鍵谷由衣さんは上手くいってほしいな。後日談はあるかな。

  • 短編集だった。腕貫シリーズを全く知らずに読んでたので、全くバイアスなしで。

    1つ1つの短編は濃度の違いはあれ、おもしろかった。時間をいじった叙述トリックとか。

    必然という名の偶然…。あくまで短編を束ねてるに過ぎず、全体を貫くテーマという訳では無いと思うんだけど、本のタイトルにした以上、なんらかの必然性がほしい。すべてが偶然の上に成り立つ事件だったことは間違いない。だけど、それが「必然という名」という言葉で括れるんだろうか?と考えると、ちょっと違う気もする。むしろ「偶然という名の偶然」というか。もちろん事件の背景にはなんの理由もきっかけもないということはありえないから、何かしらの必然はあったんだろうけど、それを偶然で包み込むためには相当な必然性を要するみたいなパラドックスが起きそう。書いていて、偶然ってなんだ?ってなんだかわけがわからなくなる(笑)。

    解説を読む前にこの感想を書いたのだけれど、解説には「論理のアクロバット」とあった。ふむ。ネガティブに捉えれば、読む人にとっては、論理的ではない(というか現実的ではない?)という評価になるかもしれないということだろうか。このあたりに必然と偶然の線引や定義があるんだろうと思うし、論理とコンテクスチュアルな要素をわけて考える必要があるということなのかもしれないなと感じた。

  • 腕貫探偵のスピンオフ?

    シリーズでお馴染みの登場人物も出てきますが、腕貫探偵が不在なことで物足りなさは感じました。
    事件は解決してるけど、なんとなく腑に落ちない感じ。

  • 腕貫探偵シリーズの番外編。
    前作のモラトリアムシアターを読んでから今作を読んだ方が私的には良かったのかも。

  • そんなキャラ強くないと思ってたのに
    いざ腕貫さんがいないと途端に味気ないというか。
    連作なのにまだ救われたけど
    大富豪探偵だけじゃちょっとはまりきれないみたい。

  • 櫃洗市を舞台にした短編集。大富豪探偵月夜野ひろゑは最初と最後の2編に登場。1、男のくだらない見栄で殺された二人と残された人がかわいそう。最終話で残された二人に新しい未来が訪れてよかった。2.すっかり騙された。榎本裕子が犯人かと思った。3.一つの考えに固執しちゃいけないのね。でも偶然?4.最後まで読んで「えー、そっちにいっちゃうの?てかこの女子高生なんなの」5.奥さん夢の為にだんな殺そうとしたの?こわっ!!6.いじめたほうは忘れてもいじめられたほうは忘れない。

  •  腕貫探偵が登場するシリーズの櫃洗市が舞台だけれど、腕貫さんは登場しない短編集。
     大富豪探偵の月夜見ひろゑさんが登場したり、氷見さんと水谷川さんが登場したりはします。

     おもしろかったけど、じっくり読み込まないと混乱してわけが分からなくなる話もあったかな。
     それが狙いの話だったんだろうけど。

     「必然という名の偶然」の嘉穂ちゃんがよかったー。
     江原さんのキャラ設定はよく分かんないけど、まぁその設定あってこその嘉穂ちゃんかな。
     これからも嘉穂ちゃんが出てくること、ないのかなー。

     それにしても、「人殺シティ」て、表現うますぎでしょ。

  • 〇 概要
     櫃洗市を舞台としたミステリ。大富豪探偵,月夜見ひろゑが探偵役を務める作品が2作品,氷見,水谷川の二人の警察が活躍する作品が2作品,探偵役が登場しないミステリが2作品。「日常の謎」系とはいいながら,殺人事件も多く、「腕抜探偵」シリーズより,ミステリっぽさは上がってる。

    〇 総合評価
     櫃洗市を舞台とした短編が6つ収録されている。一番面白いと感じたのは「鍵」という作品。これは,倒叙ものっぽい話で,ミステリとして十分楽しめる。大富豪探偵である月夜見ひろゑが登場する話が2つあったり,氷見,水谷川の警察コンビが活躍する話もあったり,櫃洗市シリーズらしい雰囲気がある作品もあるが,そうでもない作品もある。全体的にブラックなテイストの話が多いが,何よりとりとめがない話が集められているという印象。つまらないという訳ではないが,面白みもそれほどなく…平凡な短編集というデキかな。

    〇 エスケープ・ブライダル
     倉橋譲という男は,大学時代に結婚を約束した女に逃げられ,その後も2度,結婚式前に女に逃げられている。数年前には結婚式当日にほかの男と心中され,今回が4度目の結婚式へのトライ。その結婚式に呼ばれた恵本角樹と岡館眞人が主人公。恵本角樹と岡館眞人は,ことあるごとに賭けをしていて,前回の結婚式では恵本角樹は「今度も逃げられる」に賭け,あろうことか仁科純代という花嫁を鎮西耕平という人物に拉致監禁させ,口封じのために心中に見せかけ二人を殺害していた。そのことに疑いの目を向けていた鍵谷由衣という女性が,倉橋譲の4回目の結婚式の花嫁になるという偽装工作を行い,恵本角樹に「今度は逃げられない」に賭けさせ,何らかの動きをしないか,監視していたのだった。裏で大金を使ってこの計画をサポートしたのが大富豪探偵の月夜見ひろゑだった。
     恵本角樹の犯行の動機にさっぱり説得力がない。恵本角樹視点で描かれている部分があり,少し叙述トリックっぽい記述もあるのだが…いくらなんでも荒唐無稽過ぎる。意表を突くストーリーではあるのだが…。

    〇 偸盗の家
     テレビのローカルニュースで有名な女子アナウンサー「榎本裕子」が主人公。この作品は,時制を錯覚させる叙述トリックが使われている。榎本裕子の夫である「榎本忠純」が殺害され,裕子の娘「智恵美」が容疑者になる。真相は,裕子は「榎本忠純」という男と別れ,同姓同名の男と再婚しており,最初の夫があとの夫を殺害したというもの。時制の叙述トリックを使われているのだが,ミステリというより奇妙な設定を楽しむ短編。なお,氷見と水谷川の刑事コンビが解決にあたる作品である。

    〇 必然という名の偶然
     標題作だが,それほど面白くない。主人公「江原広和」のところに,旧友の「研野太加嗣」から電話が掛かってくる。研野は,同窓会名簿の7番目の名前の男が謎の死をしていること気付いたという。最新の同窓会名簿で7番目の名前になっているのが「江原」であり,事件が起きるとすれば今夜だという。探偵役を務めるのは広和の姪の嘉穂。研野は過去に何らかの犯罪を起こしてしまった様子であり,そういった経緯から注意して同窓会名簿を見るようになり,この偶然に気付いたのではないか。結局,江原は死なず,代わりに羽生野由佳という女性が死んだ。そして研野が自首をする。さらっと読んでしまったが,オチらしいオチもなかった。何か,裏があるような気もするのだが…。

    〇 突然,嵐の如く
     和田宏という男性が主人公。宏は高校教師である。宏の妻は櫃洗高校の駐車場で,駐車場で火だるまになって死体となって見つかる。どうやら,宏の妻は不倫をしていたようであり,その痕跡を隠すために,火を付けようとして事故死した様子である。オチは,二三枝から宏が迫られるというもの。短編小説のデキとしてはいたって平凡。登場キャラもそれほど魅力的でもない。作品の設定としても,櫃洗市が舞台である必然性も乏しい。

    〇 鍵
     萩本昌司その妻,里恵が主人公。昌司が,里恵をかつて住んでいた部屋で誤って殺害してしまうが,実は,里恵が昌司を殺害しようとしていたという話。倒叙ものっぽいが,昌司が犯人であることがばれたのは,奇妙なオブジェがある部屋に入った際に,全く驚かなかったことを氷見と水谷川が不審に思ったからというもの。これはミステリとしてなかなかよくできた作品。ただ,櫃洗市が舞台である必然性は乏しい。

    〇 エスケープ・リユニオン
     再び月夜見ひろゑが登場。同窓会名簿の住所などを手掛かりにいろいろと推理をするが,いろいろあって竹原という人物が長渕という男を殺害してしまうという話。登場人物こそ,エスケープ・ブライダルと同じだが,まぁ,ごく平凡な話

  • 腕貫探偵が出張中にて不在の櫃洗市を舞台にした事件簿。
    おなじみの面々や、他作品に顔を見せた人々も出てきます。が、モラトリアム・シアターて読んだことないわ。探そう。

    ところで人殺シティの語呂の良さというか、おいおい、的な。
    事件が起こらないと話が進まないけれど、事件が起こりすぎるまたもやだなあ。

    読んでる分には面白い(不謹慎)なんですが。大富豪探偵の活躍を期待したいけど、一冊全部に出てくると、胸焼けしそう。

  • 短編だったので物足りなさも。

    3時間ほどで読了。

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著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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