星がひとつほしいとの祈り (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408551456

感想・レビュー・書評

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  • 原田マハさんの本を初めて読みましたが、とても丁寧で綺麗な文章を描かれる方だという印象を受けました。方言や言葉遣いの違いで人柄がよく表現されていたし、情景を想像するのがとても楽しかったです。


    複数の短編集に、不倫を経験している女性が登場していました。パートナーのいる男性と関係を持った女性は不幸な思いをして深く傷つくことが多いと思いますが…登場する女性の悲しみが痛いほどに分かるようになっている自分に気がつきました。これは、きっと報われない恋をして傷ついてみないと分からない感覚でした。純粋で綺麗な恋愛だけしてもわからなかった気持ち。私は知らないうちに、少し大人になれたのかなと感じることができました。
    短編集の出来事含め、不幸な境遇にある時は確かに辛いです。しかし、その苦しみが人間くさく生きていくことや、他者の痛みを理解できるようにさせてくれる。不幸も人生を豊かにしてくれるのだと思わせてくれる一冊でした。辛いことを経験した人は、きっと強く生きていけます。

    原田マハさんの他の作品も必ず読みたいです!

  • 綺麗なタイトルに惹かれ購入した。様々な年代の女性の姿を優しく描いた短編集。
    不倫していたり、不義の子を妊娠出産していたり…登場人物にはいまいち共感できなかったが、少し泣ける優しい話は気持ちが静かになれて良かった。色々な土地を舞台にしており、それぞれ方言で書かれているので、それがまた優しい雰囲気を作り出している。
    「長良川」と表題作、そして先日読んだ『さいはての彼女』にも登場したハグとナガラが出てくる「寄り道」が特に印象的だった。

  • どこかに死が絡んでくる短編7編

    寂しさと悲しさが漂う

  • 舞台は大分県日田市の夜明地区、白神山地、佐渡島、道後温泉、岐阜の長良川、高知四万十川の沈下橋など。
    どこにでも人の営みがある。生と死、迷い、祈り、希望、女性たちの心のひだを丁寧に拾い上げて見せてくれる。
    原田マハさんの女性に向ける眼差しの優しさに心打たれる。
    日常を離れた旅先にも出会いがある。いいなぁ。

  • 「本日はお日柄もよく」からマハさんの虜になった私ですが、「奇跡の人」などとは又違うマハさんの魅力がありました。特に題名と同じ「星がひとつほしいとの祈り」が私のお気に入りです。わたくしの小さな祈りはほかのどなたさまが叶えてくださる。そんなふうに思う。ヨネがいつか創ってくれると約束した一篇の詩私のために書いて下さい。人は皆星が欲しいものなんですね。

    • musimmさん
      私も同じく本日は~から、はまってます。そして同じく星が~のお話の中から、読後しばらく抜け出せずにいました。
      これからもマハさんの作品を大切に...
      私も同じく本日は~から、はまってます。そして同じく星が~のお話の中から、読後しばらく抜け出せずにいました。
      これからもマハさんの作品を大切に読み進めて行きたいです。
      2022/04/27
    • shokomamaさん
      そうですね。マハさんの作品は、キュレーターの顔で書く作品や政治的な作品と「星がひとつ〜」的な胸キュンな作品と変幻自在な所がとても好きです。今...
      そうですね。マハさんの作品は、キュレーターの顔で書く作品や政治的な作品と「星がひとつ〜」的な胸キュンな作品と変幻自在な所がとても好きです。今読んでいるのは飛ぶ少女ですが、震災の話です。本当に様々な設定で読者を楽しませてくれますよね。確か旅物もありますよネ。また感想待ってます。
      2022/05/07

  • 夜明けまで
    星がひとつほしいとの祈り
    寄り道
    斉唱
    長良川
    沈下橋

    全7作

    女性の人生における分岐点での其々の判断、
    その判断よって開けた時間と閉ざされた道。

    どれを選べば正しいと決まっていないし、
    どれを選んだから間違いでもない。

    さまざまな土地の方言が物語に生々しい命を与え、
    登場人物が話の中で今も生きて息をしているように
    感じさせる。


    正解なんてない、だから失敗もない。

    星がほしいなら星を求めて進む。

    寄り道だって無駄じゃない。

    例え一度手放した花でも、
    永遠に手にできないわけじゃない。

    抱えきれない思いがあるから夜明けを瞼に
    焼き付けて踏み出すことも選べる。

    声をかぎりに求めて叫ぶこともできる。

    本人が望めば、思い出や記憶は悠久に続く
    穏やかな川の流れのように絶えることはない。

    仮に沈むことがあっても、
    じっと耐えて水を受け入れて
    時がたち未だ浮き上がればいい。


    色んな人の時間を見せていただきました。

  • 『寄り道』が好きでした。第一印象最悪なところからなんとなく打ち解けて、菜々子が心で踏ん張ってたところをほぐしてあげるおばさん2人。
    年齢はおばさんになっても、心までおばさんになってはいけないな。お上品に歳取ろうと思ったし、両親や家族は大切にしようと思いました。

    原田マハさんは何かしらハンディ抱えた人の小説が多い気がする。今回も全盲のマッサージ師とか心閉ざした少女が題材になった話もあった。でもいつも出てくる人が生き生きしてて、読んだあとすっきり温かくなります。

  • 7つの物語が入った短編集

    それぞれの物語ではそれぞれ女性たちが人生で悩んでいる。

    舞台はいろんな地方の町がでてくる。
    自然や人の温かさに触れて、希望を持ち次へ足を踏み出そうとする。

    悩んでる人には勇気や希望を優しく与えてくれる本とおもった。

  • 今回のマハ作品は珍しくシリアス(シニカル?)な作風。
    どこか影がある女性たちに物語の最後に訪れる星(希望というか、光と言うか…)
    20代~50代の女性たちの短編集。20代から後半につれて年代が上がっていく。
    希望は必ず訪れる、とか、年を重ねるうちに懐の大きい女性が美しい、などの感想もあるけれど、物語のどこか気だるげな闇に浸かるべきなのか迷うところだ。
    とりあえず作品中の不倫する女達は、どこか不幸なオーラをまとわり付かせているようにしか見えないし、共感できないので、「そうなんだ。」と相づちを打って早くこの時間終われ~としか考えられないなぁ。
    婚約者がいる人を好きになって、相手とキャットファイトとか、感情を優先しすぎて道ならぬ恋で破滅するより、信頼できる人と温かくてほのぼのお茶飲んで語り合う関係が1番いいな。としみじみ思った。

    椿姫
    トップバッターから中絶の話。香澄は不倫相手の子供を妊娠して、産婦人科を訪れたら、妊娠した女子高生と鉢合わせる。
    等しく命を授かったもの同士なのに、双方幸せな空気を感じない。好きな人の子供を授かって喜ぶには、あまりにも体系化された世の中になってしまったのだろうか。彼女らのテンションの低さと、産婦人科の近くにあった椿の赤、父親になるんですと喜ぶ男子高校生のギャップがなんだか違和感。

    夜明けまで
    大女優だった母あかりが亡くなり、セネガルから急遽帰国したひかり。
    母の遺言で、理由もわからず九州の田舎くんだりまで母の遺骨一欠片を持って出かける。
    そこで知る母の故郷と、自分の出生の話。
    自分には妻子がいる人に惹かれる、という感覚が理解できないので、へぇと言う感じだったのだけど、セネガルで生活すると、古いと敬遠される焼き物や陶器すら新鮮に感じる。という感覚と親近感が急にわくというのはわかるかも。

    星がひとつほしいとの祈り
    売れっ子コピーライターの文香。
    思い通りにいかないのは恋愛だけ。
    いつも妻子持ちの男を好きになり、今回の出張もその男と一緒に行動するため。
    子どもの元へ帰る不倫相手への当て付けのように泊まった道後温泉の宿。盲目の老婆が語る戦争の話。マッサージを受けながら聞く、お嬢様だった老婆の家庭教師への恋と妊娠。疎開先での死産。
    そのどこへも一緒だった女中のヨネ。
    彼女がそらんじた詩集の言葉から優雅さと知性を感じ、戦争という不穏な空気と、不倫やら密通やら恋愛に伴うドロッとした感情がアレコレ混じってぐつぐつしたところで夢オチで霧散する。

    寄り道
    波口喜美ことハグと長良妙子ことナガラは大学時代の友人。気ままな友人二人旅で秋田県の白神山地世界遺産ツアーに参加する。そこに1人で参加する若い女。山歩きなのにヒールで、蒸し暑いのに黒ずくめ。
    ナガラが親切心で貸した扇子も乱暴に扱われて割けてしまい、一気に嫌な雰囲気に。しかし話を聞くと、彼女の服は喪服で、今日行われる母親の葬儀に参列する前に寄り道をしたかったのだという。いろんな事情があるもんだ。

    斉唱
    妻子ある男の子供を妊娠し、認知してもらえずシングルマザーとなった梓は、娘がある日から人形じみ、感情を出さなくなり、一時的な神経症と診断される。
    それでも日々の暮らしに奔走していると、娘が体験学習で、佐渡島のトキの保護センターでビオトープ活動をすることに興味を示す。
    珍しく反応を示す娘の為に佐渡島行くと、普段は生活に追われて興味も持たない野鳥の保護や、絶滅した日本産まれのトキの話を聞く。活動の為に田んぼに入る娘に、そんな事したことないのよ!と声高に叫ぶと、保護センターから放逐されたトキも同じだ、と諭される。
    なんだって経験させてみなければわからない。
    体験学習で、好きな鳥に関われたからなのか、普段の窮屈な生活から解放されたのからかは不明だが、娘の感情を出す姿に、梓も自分の心が軽くなるのを感じる。

    長良川
    娘が結婚することになり、旦那になる義理の息子と娘と長良川へ旅行へ来た堯子。去年は夫と二人で同じ旅館へ泊ったのに。。。と半年前に亡くなった夫との記憶を振り返る。一年前、同じ場所で、病院の検査結果とともに、自分が亡くなったあとの話について話された。
    一緒に過ごした幸せな日々。ごく平凡で、穏やかな。地味だったけれど安息に満ちていた日々を川の景色を眺めながら振り返る。
    雄大な雰囲気に少しかなしく、少しあたたかいストーリーだった。しんみりする。

    沈下橋
    よく沈むからあらかじめ沈むことを想定して作られた橋。
    食堂で働く多恵は、ニュースである芸能夫婦が麻薬で逮捕されることを知る。
    女優は元・義理の娘というややこしい関係だった。
    離婚した今、他人に戻った元・娘から連絡が来て、話を聞く。

  • 眠る前に軽く読むには、丁度良いくらいの
    短編集。

    …と、思っていたのだが
    就寝前の語り部として原田さんは如何なものか。
    「さ、おしまいですよ。もう眠りましょう。」
    と、お布団をかけられ、トントンされても
    心がうるうるしちゃって眠れないっ。

    それでもいつの間にか朝になり、
    (泣きながら眠るなんて、
     少女の頃以来だなァ…。テヘ。)
    なんて、鏡に向かうと
    写っていたのは真っ赤に腫れた目が痛々しすぎるただの現実。

    就寝前泣きの小説には要注意かな。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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