症例でわかる精神病理学

著者 :
  • 誠信書房
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本棚登録 : 160
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784414416442

作品紹介・あらすじ

「ドイツ、フランス、そして日本で花開いた精神病理学の遺産を、著者は現代に引き継ごうとしている。入門書でありながら精神病理学の未来を見据えた意欲的な本である。」 ── 木村 敏(京都大学名誉教授)

精神病理学は、ときに難解とか抽象的といったイメージをもたれることがある。けれども本当は、統合失調症、うつ病、認知症、自閉症などの精神障害を「わかりたい」と思う全ての人にとって、大きな助けとなる実践的な営みである。もっとたくさんの人たちに、精神病理学が積み上げてきた叡智を知り、役立ててほしい。本書は、そんな強い思いのもと生まれた入門書である。だれでも読み通すことができるように、次のような工夫が施されている。

・各章を精神障害ごとに分け、冒頭で『DSM-5』対応の最新の基礎知識を概説し、全体の見取り図として学説史などを紹介。
・精神病理学の代表的な考え方――記述精神病理学・現象学的精神病理学・力動精神医学ごとに節を設け、それぞれの主要な学説を網羅。
・かならず症例を提示し、具体的・実践的に解説。
・わからない言葉があれば索引ですぐに確認可能。索引は文中の重要語をひろくカバーし、事典のようにも使える。

このように、精神障害のことをよく知らない読者でも、「自分がいまどこにいるのか」を見失うことなく読み進めていける構成をとり、そして、実践に役立てられるかたちで精神病理学のことが「わかる」記述を徹底した。自信をもって「入門書の決定版」として薦められる、著者渾身の書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 木村敏さん・中井久夫さんとかのお弟子さん(?)の松本卓也さんが著者の本当に分かりやすい精神病理入門書。
    僕は、国試レベルの記述精神病理の知識と高校の倫理の知識しかなかったけどスラスラ読めました。全部面白い!特に統合失調症と自閉症の章が本当に面白い…(幻聴が「対象なき知覚」ではなく、「聴覚における受動的体験」という捉え方とか、エポケーから抜け出せないのが統合失調という考え方とか、自閉症のタイムスリップ現象とか、カントでいう「悟性」が働かない状態だとか)。力動精神病理についても基本的なことを知れてよかった!
    鑑別という観点よりも、病自体を深く理解するっていうとこに重きを置いてますね(当たり前か)。

    ディルタイの「了解」という概念自体は、医師によって結構ブレが出そうだなと思いました。
    あと統合失調症における意味妄想は知覚連関の弛緩で、機能幻覚は意味妄想が派生したものっぽいとなんとなく思いました。

    自治医科大のCC見学したいな…

  • 記述式精神病理については非常にわかりやすかったけど、それ以外は自分の読解力の無さからくるものなのかやっぱりむつかしい。簡単に理解するということ自体が不可能な学問なんだとつくづく思わせてくれたので星4。

  • 精神疾患とは目に見えないが、この本のように、症例として詳細が記されると、幻覚や幻聴体験から患者が「自生思考」により混乱していく過程がわかる。
    約250ページのうち、統合失調症について約80ページもの記述があり、統合失調という病気の理解に関して、参考になった。

  • 当てはまる症例が多くて説得力がある

  • 「症例でわかる」とあるが「何がわかるのか?」というあたりが、自分の知りたいあたりと被っている箇所が多くて助かりました。欲を言えば「雰囲気」や「たたずまい」といったあたりがもう少し詳しく読みたかった。

  • 題名の通り、簡単な症例を介して精神病理の解説がなされている。初学者で十分読みやすい。精神・心理症状ハンドブック等と同系統の本と行っていいと思われるが、説明はより平易で、症例がある分こちらの方が理解はしやすいように感じる。精神病理の知識の会得を通して診断面接の精度や目前の事象に対する考察は向上すると思われる。

  • 難解な精神病理学の理論を記述精神病理学、現象学的精神病理学、力動的精神病理学と、どの学派に偏ることなく平易に説明。また症例は古典的な症例を含めて提示され、その内容を説明。これだけの膨大な内容を網羅的に説明できるのに圧倒され、また若い著者の能力にも驚嘆した。

  • 脳でも心でもない「精神」と呼ぶよりほかない領域の理解。そのために精神障害の症例を精神病理学で理解する。

    それは、患者さんの症例が発する言葉を丁寧に聞き取り、現象の特異性を取り出す営み。「脳」の異常や「こころ」の問題としてわかろうとする態度とはことなる。
    患者の心的体験をわかることは、どこまでをわかってよいのかをわかるようになること。
    精神病理学には3つの立場がある。
    ①記述精神病理学(心的体験の記述、了解という方法)
    ②現象学的精神病理学(あいだ、患者の世界への棲まい方の検討)
    ③力動精神医学、精神分析(無意識領域における欲動同士のぶつかり合い、それによる変化)

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著者プロフィール

松本 卓也(まつもと・たくや)
1983年高知県生まれ。高知大学医学部卒業、自治医科大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。専門は精神病理学。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。著書に『人はみな妄想する ジャック・ラカンと鑑別診断の思想』(青土社、2015年)、『発達障害の時代とラカン派精神分析』(共著、晃洋書房、2017年)、『創造と狂気の歴史 プラトンからドゥルーズまで』(講談社メチエ、2019年)、『心の病気ってなんだろう』(平凡社、2020年)など。訳書にヤニス・スタヴラカキス『ラカニアン・レフト ラカン派精神分析と政治理論』(共訳、岩波書店、2017年)がある。

「2020年 『現実界に向かって』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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