- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784418915149
作品紹介・あらすじ
心地よい住まいとは?豊かな空間とは?人間に対するあたたかい眼差しに支えられたデザイン。建築家・吉村順三が初めて語る、住宅設計の心と手法。
感想・レビュー・書評
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吉村さんは、自分から雄弁を振るう人ではなかったと思われる。その吉村さんからこれだけの内容を引き出したのだから、聞き手である中村さんの仕事が大きいと思われる。誰でもこうはいかない、いつでもこうはいかない、そんな貴重な時間がこの本には収録されている気がする。
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吉村順三がなぜあれほどの建築家であるのか、その偉大さを紐解いていく鍵を垣間見たような気がする。
人間の機微が分かる方なのだと思う。そして今ではほとんどいなくなってしまった、教養人だという感じがした。
●以下引用
ちょっと穴蔵に入ったようにすごく静かなんですね、ここは。
やっぱりここは、下と全然雰囲気が違いますね。別の敷地の別の別荘みたいです
建築っていうものは、間取りや構造や設備なんかと同じように、そういう目に見えない性能が重要なものだろう?
変化に対応できるようにしておくことが大事なんだね。あんまり固定的に考えてはいけないね
建築のほうである程度つくっておくとね、人のそれに合わせて住んでくれる
建物がすごくよくその敷地馴染んでいて、ちっとも違和感を感じさせないこと
設計は敷地を実際に見て、そのことをしっかり頭に入れてから取りかかれば、ちゃんとうまくいんだよ
雰囲気。敷地の持っている雰囲気、それがまず一点。全体がどういうものかってことをよく見るわけだよね。そうして、今度は陽の光と風通しと、そういうものを見る。それから周囲の道の取りつきかたなんか、その関係を見る
もう敷地を歩き回っているそのときに、だいたいその建物のイメージはできてくる。もちろんプランも立体もだよね。全部一緒に考えているわけだから
自分のしていることが、実際にあの敷地に合うだろうかってことを、設計している
建物そのものが傑作であることに変わりはありませんが、この敷地でなかったら、この建物の全体の魅力は多少、割引きされてしまったような気がします
地形からだね、この地形だと、こう、地面にひっついたような家だとダメ
この山荘で僕がとても好きなところは、道路から敷地の中に入ってきて少し昇りながらこの家をちょっと斜めに見あげるアプローチなんです
だからあの大きなモミの木に向かい合うように部屋の角度を併せたんだ
昔の下町では、隣の人がこうやったから、自分の家もこうやろうという気持ちがあったんだよ。そういうエチケットが
それがあったから、近所の人と気持ちのいい付き合いや気持ちのいいヒューマンな街ができたんだよね
今の若い建築家は、いろいろ理屈をつけて好き勝手にやっているけど、あんなことする必要ないと思うけどね。
→そうだ、「理屈」になっているんだ。吉村さんは「理」って感じがする
節度のある仕事の気持ちよさ
ここの天井のようにラワンベニヤのような安くて味わいのある材料を工夫して使われる、そうしておいて設備では床暖房されるくらいの十分な予算をとったりする
見えるものだけにこだわりすぎちゃって、その装飾ばかりに金をかけちゃう
器具をデザインしている、欲しいのは光なんだよね
人間のディグニティの違い。威厳っていうのか、品格っていうのかな。
雰囲気だね、建築というのは。ほんとに雰囲気だね。
建築をいつも設計者の眼でみている
シェーカー教徒
ル・トロネ修道院
効率的なことー信仰心、宗教性
シャープでいて温かさがある
スケッチするってことはよく見るってこと
建築っていうのは、とにかくその場所の雰囲気の事 -
大学の建築設計の授業を受けていると、どうしても新しい考えや斬新なアイデアが求められ、ともすれば奇抜なデザインが受け入れられがちです。
この本を読むと、一見何の変哲もない住宅に実は噛めば噛むほど味の出るような深い意味が込められていることがわかる。
改めて建築設計の深さを学びました。 -
図書館で読むべき本。建築家だけでなく、一般人も住宅を買う前に、借りる前に、作る前に読むべき本。現在復刊ドットコムで投票中。
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OZONEにあります
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住宅設計を志すのであれば、作品集と一緒に是非読みたい一冊。最後の弟子である中村氏との対談形式なので吉村先生の素の感じが伝わってくる。所々にスケッチが挿絵となっており、発想の原点が読み取れる。
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気取らず、質素で素直なのが一番好かれる、その理由が伝わってくるような気持ちにさせてくれる本。
暖炉について述べられている箇所は目から鱗な思いでした。そうか、暖炉ってデザイン出来るものだったのか・・。我ながら不勉強にも程があった。