大学教育改革のダイナミックス

  • 玉川大学出版部
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784472078217

作品紹介・あらすじ

本書は、組織体としての大学の保守的体質の原因を、組織論、歴史的体験、大学と社会の観点から分析し、なぜ大学改革が実現されにくいかを明確に説明するとともに、どのようにしたら大学教育の改革が可能になるのかを、アメリカの大学改革の事例分析を通して、そのダイナミックスを解明する。本書は、大学教育を真に甦えらせようとするものにとっての鋭利な大学論である。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、アメリカの大学教育改革の事例を豊富にあつかった研究であり、1969年にまとめられ、日本語訳語版は1987年に出版された。40数年前の研究であるが、研究姿勢・手法・知見に古さは全くない。むしろこの現代においてだからこそ、「大学教育改革」自体を分析対象とした本研究を一読すべきだ。

    社会からの需要と要求に対して、大学自身のプログラムを適応させていくことは、今日の日本では常識だろうが、その需要や適応のさせ方の方向性を見極め、改革がうまくいっているケースはそう多くないと感じる。本書は、アメリカにおける1960年代の2時点で大学改革事例を対象として質的・量的の両面で分析を行った大型の研究である。注目すべきはその変数の設定である。カリキュラムの拡張・研究・再編、授業科目の改廃、学位授与条件、履修条件、学生に対する諸規制の変更の様相を細かに変数化している。興味深い分析は、開設科目数の変化が激しさが、学士号取得条件・履修要件・学生行動規則変更と相関があるという点である。(相関係数はともに0.3前後)授業科目に関する変数をベースにした研究の可能性を認識でき、また自らの研究らしきものを省みることもできた。

    現代の我が国にいて、本テーマに即した正統的な大規模研究の例を目にすることは少ない。新しい諸条件に適応し、ダイナミック(弾力的)に行動できるバイタリティのある大学が、どのような特徴を持っているかについて、統計的分析も交えながら詳説されている論文である。

    本書を読めば、大学が「特徴ある活動を単発で行うことが、大学教育改革ではない」と理解できよう。また以下に引用したように、大学教育改革の本質的ともいえる記述もたいへん多く示されている。

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