能楽ものがたり 稚児桜

著者 :
  • 淡交社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784473043597

作品紹介・あらすじ

〈能の名作からインスパイアされた8編の物語〉
〈破戒、裏切り、嫉妬、復讐。今、最も注目される歴史作家があぶり出す人間の情念〉

能の曲目のストーリーを下敷きにした8編の時代小説集。
「やま巡り─山姥」
「小狐の剣─小鍛冶」
「稚児桜─花月」
「鮎─国栖」
「猟師とその妻─善知鳥」
「大臣の娘─雲雀山」
「秋の扇─班女」
「照日の鏡─葵上」。

(月刊『なごみ』の連載(2017年7月〜2019年6月)「能楽ものがたり」をもとに加筆)

感想・レビュー・書評

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  • お能の曲目を下敷きにした8話短編集。
    能とは全く別物になっているが、これはこれでおもしろい。元話より人間の欲望が前面に出ていて、ゾッとする。
    お能の幽玄さや哀れ、幻想的な感じを言葉だけで表現するのは不可能かもしれない。だからこそ意欲的な挑戦作。

  • 『稚児桜』澤田瞳子インタビュー:能の名曲を下敷きに"人間の情念"を描く | ほんのひきだし(2020年7月15日)
    https://hon-hikidashi.jp/enjoy/110975/

    直木賞候補作家インタビュー「能を史料に紡いだ春夏秋冬の物語」──澤田瞳子 第163回直木賞候補作『能楽ものがたり 稚児桜』 | インタビュー・対談 - 本の話(オール讀物7月号より)
    https://books.bunshun.jp/articles/-/5635

    山科理絵 Rie Yamashina / ギャラリーアートもりもと
    http://artmorimoto.com/Artists/yamashina_rie.html

    稚児桜 | 淡交社 京都の茶道美術図書出版社
    https://www.tankosha.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=2422

  • 能の曲目に題材をとった短編集ということで、サブタイトルに、元になった曲目が添えられている。
    生で能を観たことが無いけれど、興味はあって、少し本など読んだことはある。

    個人的に能のイメージは、途中で世界が一転するということ。
    目の前の老婆がいきなり美女の霊になったり、人が精霊の姿を現して舞ったりする。
    現実が、いきなり夢幻の世界に変わる。
    もともと、美しい能面の下はおじさんの顔だったりして、外と中身は違う世界なのだ。
    この本の物語も、そういった、“変わる”"本性を現す"瞬間がある。
    時代を映してか、親子別れの話も多い。

    子育てに向かない女、夫には向かない男、稚児にむかない美少年、スパイに向かない女。
    ひたすら狩りをする美しき野生の女。
    継母と、捨てられた娘。
    「後で迎えに来る」という男と、同姓の同僚は信頼してはならない。
    物の怪は貴人たちの心の中に棲む?

    「稚児桜」と「照日の鏡」の意外な落としどころが良かった。


    ・やま巡り――山姥(やまんば)
    ・子狐の剣(こぎつねのつるぎ)――小鍛冶(こかじ)
    ・稚児桜(ちござくら)――花月(かげつ)
    ・鮎――国栖(くず)
    ・猟師とその妻――善知鳥(うとう)
    ・大臣(おとど)の娘――雲雀山(ひばりやま)
    ・秋の扇――班女(はんじょ)
    ・照日(てるひ)の鏡――葵上(あおいのうえ)

  • (2023/10/19 1.5 h)

    能の曲目8 つを下敷きにした短編集
    話のすべてが毒の効いた繋がりの物語

    能楽の知識がなくても楽しめる上に
    基になった作品にも関心のもてる良作

    「鮎」(国栖)
    「照日の鏡」(葵上)
    の2 作が特に好き

  • 能の曲目をベースにした8編の短編集。

    どの話も“人の業”が炙りだされてくるような話で、ゾッとする部分もありますが、全体的に幽玄な雰囲気が漂い、それが余韻に繋がる感があります。各話の長さも、“もうちょい読みたい”と思わせる程度の絶妙な分量で心憎いです。
    個人的には、表題作「稚児桜─花月」が印象的で、実力で“稚児界”をのし上がってきた花月とメンタルが弱く稚児に不向きの百合若の対比があっての、ラストの花月の行動が胸にグッときました。
    あと、“壬申の乱”の一場面を描いたと思われる「鮎――国栖」。こちらは、かなり以前に知人から借りて読んでいた「天上の虹」という漫画を思い出した次第です。

  • 能を下敷きにした短編集。

    表題作の「稚児桜」はくしくもこないだ読んだ「じんかん」に出てくる”衆道”の話でした。主人公の一人である稚児の花月という名前はどうしても大阪の劇場を連想してしまうのだが、思えば、花月園とか花月嵐とかいろいろなところで使われていて風流なようでちょっと俗っぽい不思議なワードです。

  • すっごくドロドロした人間関係の短編集なのに、幻想的な感じ(^^)能が下敷きになっていると思って読んでいたからかな?(^^;)一番印象に残っているのはタイトルにもなっている「稚児桜」♪短編も良いけれど、長編でガッツリ読んでみたいな~(^-^)

  • ないと思うが、能を鑑賞する機会があったら思い出したい。

  • 短篇集。能の演目をベースに展開される、潔くかつ小気味良い短編たち。「あ、この話の元ネタ、何だったっけ…?」ってのが幾つか、いや幾つもあったので、元ネタの曲目が明記されてて助かった!倉橋由美子『大人のための残酷童話』を彷彿とさせる。

  • 時代を超えて不変なもの。人の心の醜さ、おぞましさ、それを乗り越える強さ。生臭坊主や平安貴族の時代は、それでも未知のものへの畏れがあったが…現代社会は…

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著者プロフィール

1977年京都府生まれ。2011年デビュー作『孤鷹の天』で中山義秀文学賞、’13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞、’16年『若冲』で親鸞賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、’20年『駆け入りの寺』で舟橋聖一文学賞、’21年『星落ちて、なお』で直木賞を受賞。近著に『漆花ひとつ』『恋ふらむ鳥は』『吼えろ道真 大宰府の詩』がある。

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