【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ

  • ダイヤモンド社
3.92
  • (44)
  • (56)
  • (41)
  • (3)
  • (3)
本棚登録 : 1183
感想 : 55
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478004593

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 教科書的であり、必要に応じて都度本を開くような感じ。読了とはせず便宜上、『いま読んでいる』というフラグにしておく。
    組織行動学となっているが、その中身は非常に幅広く、
    ・心理学
    ・社会学
    ・社会心理学
    ・人類学
    ・政治化学...
    それぞれが関連分野として、切り離せない。

    内容としては、それぞれの専門用語に関して、もう少し注釈が欲しい気がする部分の★-1。

    功利主義   ・・・utilitarianism
    マキャベリズム・・・マキャベリの『君主論』
    仕事への満足度・・・外的統制型<内的統制型
    ステレオタイプ化・・判断の近道化
    ハロー効果  ・・・認知バイアス現象
    X理論とY理論・・・性悪説、性善説的思考か?
    「誠実さ」  ・・・あらゆる職務や職業グループにおいて高業績を予測する有効な要因

  • ようやく読み終わったという印象。
    すごく難しく書いていて分かりにくいし、疲れます。

    組織を作るためには、個々のメンバーを理解し、
    メンバーのモチベーション維持のためにも、
    適度にコミュニケーションを取りつつ、
    フィードバックを行うことが大切。

    とはいうものの、このフィードバックが難しい。
    基本的に評価者が能力的にも優位なことが多いため、
    褒めるよりも改善すべきポイントを言ってしまいがち。
    言わなければならないときは言うべきとは思うが、
    評価というイベントの関係上、悪い点がないか
    とアラを探してしまいがち。

    避けては通れないところではあるが、
    組織が成長するためのサイクルを回すには、
    フィードバックは不可欠なので、
    メンバーの特性に合ったフィードバックを
    心掛けるようにしたい。

    【勉強になったこと】
    ・職務満足感とは、公平な結果、処遇、手続きが
     認められて初めて得られるもの。

    ・自己監視性が高い人は外的なシグナルを敏感に
     察知して、状況が変われば、行動を変えることが
     出来る。

    ・自分の感情を認識し、他人の感情を察することに
     長けている人は、仕事においても優れている可能性
     が高い。

    ・フィードバックにより従業員は自分の仕事を
     どの程度うまく実行できているかを認識するだけで
     なく、自分の業績が改善しているか、についても
     認識できる。
     このフィードバックは職務遂行の中で直接
     与えられることが望ましい。

    ・6段階の合理的な意思決定プロセス
     ①問題を認識する
     ②意思決定の判断基準を特定する
     ③判断基準を秤にかける
     ④代替案を考える
     ⑤それぞれの案を判断基準に照らして評点をつける
     ⑥最適な意思決定を見積もる

    ・熟練した経験者ほどパターン化して判断する。
     一種の反射神経に近いイメージ。

    ・私たちは労働時間のほぼ70%を
     コミュニケーションに費やしている。

    ・カリスマ的リーダーの主な特徴
     ①ビジョンと明確な表現を有している
     ②個人的リスクを背負う
     ③置かれた環境に対して現実的に評価する
     ④メンバーのニーズや感情に対応出来る
     ⑤時には規範に反する行動をとることが出来る

    ・優れたリーダーは、そもそも自分を理解しており、
     かつ自分を統制出来ている。
     でなければ、メンバーに対して共感したり、
     モチベーションを高めるようなフォローは出来ない。

    ・信頼を形成する5要素
     誠実性、高スキル、一貫性、忠誠心、開放性

    ・信頼を築くためには、
     開放的であり、公正であり、感情を言葉で表し、
     真実を話し、一貫性があり、約束を果たし、
     秘密を守って、能力を発揮出来ることが大切。
     全て出来る必要はないが、真実・一貫性は特に重要。

    ・組織が抱える労働力の質は、おおむね採用する人材
     に左右される。そのため、能力の不十分な従業員を
     新たに採用した場合、たとえマネジメント層が
     モチベーションを与え、リーダーシップを発揮し、
     やりがいのある職務設計をしたとしても、
     良くはならない可能性が極めて高い。

    ・キャリア開発における組織、従業員の責任
     組織の責任:
      ①組織の目標や将来的な戦略を明確に伝える
      ②成長機会をつくり出す
      ③財政支援を提供する
      ④従業員に対して学ぶ時間を与える
     従業員の責任:
      ①自分自身を理解する
      ②自分の評判を管理する
      ③人脈ネットワークを構築・維持する
      ④最新の技術を身につける
      ⑤スペシャリストとしての能力とゼネラリスト
       としての能力をバランスよく身につける
      ⑥自分の功績を記録する
      ⑦選択肢を広げておく

  • P:507 抜き書き+感想:3268字 付箋数:9
    (対ページ付箋割合:1.78%、付箋毎文字数:363)抜書量加点+1 ★3

    組織というか、マネージングに必要な考えやデータを網羅してある感じでした。特に大きな組織で、必要な要素を考えるには良さそうだと思います。

    ・カンタス航空の乗客を対象とした調査を分析した結果、顧客満足における従業員の果たす役割が確認された。調査では、乗客に対し、飛行機の旅に「求めるもの」について質問した。その結果、乗客が挙げたほとんどの回答は、機内預け荷物が早く出てくること、乗務員が親切で気がきくこと、乗り継ぎの際の補助、チェックインが簡単にスムーズにできることなど、カンタス航空の従業員の行動に直接影響を受ける内容であった。
    >>/> 古典的ですが、一般的に航空会社が力を入れている事とすれ違っているだろうことがミソ。

    ・ミルトン・ロキーチの価値観の分類。
    ≪手段価値≫
    野心的(勤勉、向上心)、有能(優秀、効果的)、陽気(楽天的、楽しい)、清潔(几帳面、きれい好き)、勇敢(自分の信念のために立ち上がる)、役に立つ(他人のために働く)、正直(誠実、裏表がない)、想像力に富む(大胆、創造性)、論理的(一貫性、合理性)、愛情深い(優しい、思いやりがある)、従順(忠実、尊敬の念に満ちている)、礼儀正しい(丁寧、マナーが良い)、責任感がある(頼りになる、信頼できる)
    ≪最終価値≫
    快適な人生(豊かな人生)、達成感(永続的な貢献)、平和な世界(戦争や紛争がない世界)、美の世界(自然美や芸術美)、平等(兄弟相、あらゆる人間にとって機会平等)、家族の安全(愛する人を守る)、自由(独立、選択の自由)、幸福(満足)、心の調和(心の葛藤がない)、喜び(楽しくのんびりとした人生)、心の救い(救済、永遠の人生)、社会的認知(尊敬、称賛)、真の友情(親しい間柄)
    >>/> この分けは、人の価値観を計るときに方向を見る助けになる気がする。

    ・不協和が高い場合につきものの緊張は、それに伴う報酬が高ければ、減らすことができる。報酬はその人の感情のバランス・シートの一貫性の側を増やすことになるので、不協和を減らす作用をするからだ。組織の人間は自分がなした行為に何らかの形の報酬を受けるので、仕事以外についての場合よりも仕事についての場合のほうが、大きな不協和に耐えられる。
    >>/> 仕事に関して強く耐えているとしても、必ずしもそれに同意しているとは限らない。

    ・人間が認知の対象にされるときと、机や機械、建物など無生物が対象にされるときとでは、認知のやり方が異なる。それは無生物の場合と違って、人間の行動が対象のときは認知者が推論をするからである。無生物は自然の法則に従うが、信念や動機や意図を持たない。ところが、人間はそうしたものを持っている。その結果、我々は人を観察するとき、なぜその人がそうした行動をとったのか説明しようとする。
    >>/> 想像した認知を認知する。

    ・基本的パーソナリティの五要素(外向性・人当たりのよさ・誠実さ・安定した感情・経験に開放的)についての研究から、統一的なパーソナリティのフレームワークが示されたのに加えて、こうしたパーソナリティの要因と職務成績との間に重要な関係があることがわかった。五つの分野の職業に焦点が当てられた、「知的専門職(建築家、弁護士、エンジニアなど)」「警察官」「マネジャー」「セールスマン」「労働者」である。
    その結果、誠実さについての得点から、五つの職業グループすべてについての職務の成績を予測できることがわかった。
    残る四つのパーソナリティ要因については、職務の成績を予測できるかどうかは成績の判定基準と職業グループによって異なる。たとえば、外向性から、マネジャーやセールスマンの成績を予測できた。これらの職業には社交的な相互作用が関わる度合いが高いので、この外向性のテスト結果が意味を持つのである。同様に、経験に対する開放性はトレーニングの熟達度を予測するうえで重要な要素となることがわかった。
    (感情の安定性が大きく影響しなかったが、職に長く留まっている人を調査対象としたため、不安定な人が除外されたのではないかと考えられている)
    >>/> ビッグファイブ(辞書から人の性格を形容するのに使う言葉を収集し、累計すると大まかに五つの要素に分かれるという研究)は知っていたけれど、ビジネスに向けて分析されているとは知らなかった。誠実さ、か。職業の種類に時代を感じます。今は違いそう。

    ・潜在的に動機づけ可能度が高い職務とは、有意義感の経験につながる三つの要因(技能多様性、タスク完結性、タスク重要性)のうち、少なくとも一つの要因が高い水準になければならず、また、自律性とフィードバック双方の度合いも高くなければならない。つまり個人が関心を持っている仕事(有意義感)において、自分が行った(責任感)仕事がうまくいったことを知った(フィードバック)ことを知ったとき、その個人は内的報酬を受けるのである。
    (技能多様性+タスク完結性+タスク多様性)÷3×自律性×フィードバック

    技能多様性=その職務で労働者がどの程度多様なスキルや才能を活用できるか
    タスク完結性=仕事全体の完結にその職務がどの程度必要とされるか
    タスク重要性=その職務が他人の生活や仕事にどの程度大きな影響を与えるか
    自律性=仕事の手順やスケジュールに関してどの程度裁量の余地があるか
    フィードバック=業務を実行した結果その業務の有効性についての明確な情報を直接得られるか
    >>/> 要素をこのように全部取りあえず抜き出してあると、正否はともかく考える際に助けになる。

    ・従業員のモチベーションや職務満足感は、同僚や上司のわずかな行動(仕事の難しさ、要求の高さ、自律性といった職務の特徴についてコメントするなど)により操作することが可能であることがわかっている。
    …たとえば、マネジャーは部下に対し、彼らの職務がいかに興味深く重要なものであるかを自ら語る機会を増やすべきであろう。またマネジャーは、新規採用者や転勤・昇進で新しい部署に異動してきた従業員は、勤続年数が長い従業員に比べ、社会的情報の影響を受けやすいという点に留意しなければならない。
    >>/> 不満は伝染する。とても強く。

    ・エメリー航空のマネジメントは梱包係りに対してばらばらに荷物を処理するより、できるだけ貨物用コンテナにまとめて処理してほしいと要請した。コンテナを使えばコストの節約になると思ったからである。そして、梱包係にどれだけの割合の荷物をコンテナに入れているかと尋ねると、90%という答えが多かった。しかし、エメリー航空で分析した結果、コンテナが利用されている割合は45%にすぎなかった。
    コンテナの利用を促すために、マネジメントはフィードバックと積極的な強化を進めるプログラムを工夫した。各梱包係に対して、毎日の梱包量を、コンテナに入れるものも入れないものも、チェックリストにつけるように指示したのである。一日の終わりに、各梱包係はコンテナ使用の割合を計算して記録することになった。そうすると、信じがたいほどに、コンテナの使用量が急激に増えて、プログラムを実施した最初の日に90%以上となり、そのままこの水準が維持された(OB Mod、組織行動修正法)。
    >>/> 注意しても、計測しないとこんなに見積りを誤るんだ。。

    ・フォードが示したことは、従業員が専門化された仕事を行えば職務がより効率的に行われるということだった。20世紀前半のほとんどの時期、マネジャーは職務の専門化が生産性向上の無限の源と考えたし、おそらくある程度それは正しかった。というのも、専門化は普及していなかったので、専門化の導入は常により高い生産性をもたらした。しかし1960年代までに、良いことは行きすぎにもなりうるという証拠が多く見られるようになった。そして仕事によっては、専門化による人間的問題が(たとえば、退屈、疲労、ストレス、低い生産性、質の悪さ、欠勤、高い転職率など)経済的メリットを上回るようになった。このような場合、職務活動の範囲を狭めるのではなく、拡大することで生産性が向上することもある。また、従業員の活動を多様化する、仕事の全過程を最後まで行う、交換可能なスキルを持つチームをまとめるなどの方法により生産性と従業員の満足度が向上する会社も見られた。
    >>/> この加減は本当に難しい。特にサービスで。

  • 会社で働いていると、「組織というものは何なのだろう?」「その中で個人としてどのように振舞うべきなのだろう?」と根本的な疑問を感じることが多々、あります。
    これまであまり、組織そのものについて論じられた本を読んだことがなかったので、勉強してみようと思い立ちました。
    この本は学問としての「組織行動学」を体系的に論じた一冊。
    著者の本はアメリカの多くの大学で教科書として採用されているということで、この分野の権威のようです。
    冒頭に組織行動学の定義と目的を解説した後、三つのステップ「個人」「グループ」「組織システム」に分けて解説しています。
    まさに組織というものを対象にして全体を網羅した著作だなと、感じました。
    体系的に書かれているので組織行動学の全体像を知ることができ、さらに、個々の部分を切り出して学べる内容になっています。
    ビジネス書的な読み易さという点では難がありますが、情報量は膨大だなあと、感じました。
    本棚や机の引き出しに置いて、組織というものに悩んだ時に読み返す、そんな一冊でした。

  • ・参考図書指定科目:「経営組織論」

    <OPAC>
    https://opac.jp.net/Opac/NZ07RHV2FVFkRq0-73eaBwfieml/sRmvaaJODrxtITZ8K-ZJCoOoQIj/description.html

  • 人は合理的に判断するのではなく、感情、心理的契約やまわりの人を見ながら、結果、合理的な選択をしている。

    投資すべきは組織文化なのだと思った。

    組織と働く個人の行動について全方位的にまとまっている。良書。

  • 組織人材の文献を中心に理論を紹介している。
    ただ、理論だけでなく実践的な考察も入っており為になった。
    かなり基礎的な情報が多いので、最新の理論が知りたい場合は向かない本であると思う。

  • 組織について考えるべきことを広くまとめた本
    広いテーマとそれについての考え方をまとめている。辞書みたいで好きではなかった

  • 第1部 組織行動学への招待
    組織行動学とは何か
    第2部 組織の中の個人
    個人の行動の基礎
    パーソナリティと感情
    動機づけの基本的なコンセプト
    動機づけ:コンセプトから応用へ
    個人の意思決定
    第3部 組織の中の集団
    集団行動の基礎
    “チーム”を理解する
    コミュニケーション
    リーダーシップと信頼の構築
    力(パワー)と政治
    コンフリクトと交渉
    第4部 組織のシステム
    組織構造の基礎
    組織文化
    人材管理の考え方と方法
    組織変革と組織開発

  • 組織マネジメントの教科書。網羅的によくまとまっていると思った。

    第Ⅰ部 組織行動学への招待
    第1章 組織行動学とは何か
    第Ⅱ部 組織の中の個人
    第2章 個人の行動の基礎
    第3章 パーソナリティと感情
    第4章 動機づけの基本的なコンセプト
    第5章 動機づけ
    第6章 個人の意思決定
    第Ⅲ部 組織の中の集団
    第7章 集団行動の基礎
    第8章 ”チーム”を理解する
    第9章 コミュニケーション
    第10章 リーダーシップと信頼の構築
    第11章 力と政治
    第12章 コンフリクトと交渉
    第Ⅳ部 組織のシステム
    第13章 組織構造の基礎
    第14章 組織文化
    第15章 人材管理の考え方と方法
    第16章 組織変革と組織開発


    ■根本的な帰属の誤り
     他人の行動についての判断を下す際、外的要因の影響を過小評価し、内的要因あるいは個人的な要因を過大評価する傾向。
    ■自己奉仕的バイアス
     自分自身の成功については、能力や努力といった内的要因によるものだと考える一方、失敗に対しては運などの外的要因に帰する傾向。

     マズローの欲求五段階論は広く受け入れられ、とりわけ実践現場のマネジャーから受け入れられた。その理由は、この理論が直感的に理解しやすいロジックだからだ。しかし、残念なことに、調査研究ではこの理論の正当性が一般的に認められない。たとえば、マズローが提案した欲求段階に沿って欲求構造がつくられるという予測、すなわち、ある欲求が実質的に満たされれば、次に高い欲求が活性化されるという予測を裏づける調査結果があまり出てこないのだ。したがって、欲求段階論はよく知られていて、多くのマネジャーが部下の動機づけに利用しているが、この理論に従えば労働力の意欲をよりいっそう高められることを示す実質的な証拠はほとんどない。

    ■職務特性モデル
    1.技術多様性
    2.タスク完結性
    3.タスク重要性
    4.自律性
    5.フィードバック
    ・最初の三つの特性が組み合わさることにより、仕事における有意義感が生まれる。
    ・自律性を持たせた職務では、担当者は仕事の結果に対して個人的な責任を感じるようになり、職務に関してフィードバックが与えられる場合は、自分の仕事がどの程度効果を上げているかを知ることができる

    ■チームのタイプ
    1.問題解決型チーム
    2.自己管理型チーム
    3.機能横断型チーム
    4.バーチャル・チーム

    ■効果的なチーム・モデル
    1.基盤
    ・十分な資源
    ・効果的なリーダーシップ
    ・信頼関係のある環境
    ・業績評価と報酬システム
    2.構成
    ・メンバーの能力
    ・パーソナリティ
    ・役割の割り当て
    ・多様性
    ・チームの規模
    ・メンバーの柔軟性
    ・メンバーの嗜好
    3.職務設計
    ・自律性
    ・技能多様性
    ・タスク完結性
    ・タスク重要性
    4.プロセス
    ・共通の目的
    ・具体的な目標
    ・チームの自信感
    ・コンフリクトの程度
    ・社会的手抜き

     過去10年を通して、あらゆる規模の組織で共通する一つの顕著な傾向が見られる。すなわち、厳格な職能別部門化が、従来の部門間の垣根を超えて編成されたチームにより補完されるようになったのであり、近年このことがますます増えているという点である。
     …業務がますます複雑になり、その達成により多様なスキルが必要になるにつれて、マネジメントは機能横断的チームを導入するようになっている。


     マトリックス構造の長所は、組織が相互に依存した複数の複雑な活動を行っている場合、コーディネーションが促進される点にある。組織が大きくなると、対応できる情報処理能力以上の職務が生じる。官僚制では職務の複雑さが増すと公式化の増大を生む。マトリックス構造においては異なる専門家同士が直接頻繁に接触できることでよりよいコミュニケーションが可能となり、柔軟性も増す。情報は組織に浸透し、そのような情報を必要とする人に迅速に到達する。さらに、マトリックスにより官僚制が陥りやすい欠陥も補える。つまり、二重の指揮系統があることで、各部門のスタッフが自分たちの狭い世界を守ることに熱心なあまり組織の全体的目標が二の次になってしまう傾向を抑えられる。
     マトリックス構造にはもう一つ長所がある。専門家を効率的に割り当てることができる点だ。非常に専門化されたスキルを持つ個人が一つの職能部門、または製品グループ内に限定されると、そのような専門家の才能は独占されて広く活用されない。マトリックス構造では、最高の資源とそれを効率的に配分する有効な方法の両方が組織に提供され、規模の経済が実現する。
     マトリックスの大きな欠点としては、混乱が生じること、権力抗争が生じやすく、そして個人にストレスがかかりやすいことである。指揮系統の一貫性の概念を排除すると、あいまいさが増し、あいまいさはコンフリクトを引き起こしやすい。たとえば、誰が誰に報告するかが明確でないことが多く、製品マネジャーは自分の製品に最高の専門家を確保しようと戦うことも珍しくない。混乱とあいまいさは権力抗争の火種となりやすい。官僚制の場合、仕事の規則が定義されることで潜在的な権力抗争が抑えられる。しかし「早い者勝ち」のルールが通るときには、職能マネジャーと製品マネジャーの間で権力争いが生じる。あいまいさのなさと安心を望む従業員にとってこのような職場環境はストレスとなりやすい。一人以上の上司に報告することは役割の対立を招き、期待されるものが明確でない場合は役割自体があいまいになる。 官僚制のように事前に指揮系統が決まっている快適さの代わりに、不安定とストレスが生まれる。

全55件中 1 - 10件を表示

スティーブンP.ロビンスの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×