原子炉時限爆弾

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478013595

感想・レビュー・書評

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  • 「大地震におびえる日本列島──日本に住むすべての人にいま一番伝えたいこと」

    未曾有の大地震、東日本大震災の揺れと津波が引き起こした福島原子力発電所の事故は、自然の力の圧倒的なパワーと、人知によって制御できることの限界とを私たちに思い知らせてくれた。それを軽視してきた今までの経緯に怒りを覚え、かつ「やはり」という気持ちにさせられる、タイムリーな本だ。ぜひお読みいただきたい。本書は今回の震災のほぼ半年前にあたる2010年8月に出版されたもので、当然のことながら福島原発に関する記述に関しては“ずれ”があるが、それは些細なことだ。今回被災した原子炉も含めて日本各地にある原子力発電所がいかに危機的な状態に置かれているかが、わかりやすく解説されている。

    覆い隠しようもない原発事故が実際に起きてしまった今、この本によって鳴らされていた警鐘が当を得ていたものであることが実感できよう。福島の状況は今のところ東電や国によって「地域限定の災害」として「時間はかかるものの復興可能」との見解が報道されている。しかしそれが単なる演出であるうさんくささをぬぐい去ることができない。今後の展開によってはもっと広い地域が長期にわたって居住不能になることも、決してあり得ないことではないだろう。事実、「日本では起こらない」とされていた核燃料棒のメルトダウンについても、今になって小出しに発表されるようになった。「確実に断定できない」という理由によって隠されている深刻な事実は、まだまだたくさんあるに違いない。

    世界有数の地震大国である日本に原子力発電所を建設する危険性は以前から指摘されていた。しかし「原発は安全・安心な施設であり、どんな災害にも耐えうる設計が行われているため、事故は事実上起こらない」という説明をナイーブに信じ、二酸化炭素による地球温暖化対策にかけては世界の規範国になりたい、と望む政府が掲げる原子力発電最優先の政策を容認してきたのは、ほかでもない私たちである。「原発を地元に誘致すれば巨額の交付金がその地域の繁栄を約束してくれる」という夢を追い、原発反対論者たちが口を酸っぱくして訴えてきた危険性については「人々の危機感をあおるために、少なからず誇張されているのではないか」と思った人も多かっただろう。

    しかし事実は違った。広瀬もそのひとりである原発反対派の危惧が正しかったのだ。事故は起こり、それによる被害は甚大で、いつ収束するか現時点では予想もつかない。あれだけ原子力発電にこだわっていた政府も、ついに静岡県にある浜岡原発の停止要請と原子力政策の見直しに踏み切らざるを得なくなった。しかし「発電していない=安全である」という図式が当てはまらないのが、原発のやっかいなところでもある。

    恐ろしいのは「危険なのは浜岡だけではない」ということだ。「それ以外の原発は今のところ安全なので、心配するに及ばない」というのが日本政府と、その政府を支える御用学者たちの見解だが、それはあまりに安易な寝物語のように思えてならない。もちろん「危険だからやめる」で話がすむならば簡単だ。そうではないところにジレンマがある。原子力の専門家たち、発電会社、地元自治体と住民、そして政治家をはじめとした多くの人々のメンツと利害をかけた攻防はとどまるところを知らず、結局は何も決まらないのではないだろうか…。そんな右往左往の最中に、危惧されている大地震が来ないことを天に祈るばかりである。

  • 「地震学者も、中部電力も、日本政府も、日本を破滅させる権利など、神から与えられていない。電力会社は、たかが電気を売る一企業にすぎないのだ。発電法を発明した偉人でもない。傲慢にもこれほどいい加減な耐震性をもって原子炉を運転し、私たちの人生を台無しにする脅威と不安を与えているだけで、すでに日本国民の人間としての尊厳を犯す由々しき問題である。」(本文より抜粋)・・・まったくもってその通りだと思います。

  • 日本列島の成り立ち、地震と地球の基礎知識、日本に原発が林立した背景を知る事が出来た。自分たちが何を知っていて、知らないのか。知るべきなのか。
    とてもわかりやすく、事実ベースで記載されており、現状認識に役立ちました。多くの人に読んでもらいたい1冊です。

  • 推進派も反対派も関係なく、一度は目を通すべきだと思う。

  • 大陸移動説が言う「生きている地球の動き」から生じる地震のリスクを根源的に抱える日本列島において、これまた、原子力発電が宿命的に抱える放射能リスクについて、事実に基づきその無謀な立地を提言する良心的な学者の意見をまったく無視し、原発を立地させてしまった日本国の官僚、電力業界、産業界。

    そのことに対し、真実を伝えないマスゴミにだまされ続ける国民。

    最悪の国に生まれてしまった日本国民。

    広瀬氏が発する情報がなぜ、流通させられないのか。

    なんともいいようのない無力感に襲われてしまう。

  • 企画コーナー「今、原発を考える時」(2Fカウンター前)にて展示中です。どうぞご覧下さい。
    貸出利用は本学在学生および教職員に限られます。【展示期間:2011/5/23-7/31】

    湘南OPAC : http://sopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1595422

  • 事実震災によって原子力発電所が崩壊した。この本は震災が起こる前に書かれた日本の原子力政策に対し警鐘を鳴らしていた本だ。もし著者の書き記す通り原子力政策が見直されていれば被害はここまで深刻にならなかったのでは。若干個人的な悲観論が目立つ文面が多く感じられるが、やるせなさを抑えきれないほどの憤りを感じながら書いていたのだと察する。一般報道では知りえる事のできない角度からの情報なので、地震大国にて生活する全ての日本人は必要な知識として読んでおいた方がいいと思う、特に原発を所有する自治体に住んでいる有権者に。地震が起こるというギャンブル的率な話ではなく、地球規模の歴史からマントルや地殻変動という自然の摂理に乗っ取って考えれば、地質学的に日本に原発を作る事がいかに危険かが理解でき、命よりお金、情報操作し国民を洗脳する構図がよく分かります。

  • 原発の危険性についてどれだけの人がここまで知っているだろう。今、原発事故について知らなければ、日本の未来はないと思う。

    便利な生活がこういった危険な環境の上に成り立っているということをもっと多くの人が知るべきだ。

    原発の問題やその背景にあるもの、また実情について知るのにとても参考になる本でした。

  • 書店にて,震災後素早く編集された本かと思って手に取り,発行年月日(2010年8月26日)を見て驚いた。まさに現在進行中の出来事が記されている。
    地震と地球の基礎知識は大変参考になる。
    ※読了後にお勧め⇒http://www.youtube.com/watch?v=ovv2__vc-Nk
    ■双子地震
    ■ステーションブラックアウト
    ■プレートテクトニクス
    ■造山運動のメカニズム
    ■中央構造線

  • この本は2010年に出版されたものだが、ここに書かれた原発震災の危険性が、今年現実化してしまった。この本を読めば、日本がいかに原発に向かない土地であるかがよくわかる。そして、そろそろ東海地震は来るのは確実であり、備えなければならないことも。浜岡原発を停止するのは当然でしょう。やや感情的な本ではあるが、日本人として知るべき常識が書かれてるあめ、ぜひ沢山の人に呼んでほしい。

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著者プロフィール

京都府生まれ。1986年、京都府立大学文学部卒業。
1991年、大阪市立大学大学院臨床心理学分野後期博士課程(単位取得退学)。2006年、ISAP (International School of Analytical Psychology), Zurich修了、ユング派分析家。
現在、帝塚山学院大学人間科学部心理学科教授、北大阪こころのスペース代表、臨床心理士、公認心理師。

共著書に『キーワードコレクション カウンセリング心理学』、『現代社会と臨床心理学』、『心理療法ハンドブック』、『心理臨床大事典』ほか。共訳書に『ユングの世界』。

「2021年 『セラピーと心の変化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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