- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478021743
感想・レビュー・書評
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戦後の日本において、社会的にグレーな領域が長く存在していましたが、その領域は長引く不況や法的な規制などにより、どんどん淘汰され、もしくは消滅していっているということです。
しかし、そのグレーな境界線上には、また新たな世界が発生しているということでもあります。
つまり、現在の日本社会には、かつて存在しえなかった貧困や共同体や正義的な価値観などが登場し、すでに僕らはそれらに飲み込まれようとしているということでした。
本書は、かつて存在していたグレーでアンダーグラウンド的な社会と、それらが消滅して新たに生まれた社会のルポルタージュでありドキュメンタリーです。
社会学者の著者は、現代社会においてこれまで社会にあった「色」が失われていこうとする社会を「漂白される社会」と名付けています。
ぼくは自由で平和な個人主義の中で多様化した社会を生きており、その多様性は増殖していると思っていましたが、実は社会は単一的な社会に吸収されつつあるのだと感じました。
共通番号制度もそうですが、社会が高度化し成熟するということは世の中の大半の人にとっては生きやすい社会を目指すということなのでしょうが、割り切れない世界があるのも事実で、漂白された社会は、僕にとって生きやすいのか考えました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現代社会がどういうものか、よくわかった。
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最近話題になった「フクシマ論」の著者の手になるものとは知らずに読んでいた。そして、読み終わってから、著者のプロフィールを見て、ずいぶん若い人なんだなと思った。というのも、本書に盛られた12編のルポが、ベテランのルポライターの作品ように思えたからだ。
著者は、本書について、広い意味での社会学の論文、あるいは社会学的な考察による学術的な意義のある書物として理解されたがっているようだが、(著者も許容するように)ルポルタージュ集として読み、優れたルポだと感じた。ルポの対象は、どれも「周縁的な存在」として位置付けられており、そのようなものであることは十分納得できる。何よりも、自分が知らない世界でありながら、決して完全にアンダーグラウンドというわけでもなく、目に入っても見えないか見えないふりをする不可視化されたものを掘り起こしていて、とても興味深い。 -
裏の人物ですら存在が希薄化される社会。
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現代社会とな何か?そんな大きなテーマを社会の隠された部分=周縁的な存在を浮き彫りにすることで探っていく。売春島、ホームレスギャル、生活保護受給者、違法ギャンブル、ドラッグ、偽装結婚、留学生などなど。平穏を装っているような日常が浮かび上がる。
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通勤途中の車から降りて
道端の草むらにしゃがみ込んで
その時の空を見上げ゛て
しばし ぼーっ と
何もせずに 過ごしてみたら
本書に描かれたさまざまな人たちの
息吹が聞こえてくるかもしれない
私たちが暮らしている この現代の
同じ空の下に
このような人たちが 暮していることを
知っていることは
「今」を生きていく覚悟につながっているような気がする