好きなようにしてください たった一つの「仕事」の原則

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478068878

感想・レビュー・書評

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  • 【環境決定論者になるな】
    ・転職は「いってこい」、プラスもあれば、マイナスもある。即ち、環境の選択は無意味。「最適な環境」は存在しない。存在するのは、仕事の選択。(環境決定論の悪は、いいときも悪いときも理由を環境に求めるようになる。)仕事とは、自分以外の誰かのためにやるもの。趣味と明確に異なる。
    【キャリア悩み解決法】
    ・悩んだら「具体と抽象の往復運動」を行うと良い。具体化したり、抽象化したりしながら、自分の考えを明確にしていくプロセス。
    ・悩んでいる人の思考には往々にして時間的奥行きがない。キャリアには常に時間軸がある。
    ・キャリア計画は必要ない、この世のほとんどすべてのことが思い通りにいかない。ただ、日常の引っかかりを意識することは大事。機が熟せば、これだ、というときがくる。
    ・人生はトレードオフ、何をしないか、のほうがハードだし、大事な意思決定。
    ・良い会社、良い大学などない。「自分にとって何が幸せか」をまず考えて、そこから逆算して会社や大学が決まる。その考えるプロセスにしか価値はない。
    【捨てることの重要性】
    ・優れたコンセプト、目標、ビジョン=何ではないかを定義することによって、その価値の独自性が明らかになる
    ・嫌いなことはわりと確信をもって認識できる。自分の好き嫌いを深いレベルで知っている人ほど、無意識のうちに優れた判断ができる。
    【プロ経営者とは】
    ・プロ経営者=結果を出す人。経営者になりたいという欲が先行してないか。目的は成果を出すこと。
    ・ビジネスは、商売である以上、本当に仕事ができるということは、商売丸ごと全部を動かして、稼いでこられるということ。稼いでくるやつが一番偉い。一番頼りになる。経営者と担当者は本質的に異なる。
    【承認欲求との付き合い方】
    ・承認欲求病は人間の性、どうしようもない。対処は放置しておくに限る、時間の経過こそが特効薬。年を取ると自分の損得ばかりを考えていた若かりし頃が馬鹿らしく思える。世の中で本当に承認されたりされなかったりする対象は、「状態」ではなく、「行動」。行動の結果として達成される成果こそが承認される。良い大学・会社に入るというのは状態。一言で言うと、「世の中はそんな甘いものじゃない」。
    【評価というプロセスについて】
    ・「人を評価する」というのは、経営コストのうち最大のものの1つ。年功序列は透明かつ客観的で低コストの管理手法(高度経済成長期にコストを抑えて、成長にアクセルを踏む制度として一定の合理性があった)。
    ・相互に納得できる評価に起到達するまでのコストは、あらゆる経営コストの中でも最大のもの。コストをかけていくときりがないので、ダメだったらその時点であっさりと首を切ると言う手法が、外資系のやり方。
    ・外資系証券のように流動性の高い分野であれば、労働市場の流動性が経営のコストを吸収してくれます。つまり、評価と言う機能を、組織の中のマネジメントから、外部の労働市場にシフトさせることができる。
    【その他】
    ・「情報の豊かさは注意の貧困をつくる」
    ・ジョブローテーションについて
    「アメリカでは会社レベルの転職が多い反面、個人の専門性や色の、職種が固定していく日本では会社が長期に固定される代わりに、会社の中で個人のファンクションを動かしていく。このように日米のシステムには対称性があります。アメリカではミドルキャリアクライシスへの対処法としてジョブローテーションが生まれ、日本では、流動性がない中で会社にとって必要な人材を育てるファンクションとしてジョブローテーションが生まれた。」
    「ジョブローテーションには3つの効果がある自分の嫌いなものを知ると言う引き算の効果。自分の得意なものが増えると言う足し算の効果。最も大事なのはジョブローテーションを通じて身に付けたスキルを掛け算し、稼げる人間になること。」

  • Newspicksの読者と経営学者・楠木建の往復書簡。キャリア論と生き方について意識高い系はもとより普通の人も見直すのに好例となる一冊。意思を持ちつつ、川の流れのように、というのに膝を打った。メモ。
    (1)仕事における総合格闘技。それが営業。
    (2)攻撃して来るのは暇な連中。自分にやるべき仕事があって、それに没頭している人は人の事をいちいち気にしてああだのこうだの言ってこない。
    (3)自分と自分の生活にとって本当のところお金はどういう意味を持っているのかに対する答えを出すこと。
    (4)この先の長い間、お互いを見つめるのではなく同じ方向を見ていくということが大切。
    (5)自分の仕事に正面から向き合うとは自分が役立とうとする他者を向くということ。
    (6)組織に対するメンバーの構え。(1)エグジット(離脱)。嫌だったらさっさと辞める(2)ロイヤリティ(忠誠)。自分と組織を同一化する状態、行動(3)ボイス(告発)を異議申し立てによる衰退する組織の回復。(アルバートオットーハーシュマン)
    (7)自分に残るのは過程。仕事のやり甲斐は自分の納得を追求する過程。客にとっては結果(成果)が全て。仕事の成果を自分で評価してはいけない。しかし自分の中で積み重なるのは過程が全て。
    (8)自分が何をやるかどう生きるかではなく環境のどちらに身を置くかは環境の選択に過ぎない。Aという環境に身を置くと自分はXになるが、Bという環境ではYになると考える。この種の考え方を環境決定論と言います。
    (9)今乗っている。この感覚がとても大事です。自然と前向きに努力できる。‥こういう感覚は川の流れの中で初めて出会うこと。
    (10)世の中で自分の思い通りになることなど、殆どありません。むしろ、たまに思い通りになる事があると、割と嬉しくて思わずニコっとする。大人はイラっとせずニコっとするものです。
    (11)ゼロからプラスを創るのは何か。その人に固有のセンスとか言いようがないもの。フォームと言っても良い。
    (12)何をどの様に話すかよりも何を話さないか、講演の仕事の質は格段に高まる。

  • 社会人なら誰しもが突き当たったことかあるだろう選択肢に、答えを見出すためのヒントをくれる。客観視すれば全くその通りなのだが、いざ自分のこととなると…


    抜粋▼

    仕事とは自分以外の誰かの役に立つこと。

    環境決定論の無意味。
    Aという環境に身をおくと自分はXになるが、Bという環境に身をおくとYになる。
    どちらにせよ、その人の本質は環境の違いでは大して変わらない。なぜなら私は私だから。

    仕事の選択なら、仕事の内実で選ぶべき。環境の比較は意味をなさない。

    すぐに身につくものは、すぐになくなる。

    自分でも面白くないと思っていることを実行して、お客や他人を動かせるわけがない。
    自分が面白くて重要でどうしても人に伝えたい、わかってもらいたいと思うことをする。

  • 厳しいが温かい、何度か読みたい、一冊。
    かなり良かった。深いのかどうかはよくわからないが、バカかお前はと罵ってくれる本。嬉しい。

    「好きなようにしていいんだ、悩んでるの馬鹿みたい」と感じる。仕事を辞めるか(あるいはいつ辞めるか)、自分の夢を追求するか、転職するか、大学を辞めるか、部下や上司とどう付き合うか、などのキャリアの悩みは、相談者自身が大体答えをもう持っている。それに対して自分の選択によってどんな「損」があるかわからないから怖がっているけど、本質的には戦争と疾病以外にそんなに怖いものはなく、また環境の平均的な特徴によって自分の本質に損得が関わってくることはまずないから、とにかく直感的に「好きなようにしてください」ということだった。とはいえべつに衝動的に好きなことをするのがベストと言っているわけでもなく、自分がとにかくいいと思う道で好きにやりなさい、失敗してもいいじゃないの、好きな道なんだから!というような感じで、言っちゃえば無責任なおじさんである。

    その一方でその無責任おじさんのいいのは、「現実的なアドバイス」をしてくるおじさんもどうせ無責任であるから、とにかく納得いく「自分が好きな道」をお勧めしてくれるところが心を軽くしてくれてありがたい。「あなたも若いんだったら自分の人生が大事で仕方ないでしょう」(みたいな感じだったが完全な引用ではない)と言っているところに痺れる。たしかに自分も自分のことが大切過ぎて、自分の得になるような策を張り巡らしたくて、効率良く、ベストな解答を求めて、近道したくて、承認される最短ルートを追いかけている。それに対してそれっておかしくね?ってちゃんと話してくれるおじさん、僕は好きになった。

    で、このおじさん独特の(?)自信に溢れた陽気な感じは嫌いじゃない。とはいえやっぱり男女の特徴的みたいな問題になるとこの人も自覚している通りだけどまあややステレオタイプ的な発言が目立つ。それは気に入らない。言いたいことを言うのは悪くないし本の趣旨ともあってるし、ボトムライン間違ったことを言ってる感じはしない。だけど、男女の2分法系はなんかむず痒い。別に面白くもないし。ここら辺の好き嫌いというか、そんなこと言っていいワケ?シラーという感覚はなかなか通じねえなと思った。

    4点にしているのは僕はもっと皮肉っぽい捻くれた人とかクソ野郎だけど賢そうな人が多分好きだからで、この人はめちゃくちゃ素直に色々書いているので気持ちいいんだけど気持ち悪さがいい感じに足りないから1点引いてしまった。あと痛いところを突かれて悔しいからもある。

    というわけで自由に考える(感じる)応援歌のよつな本であった。大学に入る前に読みたかった...!悔しいが今出会えたことに感謝したい。とにかく端的には「(あなたの選択なんだから)好きなようにしてください」っていう話。一読の価値ありですよ!この人の他の本も読んでみたい!

  • 明確なキャリアプランなど不要であるという立場から、悩みを抱える質問に対してズバッと、「そのままでいい、だいたい、人生はそのようなものだ」という観点から話す論。

    就職活動をしていて感じる違和感や疑問を肯定してくれるだろう。私個人も「自己分析ってなんだ? 働いた事無いのに、自分に向いてる企業なんて分かるかよ」「キャリアキャリアって、そんなに大事なのか。 べつに、これといってやりたいことなんてないぞ。」ような疑問を思った。

    楠木先生ならこう答えるだろう。「好きなようにしてください。多分、どの企業に行っても良いと思う部分もあるし、違うと思う部分も出てくる。そこでまた、考えればいい。」


    孫正義、坂本龍馬など、具体的な志を立てて一生を生きることとは正反対。川の流れのように、生きることを説いている。

    仕事に関する解釈も就職を控えた私個人にとっては秀逸。「仕事の評価基準は他人。自分のためにやるのは趣味。ここの認識を誤ると、いらん悩みがでてくる。」

    「自分が働きたい職場どうか」という、自分ばかり見てきて就活をする学生にとっては、ハッと気づかされる一言。

    P.S 再読して思ったこと、めちゃいいフレーズ
    ■キャリアや働き方なんて、どこまでも自己中心的な問題なので、そもそも他人の評価や平均値、ランキングを気にすることほど無意味なことはない
    →そりゃそうだ。好きなアーティストのライブに行くとき、「周りの人も、このアーティストのことが好きなのかな?」」とか、考えるわけがない。考えたって意味がない。キャリアはどこまで行っても、好き嫌いで考えられるべき事象。そういった、あっけらかんとした考え方に、ものすごく、背中を押された


    ただ、一つ疑問に思ったのは、先生は「好きなようにしてください」というスタンスにこだわるあまり、悪いアドバイスをしていないかということ。作中の中で、「自堕落な生活をしてしまう自分を変えたい。分かっちゃいるけどやめられない。どうすればいいか。」というような趣旨の質問があった。これに対しても先生は「好きなようにすればいい。その自堕落な生活があなたのやりたいことなのだ。健康的で規則的な生活をホントにあなたが望んでいるなら、すでに実施しているはず。そうしていないということは、あなた自身がさして望んでいないということだろう。だから、いまのままでいい。」というような、解答をしていた。これは、近視眼的な考え方だと思う。楠木先生も著書の中で言っていたがが、もっと時間的スケールを持って捉えるべきだ。
     怠惰的な生活は、そのプロセスは楽しいが、全く蓄積がなく、結果として何も結実しないことにある。だからこそ、相談者は変えたいと思っている。知識レベルでは理解できているものの、理性が負けている現状について、困っているということだ。したがって、自堕落な生活を続けて数十年も経てば、その一分一分は楽しいが、振り返ったときには、悔いしか残っていない。

    「好きなようにする」ためには、かならず短期的ではなく「長期的にみて、好きなことか、望ましいことなのか」を抑えたうえで行動するべきだろう。

  • 意識高い系のおにーさんおねーさん達を「好きなようにしてください」とぶった斬り続ける本。
    比喩の仕方が面白くて参考になった。総合格闘技だったりハゲだったり。

    心当たりが疲れた時に再読する

  • またまた職場のHちゃんに「ふくだにぴったりだよ」って貸してもらった本。相変わらずセンスいーぜ。ほんとありがと。
    雰囲気はかっる~い本なんだけど、けっこうバイブル的に読み直したくなるかもで、きっと自分でも買うと思う。

    一言でいうと、キャリアや仕事に悩む有象無象の輩の質問に対して、その無駄なプライドをばっさり切って「好きなようにしてください」と言い続ける本。
    この本がいいのは、肩書で言ったらキャリアをバリバリ語りそうな筆者が、結局はなんだっていいんです、流されたっていいんです的なスタンスでものを語って、意識高い系に影響されまくってる質問者たちをバシバシ切るところです。痛快です。

    この筆者、けっこう本性は中二病的なところがあると思う。自分はテキトーなんですよすいませんねと言いつつ、他者が突っ込み入れづらい程度の高度な知識を回答のそこここに散りばめてます。これって学者だからというより、高度な中二病のテクニックなんだよね(ふくだ自説)。自分を下げてるようで相手の論理の破綻を示したり、相手よりもっと深い知識を提示したりする。これはもんのすごい自意識の高さの表れです。でもその高さを学者レベルまで高めた知的な方なのですよ、たぶん。だからとても親近感を持ちました。(あ、私は残念ながら高度なテクニックを持ち得ていない中二病人間っす、念のため。)

    で本編に話を戻すと。
    読んで覚えてるポイント、筆者の一貫した主張は以下かな。

    ・環境ではなく仕事の内容で考えろ
    ・スキルじゃなくて、稼げる力をつけろ。スキルなんて陳腐化する。稼げる力=Revenue増加かCost低下に貢献できる力を持てる人間になれれば強い。
    ・自分が幸せで、ストーリーをキラキラと語れるなら何やったっていい。逆にストーリー語れないなら意味がない。
    ・仕事は誰かのためにやるもの。自己満足では意味がない。

    ほかにも面白いこと言ってたと思うけど、こんな感じでした。私みたいにキャリア志向が薄くて、でもキャリアを目指さないでいられる理由も何ももってなくて(それこそ職場がいいから差別も偏見もないし、チャンスは平等だし、独身だし涙)、でも「アップ!アップ!レベルアーップ!」ってのを目指すのが苦手で、その結果世の中の全員に批判されてる気分になってる人間には、溜飲が下がる思いでしたよ。ああ卑下がすぎててすみませんね。中二病なんでね。
    とりあえず好きなように生きるために、稼ぐ意識は持とうな、お前って自分に言い聞かせました。

  • 最高に面白い読み物としての経済書?ですね。楠木さんのちょっと脱力感のある回答が本当に面白い、そのとおりだと思います。会社経営者からみると、なんでそんな質問をするんだろと思いますが、本人にとっては重要なことなんでしょうね。

  • 普段この手の本は読まないものの、夫の本棚で目についてちょっと覗いたら面白くてそのまま借りました。

    これはキャリアに悩んでる時に読みたい!(まさに今)
    NewsPicks読者?からの質問に、ほぼ全て「好きなようにしてください」と回答笑
    ちょっと突き放してるようで、背中を押してるようで、そして余談が非常にタメになったり自分自身ハッと気付かされることもあったり。
    自分も転職すべきか?自分に向いてる仕事は?などなどキャリアについての悩みは尽きない。
    本書に何度か出てくる、「川の流れに身を任せ」がめちゃくちゃ刺さった。機が熟したらその時の流れに身を任せていけばいいや、と思うと幾分気が楽になる。
    お悩み事によって、刺さる内容も異なりそう。また10年後くらいに読んでみたい本。
    あーおもしろかった!

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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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