「いい会社」はどこにある?──自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (850ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478116784

作品紹介・あらすじ

現役社員1000人超のナマ取材データを徹底分析!! ネット検索では見つからない「失敗しない職場選び」の最短ルート

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  • いい会社はどこにある? 2022

    2022年11月29日第1刷発行

    MyNewsJapanを運営する渡邉正裕氏による著作。
    800ページを超える大作で手に取った時に驚いた。
    まるで電話帳のようだ(最近の若い方は電話帳をご存知ないかも)
    ただし値段は1800円+消費税。
    この情報量でこの値段。安いと言って良いだろう。
    2021年に亡くなったジャーナリスト立花隆氏は「金を惜しまず本を買え。本が高くなったといわれるが、基本的に本は安い。一冊の本に含まれている情報を他の手段で入手しようとしたら、その何十倍、何百倍のコストがかかる」と指摘していた。
    その言葉を思わず思い出した。
    TwitterなどでJTCは~と日本企業を揶揄するアカウントがいるけれども、日本企業も実に多様化しており、それぞれの企業、業界でこれだけ異なるのだ。
    それを無理やり日本企業論として語ればどうしてもピント外れになっていくことは避けられない。
    渡邉正裕氏は高校生でも読めるように書いたと冒頭で書いている。
    実際にページの下部分に語句の注釈が細かくついていて良い。
    ただ中学生でも問題なく読めると思う。
    とくにパイロットになる選択肢は若い頃にしか事実上ないので重要だ。
    進路指導者にも読んでほしいとあるけれども、実際にできることは少ないような気がする。
    高卒求人にこの本で紹介する企業に就職する手段は現地の工場などが中心になる。
    それに一人一社ずつ受ける体制もまだ大きく変わっていない。
    進学校、自称進学校は大学受験指導しかできない。
    せいぜい文系、理系のわけた指導までしかできない。
    高校生もIT系にいくために自ら参考書を買って勉強してもらうしかない。
    大学生相手の進路相談・・これがメインだろうけれども、そもそも大学のキャリアセンターの人員と学生数の差は絶望的に大きい。
    学生が自ら進路を真剣に考える以外に有効な手段にならないと思う。
    自己責任などと言いたくないけれども、自分の身は自分で守るしかない。
    つまり本書を買って日本国家、日本企業の置かれた状況を理解し、自ら努力を重ねていくしかない。人生は厳しいと改めて思う。

    800ページを超える本書ではあるが、中学生高校生の場合は突き詰めると、IT系に進む、国際進出に対応できる高い英語力も備えた人材になる、パイロットになる、あたりが大切なポイントかな。あとは医師になる。
    どれもビジネスモデルとして儲かる構図がありそれが続く見込みがある。
    ただどれも実際になるのは大変だけれども、闇雲に努力をするより方向性が見えている方が救いはあるだろう。
    P220にある図で量産型ノースキル文系が最も苦しいとある..全くその通りだ。
    私ももし子供がいれば自分の母校大学を勧めることはできない。
    典型的な文系学部に偏った大規模私大に文系で進学することはコスパが悪い。

    (2022/12/29木曜日追記 P220の図を見ていて文系、理系の進学において、まず理系が重要であるということ。日本国内でしか意味のない大学群などに惑わされず、情報工学、看護学、薬学、医学部を目指せってことだろう。偏差値の高い有名大学へ進学するためだけの理系からの文転はこれから極めて筋の悪い選択になる。わざわざ文転して東大文系行くくらいなら、入学難易度が低くとも電気通信大学に進学した方が将来のキャリア構築につながる意味のある学びを効率的にできるというものだろう。)


    中年(私は1984年生まれの38歳)になってくると簡単には転職もできないし、他の業界、他の企業との違いを知るという意味で勉強になる。理想はリクルートやソニーのような社内公募が実現すると働く者としては嬉しい。ただ実際にはユニクロ、キーエンス、セブンイレブン型の社員をマシーンのように扱う企業が増えていきそうな予感はある。
    トヨタ式用語を使えば、横展開の究極化である。
    大半の企業はそれすらできていないが・・・


    また就職四季報などの情報も企業によっては総合職、一般職、現業職などごちゃまぜの数字を出してきたり、持株会社の数字だけ公開されていて、肝心の事業会社の数字が開示されていないなどの問題があるという指摘があり、なるほどと思えた。著者の指摘するとおり、画一化されたフォーマットに漏れなく情報公開させる罰則付きの義務を課すべきである。ただ自民党政権が続く限りはこれが実現する可能性は当分先だろう。ここでもやはり残念ながら自己責任として本書などを活用し、それぞれが地雷を避けるしかない。

    印象に残った点
    「いい会社」は都合が悪い情報も、正直に開示する。一般的に会社が開示したくない情報は「新卒の3年以内離職率」「中途採用数と全体に占める比率」「月平均残業時間」「有給消化率と日数の実績」「女性管理職比率」「平均勤続年数」「平均年齢」「平均年間賃金(性別、全体)」あたりである。これらが公式サイトに開示されていれば、社会的責任をもって世間に模範を示そうという意識を持ち、かつチマチマしたこと(競合に知られたくない、あまり胸を張れる数字ではないから恥ずかしい・・・等)を気にしないくらい業績に余裕のある「いい会社」だと思って良い。

    OB・OGというのは、卒業した学校のツテをたどる、ということだ。本来、大学の就職課がやるべき最重要の仕事は、ここに集約されると言ってよい。卒業生名簿を作り、仲介役となる。海外のMBAコースを卒業した人に聞くと、大学側はその人的ネットワークの価値の高さをよくわかっているので、卒業生の連絡先名簿が共有・更新されており、卒業生が企業の経営陣にいたりすると、営業をかけたり、自身の就職・転職を売り込んだりもしやすい。

    卒業生ネットワークについては、エスクローが必要で、それは「信用」がすべてなので、学校組織が自らやるべきである。それが価値を生むのだから、本業中の本業だ。ところが日本の大学の就職課は、新卒者のみを対象としており、中途の転職活動では、ほぼ役に立たない。大学が、昭和の新卒一括採用時代のままなのである。

    エスクロー(Escrow)信頼を置ける中立な第三者を仲介させること、またはそのサービス。

    メガバンクにしても、野村・大和など大手証券にしても、営業先が会って話を聞いてくれるのは、会社の看板があるから。名刺がないと何も仕事ができない人は、60歳で名刺を失った後、何も残らない。

    60代以降に就く「いい仕事」の条件である
    1体力はあまり使わなくてよい
    2中年までに築いた知識、経験、人脈を活かせる
    3市場ニーズが存在し続ける、または伸びる見通し
    4テクノロジーや外国人に容易に代替されない
    5顧客のロイヤルティー(忠誠)対象が個人である

    「評判」を重視する銀行はトラブルを避けるカルチャーがあり、外資のように強引な人事で裁判闘争に発展し会社側が負ける例は、めったに聞かない。

    外資といっても、やはり雇用にたやすく手をつけるのは米国系で、中華系は意外に保守的である。

    再編を終えたメガバンクは、まだ余裕があるため、強引な希望退職の募集も解雇も、行わずに済んでいる。今後、苦しくなるのは、下位の銀行(地銀、信金)である。

    日本の大学がグローバルで評価される存在になりえないのは、このように教員が競争を否定し、既得権を優先し、大学を教授たちのぬるま湯空間にして、ダメな授業や教員が淘汰されず、授業の質が上がらないことに1つの重要な原因がある。

    学生の評価能力を過小評価し、学生からの批判に怯えるメンタルの弱さ。教員たちの既得権を守った結果、日本の大学に共通する教員サイドの「ぬるま湯」は、SFCにおいてさえ、改革されなかった。

    クラッシャー上司も弱すぎ上司も、管理職クラスのマネジメント力不足だ。日本企業はそこに課題があると言われており、課長クラス、部長クラスの報酬水準を国際比較すると、日本企業が劣ることが知られている。

    部下を育てるのが管理職の仕事なのに、破壊するクラッシャー上司でも務まってしまう仕組みを放置しているのだから、その人材価値が低いのは当然で、賃金が上がる理由もない。
    360度評価のような、最低限の「能力を上げる努力」すらしていない企業がいまだ大半を占めるのが日本の実態である。

    社会人経験のない新卒ばかり採用して、この常識を植え付けてしまうのだから、他社はマネできるわけがない。結局、強い会社には、なんらかの非常識な宗教性、思想性がある。
    よくそんなことができるものですね、ちょっと尋常じゃないですよね?と外部からは不思議に見えることを、社内では常識化してしまうからこそ、勝ち抜けるわけである。
    これを合法の範囲内でできている会社は、無敵である。

    ホットラインはともかく、360度評価を未導入の組織には、関わらないほうが無難である。歯止めがないので、上司ガチャがロシアンルーレットになっている。

    「パワハラ防止関連法」は2022年4月に全面施行され、相変わらず罰則がない骨抜きされたものであるが、「義務」になった。これは要するに、今後は従業員と会社が訴訟になったら、この法律を根拠に企業側が「義務を怠った」と認定されて負ける可能性が格段に高まりますよということだ。

    リクルートのカルチャーは、野村證券・電通・三井住友銀のような、上官のゲキ詰めによる「全員戦力化」でもなく、ユニクロ・ANA・キーエンスのような完全マニュアル化の徹底遂行による「ロボット化」でもない。成果がない者はドライに給料を下げ「去る者は追わず」というもの。終身雇用時代に最適化された「全員戦力化」「ロボット化」に対し、「雇用流動化」「働き方改革」が言われる現在、時代は、明らかにリクルートのボトムアップ型に追い風が吹いている。
    →個人的にここは渡邉正裕氏の指摘する方向性は正しいと思う。ただ実際の世の中の人々は様々な人がおり、様々な知能、能力などの差が存在していて、リクルート、ソニー型(もしくはITエンジニア)のような働き方に適応できる知能を持つ人間は限られているのではないかと思う。結局はユニクロ、ANA、キーエンスのようなロボット化させる働き方、オペレーション化できる企業が勝ち続けると予想する。ただ多くの企業はそこまでの尋常ではない横展開力を持っていないと思う。ゲキ詰め型企業はパワハラ防止法、働き方改革によってこれまでのような指導法、働き方ができないので恐らく長期的には業績が悪化していくはずだ。

    大手出版の女性誌編集者は20代後半で年収1200万円にもなり、年功序列で上がっていく。出版不況と言われることがあるが、これは嘘で、書店不況なだけである。デジタル版でシェアが高い漫画については「鬼滅の刃」「ワンピース」(集英社)「名探偵コナン」(小学館)「進撃の巨人」(講談社)など、各社が漫画で継続的にヒットを飛ばしつつ過去の蓄積があり、再販規制にも守られているため業績は手堅く、とにかく労組が強い。

    専門能力を身につけ高給で民間企業から求められる人材になるか、ブラック企業がハローワークに出している求人案件をさまよう人材になるか。その選択は学生時代から始まり、30代には終わる。40代からまったく新しいスキル分野を身につけるのは、そこそこキツいからだ。
    まだ30代半ばまでなら、働きながらでもIT系の専門学校に通うなりして、技術を身につけることは可能だ。すべての業界にとって、企業が生き残るためにIT化は不可欠であり、人材ニーズが弱まることは考えにくいからだ。世の中のニーズを無視してキャリア形成しようとしても、それは逆風に向かって突き進むようなもの。追い風を受けられるような専門能力が何かを把握し、それを初期研修やOJTで身につけられる会社選び、を考えてもらいたい。

    2022/12/24(土)記述

  • 著者独自の枠組みと階層・図表は、明瞭であり、わかりやすい。資料の図式化という点でも優れている。
    そのため、845頁という大著であるが、さっと読める。その点で読書習慣のない就活生も読みやすいものとなっている。

    ただ、本文中の各企業(グループ)に対する評価は、筆者の主観にやや左右され、あまり納得感のあるものではない。

    図表の素晴らしさは高く評価するが、本文中の記載のバランスの悪さが気になったため、評価は3点としたい。

  • 背ラベル:366.29-ワ

  • まず1800円は安い。845ページで。

    図解がめちゃくちゃにわかりやすい。
    360°評価を知れただけでも、この本に出会えてよかった。

  • けっこうためになる
     著者の広汎な取材によって、日本のそれぞれの業界構造が浮かびあがる。あまりにも説得力が高く、他業界のことがわからなくても、通読すれば明るくなれる。

  • ミシュランの企業版を目指したとのこと。
    ひとくちにホワイト企業、ブラック企業というが、基準が勤務時間なのか社内の雰囲気なのか給料なのかはバラバラだったところをきれいに整理してくれている。
    労働者目線でどの会社を選ぶか、経営者目線で求職者からどんな会社に見られたいか考えるきっかけになる良い本。巻頭の表と巻末の主要150社の評価スコアだけでも1,800円の価値有り。

    ちなみに読んだのは200Pまでとあとがきだけ。

  • ・感想
    めちゃめちゃ分厚かったけど読み終わりました。
    Kindleで買えばよかった。笑
    ・Todo
    人間の欲は際限がないから外発的動機のドーパミン欲求は止まらない。
    内発的な動機は時間を忘れて没頭できるようなハマれる仕事を見つける

    サラリーマンの特権は 会社資産(設備、経費、名刺)を使えること。
    そしてリソース(ブランドネーム、資金力、ネットワーク力、知財、人材など)にアクセスしそれらを利用する権限を持ち能力にレバレッジ(てこの原理)をきかせられる点にある。

    裁量権を求めるか仕事にやりがいを求めず生活軸重視でやるかは個人次第

  • 20年くらい様々な会社の社員を取材して書き上げた、企業カルチャーのまとめ本。

    企業とも相性が合う合わないはあると思うから、ちゃんとマイナス面も出して、お互いに選べる環境になったらいいのに、と思った。

  • まず何よりも、読み物として面白い。
    その上で、キャリアを考えるにあたり、大いに参考になる。
    最後は自分で見極めさえすれば、非常に良本かと。

  • ボリュームがすごい!大手企業の内容が多いがそこからいい会社悪い会社の共通点を勉強できた。

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著者プロフィール

渡邉 正裕(ワタナベ マサヒロ)
ニュースサイト『MyNewsJapan』(mynewsjapan.com)のオーナー、編集長、ジャーナリスト。
1972年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、日本経済新聞の記者、日本IBM(旧PwCコンサルティング)のコンサルタントを経て、インターネット新聞社を創業。一貫して「働く日本の生活者」の視点から、雇用・労働問題を取材、分析、提言。著書に『企業ミシュラン』シリーズのほか、『10年後に食える仕事 食えない仕事』『35歳までに読むキャリアの教科書』『若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか』『トヨタの闇』など多数。

「2020年 『10年後に食える仕事 食えない仕事 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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