不確実性のマネジメント―危機を事前に防ぐマインドとシステムを構築する (ミシガン大学ビジネススクール)

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478374030

感想・レビュー・書評

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  • 大昔に読んだが、改めての再読。本書は危機に対して、予防と対策を述べている。コロナ禍におけるオペレーションのまずさがいたるところで目立つが、組織論の専門家が政策に関与していればと感じる。(今の学術会議のメンバーには当該専門家は含まれていない。)日本においてもそのほかの国においても、本書から学べることは多いはずだ。

  • ■不確実性のマネジメント

    A.「期待を持って将来のことを考える」からこそ、それが想定通りにならなかった場合、人は不意をつかれた間隔に陥り、不測の事態だと感ずる。

    B.事故防止に成功している組織の特徴
    1.失敗から学ぶ
    2.単純化を許さない
    3.オペレーションを重視する。
    4.復旧能力を高める。
    5.専門知識を尊重する

    C.HRO(高信頼性組織)は単純化するものを減らし、より多くのものに目を向ける。彼らは自分たちが直面する状況は複雑かつ不安定で、全てを知知り、予測することは不可能であると心得ている。そこで、できるだけ視野の広い場所に身を置こうとする。そして、多様な経験を有する部門横断型の人間、常識的知識を持って疑ってかかる意欲、多様な人々が感ずるニュアンスを壊わさず合意点を見つけ出す交渉術、といったものを奨励する。

    D.HROの描く「全体像」は他の大部分の組織のものと比べ、戦略より現場の状況を重視する傾向が強い。

    E.不確実な状況にミスはつきものであり、HROでは過失を発見・抑制し、そこから立ち直る能力を開発する。過ちを犯さないのではなく、犯しても機能マヒに陥らないこと、それこそがHROのHROたる所以なのだ。

    F.復旧能力とはミスの拡大防止とシステムが機能し続けるための即興的な対応措置の、両方を行うことである。これらの復旧策はともに、技術、システム、人間関係、原材料などに対する深い知識を必要とする。

    G.流動的な状況では、あらゆる場面を想定し、その1つひとつに規則を定めることなど不可能である。かつ各オペレーションの遂行方法を厳密に規定していた命令形態は、ヒエラルキー色の薄い、より柔軟な方式にとって代わられる。

    H.安全は「表面化はしていないが、流動的な状態だということだ。安定した結果がもたらされているようにみえるのは、物事が安定的に繰り返されているためではなく、常に変化に対応しているからである。この安定を維持し続けるためには、システム全体の1つの要素に変化が生じたら、別の要素が変化することによって相殺されなければならない」

    I.マインドは、現状の予想に対する反復的チェック、最新の経験に基づく予想の絶えまない精緻化と差異化、前例のない出来事をいみづけるような新たな予想を生み出す意志と能力、状況の示す意味合いとそれへの対処法に対する繊細な評価、洞察力や従来の機能の改善につながるような新たな意味合いの発見、といった要素が組み合わさったものといえる。

  • 本質的には複雑ではないものを分かりやすいものにする努力は必要だが、本質的に複雑なものを簡単にしようとすると失敗する。ビジネスでは、問題について「分かりやすく説明しろ」と求められることが(マネージャー層に)多いが、本質的に複雑な問題は分かりやすくなどできないし、知識が無ければ理解もできないことがあるということを、もっと認識するべき。

  • 「戦場の混乱の中では、自分たちの手柄話をつなぎあわせ国家や連帯の虚栄心をみたすものに編集する傾向がある。戦闘があったその日のうちに尋ねれば、飾られていない事実を聞きだせる可能性があるが、一夜明ければ既に美しい飾りを身にまとっている」
    『もともと予想していた内容を維持したいがために、不足の事態を無理やり正常とみなそうとする。予想を裏付ける事実ばかりを求め、逆の真実を避けたがる。こうした傾向がある場合、ちょっとした不注意や認識ミスが大惨事に発展する。』

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