企業価値を創造する会計指標入門

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478470763

作品紹介・あらすじ

会計指標は「企業価値向上」のベンチマークとなる。株価に比べて、景気動向に大きく左右されず、企業が十分にコントロールできる指標である。企業は適切な会計指標を目標に掲げることで、自社の向かうべき道筋を明らかにできる。一方、投資家をはじめとするステークホルダーも、その企業が何を目標としているのか、目標水準は妥当なのか、その実現によって本当に企業価値が向上するのかを、具体的に検証することができる。本書では、多くの企業が採用している10の会計指標を、豊富なケーススタディをもとに読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 計算方法としては知っている(中にはよくわかっていなかったものもあるが)会計指標の奥深い意味を教えてくれる良書。

    ROEだとかROA、フリーキャッシュフローが何を意味していて、その値が高いことが企業にとって重要だということはなんとなくは理解していた。しかし、そのちょっとした差が意味するメッセージ、特に資金調達元に対するメッセージについては全く考えたこともなかった。

    実際には、まだきちんとその差やその指標を使うべき企業、使うべきでない企業を理解しきれていない気はするが、とにかく各々の指標に込められた意味があることはよくわかった。だいたい似たような計算方法だからどれでも似たような評価でしょ、というのでは大雑把すぎるということだ。

    まあ、ただそんなに厳密に意味を追い求めてもというところはあるにはあるけど。

  • 担当:Hirakawa
    対象レベル:中級
    内容:
    企業価値を創造する会計戦略―企業はなぜ会計指標を目標に掲げるのか
    ROE―株主のための投資収益性の指標
    ROA―総資産に対する投資収益性の指標
    ROIC―特定事業にフォーカスした投資収益性の指標
    売上高営業利益率―企業の存在意義を実証する収益性の指標
    EBITDAマージン―設備投資の影響を除いた純然たる収益性の指標
    フリー・キャッシュフロー―企業価値の最大化をもたらす指標
    株主資本比率―企業の安全性を評価する指標
    売上高成長率―既存事業にフォーカスした成長性の指標
    EPS成長率―株主を向いた成長性の指標
    EVA―資本コストを組み込んだ企業価値算定の指標
    会計指標の選択とポートフォリオ―企業価値の向上を目指して

    ケーススタディ形式で上記の指標についてどのように実際利用するのかを解説しているのが本書である。

    経営指標の会計的側面について詳しく書かれた書籍は多いが、一つの指標に対して一つの企業の分析がついておりその企業にとってその指標がなぜ重要なのかという構造的な意味を解説している本は少ないためとても有用である。

    またそれぞれのケースは、その企業がおかれた外部環境と戦略について説明され、それとその指標の持つ意味の関連が記述されている。この分析は、一般的なアナリストのレポートよりも、企業のおかれた環境が構造的に記述され、私自身が実際に企業分析を行う際に非常に参考になった。

    この本棚でバリュエーションの本として、"日経BP MBA-バリュエーション”が紹介されているがそれが基本編で初級用レベルの本だとするならば、本書は3段階位レベルが高いので中級レベルであると判断した。

  • 『#企業価値を創造する会計指標入門』

    ほぼ日書評 Day634

    現在、勤め先の研修副読本テキストとして指定している『会計×戦略思考』(ほぼ日では未アップ)の著者、大津広一氏の2005年の著書である。

    タイトルには「入門」とあるが、なかなかに骨のある本。
    指標ごとに、それを重視している企業をケースとして取り上げ解説する。
    2005年刊行当時の評価を、今になって振り返ると、「実態」はどうで、それをどのように見せようとしていたのかの比較ができて面白い。さらに、ケースとして取り上げられる事例への本著内における著者の評価が、後日談を知っている我々から見ると、かなり的確なことに驚かされる。

    ROICの項では、ゴーン氏が現役で、世間では日産リバイバルプラン→バリューアップの流れのが高く評価されていた、この時代において、著者はROIC 20%という(トヨタやホンダよりも優位な)数字を叩き出すために、あえて手元現金の抑制を計算式から除外してみたり、高配当で株主の離脱を抑えたり等と、やや無理をしているのでは?というニュアンスを言外に、ただしかなり強めに匂わせている。

    営業利益においては、シャープがトップ、"ソニーショック"とも呼ばれた同社は、なんとサンヨーよりも下、かろうじてパイオニアを上回る地位に。時代の移ろいを感じるが、それでも著者がソニーの戦略およひ目標として定める経営指標に一定の価値を認めている点が興味深い。

    フリーキャッシュフローの章では、Amazon(まだ単なるEC小売業だったころ)が取り上げられ、利益率よりもFCFを重視するベゾスの考えがポジティブに評価される。この時点で Amazonはまだ2億ドルの債務超過状態であったが、市場はその成長を見込み、180億ドルを超える時価総額という評価を与えている。その後のAmazonの成長はご存知の通り(現在の時価総額は、ほぼ1兆ドル)。

    EVAの説明はわかりやすい。この界隈では「エバ(エヴァ)」と言ってもエヴァンゲリオンではないので要注意。

    終盤では、こんな手厳しい指摘もなされる。重要と思われるので、やや長くなるが引用する。
    (以下、引用)
    柿は、2005年3月期に、ある上場企業が決算短信上に記載した内容を一字一句変えずに掲載したものである。
    >>「目標とする経営指標」
    当社は、経営日標には経営指標は重要であると認識しており、具体的数値も参考にすることは無論ですが、企業価値をトータルで増大させ、かつ持続することが大切であると考えております。また、当社グループは単体業績を大きく上回る運結業績であり、現状では安定性かつ継続性のある目標数値として採用できる適切な数値、及び会社が目標とする経営指標につきましては特に限定せず、各利益項目の安定確保を最重視した経営を行うことで諸経営指標の向上をめざしてまいります。

    ここからどのような経営のメッセージが読み取れるであろうか。少なくとも、著者には何も読み取れない。自社の目指すべき道について言葉を濁したいときに出てくる「企業価値の云々」の典型に思えてならない。経営指標が大事だと考えるのであれば、なぜそれを設定しないのか。企業価値を増大させ、持続させることが大切だと思うのであれば、なぜ具体的な道筋を示さないのか。駆け出しのベンチャー企業であれば分からなくもないが、当社は第72期決算を迎えた、歴史のある企業である。自社の何が重要であるかを語れない企業が、果たしてステークホルダーの信頼を得ることができるのだろうか。

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  • 10種の経営指標について、どのような指標で、どのような企業が用いるのかといった解説に始まり、具体的にそれを指標として掲げた企業の例を解説し、具体的なイメージがわくような構成とされている。少し分厚いが学びもその分手厚い良著。
    <メモ>
    ・会計指標は誰もが理解しやすいこと、理解のしやすさがそのまま成否の判断のしやすさにもつながること、企業が十分にコントロールできることにおいて優れている。
    ・企業が目標として掲げる会計指標に共通して重要となる論点
    ①妥当性:企業価値の向上の代替指標であること
    ②簡便性:メッセージとしてシンプルであること
    ③実現可能性:企業努力によって十分達成が可能であること
    ・売上高営業利益率は競合他社比較によって本業の競争優位性の評価を行うことが多い指標でもある。生き残りのじょうけんが収益性を高めることに大きく集約される企業であるほど、売上高営業利益率を目標として掲げる意義は大きくなる。
    ただし、営業利益は売上ありきでなく調達資本ありきで設定されるもの。
    ・フリーキャッシュフローはネットキャッシュフロー。
    成長期待が高ければ将来投資の原資となり、成長期待が低ければ株主と金融債権者に多くを還元することにより、企業価値の維持・向上を行う。
    ・BSの数値を用いて計算されているのはROE,ROA,ROIC、FCF,株主資本比率、EVA。
    ・指標の中で直接的にCFの概念を示しているのはEBITDAマージンとFCF。営業利益と違い、EBITDAは減価償却費の控除を足し戻して、CFベースの収益性を評価するもの。
    ・会計指標別の特徴
    ①ROE 目標とすべき企業は原則すべての上場、公開企業。優先度が低い企業は事業再編リストラが完了したばかりで株主資本が毀損している企業。
    ②ROA 目標とすべき企業はバランスシートが膨らむことを前提とする業界、余剰資産が大きいと思われる企業。製造業、小売、総合商社、電力ガス通信鉄道建設不動産など
    優先度が低い企業はバランスシートに競争優位の源泉が少ない企業。オンライン小売業、コンサル業
    ③ROIC 目標とすべき企業は複数事業を営んでいる企業。バランスシートが膨らむことを前提とする業界、余剰資産が大きいと思われる企業。重工業業界、航空機船舶橋梁、プラントなど。資本コストの意識を組織内に浸透させたい企業。優先度が低い企業はバランスシートに競争優位の源泉が少ない企業。
    ④売上高営業利益率 目標とすべき企業は同種の製品やサービスを扱う企業間での競争環境が激しい業界。総合電機業界、トイレタリー、化粧品業界。
    優先度が低い企業は競争環境がそれほど激しくない業界。売上高総利益率が重要な位置を占める業界。薄利多売を常とする国内総合小売業など。
    ⑤EBITDAマージン 目標とすべき企業は減価償却費が大きく、かつ同種の製品やサービスを扱う企業間での競争環境が激しい業界。通信業界など。優先度が低い企業は減価償却費が大きくない業界。競争間競争がそれほど激しくない業界。利益に比べて減価償却が低い製薬業など。一方電力ガスは規制業界であることからマージンを指標とすることは比較的意義が薄い。
    ⑥フリーキャッシュフロー 目標とすべき企業は原則すべての企業。追加設備投資と追加運転資本おいて経営として特に重要なメッセージを伝えたい企業。キャッシュフロー経営への意識を社内外に浸透させたい企業。優先度が低い企業は追加設備投資や追加運転資本について、今後の変化がさほど予測されない企業。

    ・目標達成に向けての仕組みづくり
    ①正しい経営戦略、競争優位性のある製品、サービス
    目標指標を達成するのは正しい経営戦略と競争優位性のある製品、サービス。
    ②経営者のコミットメント
    ③権限委譲と責任の明確化 
    現場の一人一人が目標の達成に向け動けるように。
    ④報酬との結びつけ、信賞必罰
    ⑤予実管理と社内外への開示

  • 自分の求める情報以上の事が書かれてあるので、さらっと指標の説明だけを流し読みしかしてないが、投資家への会社分析というより、経営指標を用いてどの様な経営を行なうかについてのウェイトの方が大きい内容かと思う。

  • 会計・財務に関わるコンサルティング業務で活躍する大津氏の会計指標に関する入門書。

    ゴーイングコンサーンである企業にとって、企業価値とは何か、なぜ企業価値を高める必要があるか、企業価値を高めるためにどんな指標を持ち企業活動を行っていくかを議論することは極めて重要である。

    企業価値とはΣFCFn/(1+WACC)nで示される。
    ちなみに、
    FCF=営業利益×(1-実効税率)+減価償却費ー追加設備投資ー追加運転資本
    WACC=D/(D+E)Rd(1-T)+D(D+E)Re
    D:有利子負債の時価総額
    E:株式時価総額
    Rd:有利子負債の利子率(金融債権者の要求リターン)
    Re:株主の要求リターン
    T:実行税率

    1.ROE(株主の投資収益性の指標)
    2.ROA(総資産に対する投資収益性の指標)
    3.ROIC(特定事業にフォーカスした投資収益性の指標)
    4.売上高営業利益率(企業の存続意義を実証する収益性の指標)
    5.EBITDA(設備投資の影響を除いた純然たる収益性の指標)
    6.フリーキャッシュフロー(企業価値の最大化をもたらす指標)
    7.株主資本比率(企業の安全性を評価する指標)
    8.売上高成長率(既存事業にフォーカスした成長率の指標)
    9.EPS成長率(株主を向いた指標)
    10.EVA(資本コストを組み込んだ企業価値算定の指標)

    企業活動の指標となる上記の10指標について、トヨタ・武田薬品・ソニー・松下などの日本企業の例を出しながら、解説している。

    わかりやすく、会計指標について解説した本で、入門書としては最適ではないでしょうか。

  • 指標の解説そのものより、ケーススタディでグローバル&日本の一流企業を取り上げて分析している箇所が勉強になるとともに、マネジメントの面白味を感じた。
    様々な経営指標の中から、会社の業績やビジネス環境などを勘案して、目指すべき道筋がよりはっきり見える様なものを採用するという、マネジメントの真骨頂ともいえる部分に触れることができたが、やはりグローバル一流企業と比べると、日本は遅れているような印象を受けた。

  • 経営の目標として掲げられる「企業価値の向上」をテーマに10の経営指標を分かりやすく解説。

    タイトル、表紙を見ると会計の専門書っぽいけど、会計初心者や株式投資初心者にも分かりやすく読みやすい。

  • 言葉の定義って重要だよね。わかりやすくよくまとまっていた。

  • オーソドックスな指標を判りやすくかいてあり、本の厚さにくらべ非常に読みやすかった。変な入門書を読むよりは良いと思います。
    特にROEやROA、ROICは分解してしっかりと考えれるようになりました。
    http://kaeru.orio.jp/10shihyou.html

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著者プロフィール

1989年、慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業。米国ニューヨーク州ロチェスター大学経営学修士(MBA)。富士銀行(現みずほ銀行)、英国バークレイズ証券、ベンチャーキャピタルを経て、2004年にオオツ・インターナショナルを設立し、代表取締役に就任。米国公認会計士。会計・財務に関わるコンサルティングや、年間40社の企業を訪問し、アカウンティング(財務会計、管理会計)、コーポレート・ファイナンスを中心に、日本語、英語による実践的マネジメント教育に従事。ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学大学院客員教授。早稲田大学大学院経営管理研究科、慶應義塾大学理工学部でも非常勤教員として指導している。東京証券取引所上場企業複数社での社外役員を兼務。著書に『ビジネススクールで身につける会計×戦略思考』『ビジネススクールで身につける会計力と戦略思考力 ビジネスモデル編』(以上、日本経済新聞出版)、『企業価値向上のための経営指標大全』『戦略思考で読み解く経営分析入門』『英語の決算書を読むスキル』(以上、ダイヤモンド社)、共著に『会計プロフェッショナルの英単語100』(ダイヤモンド社)などがある。

「2022年 『ビジネススクールで身につけるファイナンス×事業数値化力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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