申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

  • 大和書房
3.80
  • (131)
  • (193)
  • (144)
  • (28)
  • (11)
本棚登録 : 1705
感想 : 206
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479794332

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ☆3(付箋12枚/P317→割合4.42%)
    辛口でとっても面白い。ポーターのフレームワークで前半部が定着したのは退屈な3章以降を読み切った人がいないからだろうとか、結局コンサルでやってるのはコミュニケーションだとか、確かにそういうものですね。納得。

    ・問題はサプライチェーンや工場の整備状態や、個々の改善課題や生産工程にあるわけではない、とわかっていたことだ。問題は状況に反応する人間の側にある。ビジネスの問題はことごとく、状況に対して反応する人間が引き起こしている。

    ・私がこの本を書いたのは、経営コンサルタントとして30年も働いてきて、いい加減、芝居を続けるのにうんざりしてしまったからだ。
    まったくどれだけ芝居を打ってきたことか―「この在庫管理システムを導入すれば、問題は解決します」とクライアント企業に断言しながら、肝心なのはサプライチェーンの部門間の信頼関係を構築することだったり、「商品開発プロセスエンジニアリング」と銘打ったプロジェクトを立ち上げていても、実際にやっているのは、営業、マーケティング、研究開発(R&D)の各部門の連携強化だったり、コンピューター並の明晰な思考力で問題を解決したように見せながら、本当はクライアントの関係者の思惑を読み取るのがうまいだけだったり。
    何よりいたたまれないのは、クライアント企業の従業員を「資産」として扱い、監視、評価、標準化、最適化すべきであると唱えてきたことだ。
    私が自分のやっている仕事をありのままに話せないのは、「貴社の関係者の連携を強化するお手伝いをします」なんて言っても、誰もコンサルティングの仕事を頼んでくれないからだ。

    ・『競争の戦略』によって、マイケル・ポーターは企業人の頭に「競争優位性」という言葉を植え付け、有名な2つのモデルを提唱した。ひとつは、「5つの競争要因」で、業界の競争をめぐる3つの内的要因(既存の競合企業同士の競争、買い手<顧客>の交渉力、サプライヤーの交渉力)と2つの外的要因(新規参入企業の脅威、代替品の脅威)からなる。
    これは業界分析を行うためのフレームワークであり、第一章で紹介されている。第二章では、その次に有名な「ポーターの3つの基本戦略」、すなわちコスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略が示される。業界における自社の立ち位置によって3つの戦略のうちどれかを選び、競争優位性の確立を目指す。
    あとの章はとんでもなく包括的な青写真といった感じで、競合分析、競合の反応予測、代替戦略決定のための業界構造分析などを扱っており、項目ごとに膨大な数のチェックリストがついている。
    私はこの本を読もうとして何度も挫折したあげく、やっとの思いで読み終えたとき、ふと気がついた。この本のうち「5つの競争要因」と「3つの基本戦略」だけが経営用語として定着したのは、おそらく挫折しないで第三章以降も読み切った人がほとんどいなかったからにちがいない。

    ・私たちはまず巨大な作戦司令室を設け、経費削減目標に対する進捗状況を示すチャートやグラフを壁じゅうに貼り付けた。なかでも目を引いたのは「資産効率性」というタイトルで幅約1メートルの模造紙に描かれた棒グラフで、社内の各部署の面積1平方フィートあたりに生み出される収益の額を示したものだった。
    当然ながら、最も生産性が低いのは肥大化した本社組織と巨大な研究センターだ。現実的にはそれらの部門を売却するわけにはいかないが、このグラフによって私はコンサルティングに関する重要なことを学んだ。このように細かい分析を行って、その結果を立派なグラフにまとめれば、クライアントは感心してくれる。あとは、ひとつの指標をX軸に、別の指標をY軸に置いた4象限のチャートを作ること。このふたつのはおそらくコンサルティングスキルのなかで最も使える重要なスキルだろう。

    ・戦略策定の実行における問題は、戦略策定は、今後の経済状況や、業界の変化や、競合他社の動向や、顧客のニーズを予測できることが前提となっている点だ。
    しかし、そんなことがまともにできる人間はいない。だからこそ、金融の専門家はインデックスファンドへの投資を勧めるのだ。大多数のミューチュアルファンド・マネージャーは、大多数のリサーチャーを使って盛んに研究を行っても、打ち負かしたいと思っているインデックスファンドよりよい運用成績をあげることができない。
    将来を予測するのが仕事の世界的な経済学者にしても、2008年に起きたリーマンショックを予測したものは皆無に等しかった。にもかかわらず、将来を予測し、将来の事業構想にしたがって計画を実行に移すのが、ビジネスのベストプラクティスとして、企業が成功するために必要なこととされているのだ。

    ・ある地域マネージャーは、毎年とうてい達成不可能な売上目標を課せられることに、いい加減うんざりしてしまった。自分がボーナスをもらえないだけでなく、チームの部下全員が目標未達の罰としてボーナスをもらえなかったのだ。自分だけが罰を受けるならまだしも、必死でがんばっている部下たちに毎年、毎年、インセンティブ支給の基準を達成できなかったと告げるのは、身を切られるほど辛かっただろう。
    ある年、その地域担当マネージャーは、今度こそは年度末の売上目標を達成できるように、申し訳ないが必要数よりもかなり多めに発注してほしい、と取引先の販売代理店に頼み込んだ。売れなかった分はあとで返品してもらって構わないから、と約束した。その結果、彼のチームはついに目標を達成し、ボーナスを獲得。ところが翌々四半期になると、会社には大量の返品が押し寄せた(地域担当マネージャーはとっくに辞意を固めていた)。
    返品後に売れなくなった商品のほとんどを償却するだけでも会社にとっては巨額のコストだが、それ以外にも余計な手数料や在庫保管量がかかるうえに、騒ぎの影響で各方面への対応にも追われた。
    その地域担当マネージャーを弁護するなら、彼が達成を命じられた売上目標はどう考えても現実的なものではなく、停滞した市場で二桁成長を実現したいという経営幹部の野望が押し付けられたにすぎなかった。
    このような考え方の根本には、「ストレッチ目標を与えれば、現場はどうにか知恵を絞って達成するものです」というコンサルタントのアドバイスが透けて見える(私もかつてはそう言っていた。本当に申し訳ない)。たしかに、彼らは知恵を絞ったのだ!

    ・「斬新で革新的な家電をつくりたい」と思っている企業が、「ではそれを測定可能な表現にしてみましょう」とコンサルタントからアドバイスを受けたとする。たとえば「年末までに斬新で革新的な商品をX個つくる」といった感じだ。このシナリオはさきほどの減量か健康的なライフスタイルかの問題に相当する。つまり、目的がまったく異なるのだ。後者の目標で最も重要なのは「期限」と「数量」であり、「斬新で革新的」という部分は二の次になってしまう。あげく、とても革新的とは言えない新商品が次々に登場する。その企業が望んでいたこととは正反対の結果だ。

    ・残念ながら、ほとんどの社員は評価スコアを聞いてがっかりする。このシステムでは社員の業績分布を釣鐘曲線に当てはめて業績の高い者と低い者を割り出すため、大部分の社員は平均ランクということになる。
    これは私たちの自己評価とは大ちがいだ。私たちは誰でも、自分は平均より上だと思っている。これは裏付けのある認知バイアスで、「平均以上効果」「寛大化傾向」「優越バイアス」「レイク・ウォビゴン効果」などと呼ばれている。
    トム・コーエンズとメアリー・ジェンキンスは、共著『業績考課を廃止せよ』(未邦訳)において、こう述べている。「社員のほぼ全員が自分のことを優秀だと思っている。だから業績考課の評価やランク付けが最高のレベルでない限り、がっかりしてしまう。実際、社員の98%は自分の業績は上から半分以上には入っていると考えており、しかも80%の人が自分は上位4分の1に入ると思っている」

    ・2011年3月、グーグルは優れたマネージャーの特徴を明らかにするための「プロジェクト・オキシジェン」の2年間におよぶ研究の成果を発表した。グーグルが独自の研究プロジェクトを立ち上げ、何千例もの業績考課やフィードバック調査を分析して独自のモデルを構築したのである。
    その研究成果は「ニューヨークタイムズ」のビジネス欄の見出しを飾ったほか、ビジネスやテクノロジー関連のブログ等で数多く紹介されている。
    グーグルの画期的な研究成果は、重要な順番に次のとおりである。

    <グーグルによる「優れたマネージャーの8つの習慣」>
    ①優れたコーチであること。
    ②ある程度はチームのメンバーに任せ、細かく管理しないこと。
    ③部下の成功と幸せを気にかけていることを態度で示すこと。
    ④生産的で成果志向であること。
    ⑤コミュニケーションをよく取り、チームの意見に耳を傾けていること。
    ⑥部下のキャリア開発を支援すること。
    ⑦チームのための明確なビジョンと戦略を持っていること。
    ⑧チームにアドバイスできる重要な技術的スキルを持っていること。

    この新しいモデルはメディアの賛否両論を呼んだ。少なくともこの50年間、マネジメントの原則の基本として信奉されてきた黄金律となにも変わらないではないか。マネジメントに関する基本的な本や研修に参加したことのある人なら、そう思うかもしれない。そうは言っても、ほかのモデルに比べてずっとシンプルだし、重要な順番に原則が示され、裏付けとなるデータも揃っている。
    グーグルのように世界で最も評価され、規範とされている企業でさえ、優秀なマネージャーの特徴を明らかにするための研究を行う必要性を感じたという事実は、ビジネスの世界で優れたマネジメントを行うのがいかに難しいかを物語っている。

    ・ずばり、私が言いたいのは、優れたマネジメントというのは難しい理屈ではなく、「人」だということだ。なぜ私たちはやたらと複雑に考えてしまうのだろうか。優れたマネージャーになるには、まずは自分自身のことを管理して、勤めを果たさなければならない。次に、周りの人たちとよい関係を築く必要がある。自分や部下たちの将来も考える必要はあるが、それほど重要なことではない。
    …マネジメントの本のなかには、部下と友だちのように仲良くなってはならない、と強く戒めるものが何冊もあった。訓話よろしく次のようなエピソードが出てくる。
    「以前、私たちは仲がよかった。やがて私が昇進して上司になると、彼はひどいやっつけ仕事を提出して私に承認を求めた。あるときは提出すらしなかった。それでも私になら大目に見てもらえるか、代わりにやってもらえるだろうと思っていたのだ」
    まったく呆れた話だ。それが仲の良い人間のすることか?私の仲のいい部下が馴れ合いでそんなふざけたマネをするなんて絶対にありえない。そんな間柄は親しくも何ともない。むしろ敵ではないか。

    ・(ピーターの法則が本当かどうか確かめるため)イタリアのカターニア大学の3名の学生はエージェントベース・モデルを作り、コンピュータ上でシミュレーションを行った。
    階層型組織に160のポストを設け、各エージェントに年齢や能力レベルを当てはめ、無能なエージェントのクビを切ったり定年に達したエージェントを退職させたりして、空きのポストをつくった。それから、エージェントを次のレベルに昇進させるにあたり、3つのルールをつくった。①最も有能な者か、②最も無能な者か、③ランダムに昇進者を選択する、の3つだ。
    また、昇進後の能力を見きわめる方法としては、2種類のシミュレーションを用意した。まったく別の新しい基準で評価するケースと、以前の基準の条件を変更して評価するケースだ。
    ①の最も有能な者を昇進させる方法は、エージェントが昇進後も引き続き能力を発揮できた場合にのみ有効であると言えた。組織で最も優秀な者たちはあらゆるポストにおいて最も優秀な業績を上げるという確信がなければ、この方法による効果は期待できない。昇進後に能力を発揮できなければ、有能な者を昇進させたはずが、組織全体に無能を蔓延させる結果になるからだ。
    昇進後に能力を発揮できなかったケースが最も少なく、そういう意味で最もリスクが低かった戦略は、なんと、最も業績の低い者と高いものを交互に昇進させる方法だった。また、社員をただランダムに昇進させた場合も同様にうまくいった。
    この最後のふたつの方法では、社員があるポストで能力を発揮できなければ、ほかのポストへ移ることができるし、それが「ピーターの法則」による現象を防ぐための唯一の方法である。

    ・どうしたら組織の力を最大限に引き出せるか?どうしたらもっと多くの社員の業績を上げられるか?その答えは、もっと多くの社員が自分にぴったりの職務を見つける手助けをすることにある。それには適正のある職務や、相性のよい上司と仲間、そして適切なスキルが必要だ。そのような職務が全員に見つかるとは限らないが、探そうとしなければ見つからない。それなのに、職場でこのような話し合いが持たれたことは一度もなかった。
    それどころか、私たちは社員の業績考課の評価スコアをめぐってもめにもめ、マネージャーたちには全体の業績分布が釣鐘曲線を描くようにと念を押し、誰にどんな研修を受けさせようかと本人たち抜きで案を練り、次世代育成計画を書面にまとめる。そんなことにばかり時間を費やしている。おまけに、万一、経営陣の半分が航空機事故で死亡した場合の人事の危機管理計画まで作成するヒマはあっても、大部分の社員の能力を最大限に引き出すための対策を練る時間はないのだ。

    ・有名な例では、土などをシャベルですくうために最も効率のよい作業方法を見つけるにあたり、テイラーは人による身長や体力の差や体型のちがいを考慮せず、最も体が大きく頑丈な作業員の動作を観察した。しかも、その作業員に、長く続けることなどできないような最高のスピードで作業をさせたのだ。
    現在ではテイラー主義は大部分において否定されているとはいえ、企業は事業をモニタリングや計測や最適化することによって成功できるという考え方は、現代の経営手法にもいまだに残っている。
    我々はテイラーの効率化運動のお題目をいまだに唱えているのだ。
    …科学における物体には意思がないため、自然の法則に従って動く。物体には意識もなければ、エゴも、感情も、ユーモアのセンスもない。
    それとは対照的に、私たち人間の属する動物界ではビックリするようなことが次々と起こる。ペンギンにはゲイがいるとか、バクテリアは複雑な言語を「話す」とか、ハトは迷路を抜け出せるとか、いったい誰がそんなことを想像しただろうか?それなのに経営科学は、人間は定められたルールに則って行動する理性的な存在である、という前提に立っている。
    個々人のことを考えれば、人間は必ずしも理性に従って行動するわけではないとわかっているのに、人間を集団としてとらえると、なぜか非理性的な部分は見えなくなり、理性的に行動するものと考えてしまうのだ。
    実際、企業経営は科学ではないから「答え」などないし、ましてやビジネスの「ソリューション(正解)」など存在しない。にもかかわらず経営理論は、多数の方法論やあらかじめ用意されたソリューションでできており、成功への手順を指示するのだ。

    ・大事なのは、お金をいただく価値のあるものを創り出すことではないのか?それは、ただカネ儲けが目的のビジネスとはわけがちがう。私たちがアップル社の製品が好きなのは、まさか利益率が高いからではないし、薬を買う理由も、製薬会社の一株当たりの利益が高いからではない。わずかでも、自分たちの生活をより良いものにしてくれると思うからだ。買ったもので生活がより良いものになると思えば、みんな進んでお金を払おうとする
    私の経験から言っても、「どうしたらもっとよいサービスを提供できるか」と言っていた企業が「どうしたら最も儲かる業務契約を取ってこられるか」と言い始めたり、「どうしたら人の命を救う薬を開発できるか」と言っていた企業が「どうしたら巨額の利益を出せる薬品を開発できるか」などと言い始めたりしたら、企業が衰退に向かっている警告のサインだ。

  • 次々に新しい経営理論やはやりの手法が出てくるが結局何も変わらない。そんな理論だけではダメなのがよく理解できる。
    周囲とコミュニケーションをとる
    自分で考える
    当たり前のことが、大切

  • 人間は理性的ではないという根本に立ち返ればなんとなく分かることを、「ロジカル」という概念で押し殺している社会(会社)構造の闇を突いていると思う。
    数字や科学で解明できていないことがあるのだから、もし数字や科学を中心として経営等が成り立つと考えている我々にも問題があると思う。全ては「一寸先は闇」。
    所詮人間と人間がやることなんてそういうもんだよと思いつつ。

  • 【なぜ読んだ】 新聞の書評で高評価だったため。また、業務でコンサルタントと一緒に仕事をすることも多くなってきて、“?”となることも増えてきたため。
    【なにを得たかったか】 コンサルタントの手法・アプローチとどのように付き合うのがよいか。
    【感想】 
    納得できる部分とできない部分はあったが、主観的・主体的であって評論家的な展開になっておらず、読んでいて面白かった。事例が多くあるのも、読んでいて楽しい。
    以下3点は、改めてそうだな、、と思った。
    ・コンサル手法は顧客にありがたがれるが、結局は人と話し合って自分で考えたものでないと、資料を作ってもらうだけになってしまう
    ・公平で客観的な業績評価など不可能である、という点。
    ・大きな成果は、一人では成し得ない。個々の弱みと強みをチームで補って業務を行う。
    以下2点は、どうかな、、と思った。
    ・特性要因図の解釈。使い方が違うような気が。。
    ・諸事情で仕事が優先順位の5番目になったときに、上司から仕事への注力を促されて反発しているところ。上司とのコミュニケーションができていなかった?
    =====
    【気になった部分抜粋】
    ・「この在庫管理システムを導入すれば、問題を解決します」とクライアント企業に断言しながら、肝心なのはサプライチェーンの部門間の信頼関係を構築することだったり、、、
    ・モデルや理論などは捨て置いて、みんなで腹を割って話し合うことに尽きる。
    ・「戦闘準備において、作戦そのものは役に立たないことを常に思い知らされたが、作戦を立てる行為こそが重要だ」
    ・経営改革手法はあくまでもガイドラインとして、あるいは各自の判断で用いるべきツールだと考えるようになった。
    ・方法論は新しい洞察を得るためや、型にはまった考え方から抜け出すために利用するものだと考えていた。同僚のコンサルタントたちもも私も、方法論通りに実行すれば必ずプロジェクトが成功するなんて思ってもいなかった。
    ・コンセプトが未完成のうちに関係者全員に見てもらえれば、ダメな案は早い段階でボツでできるのに、馬鹿だと思われたくない気持ちが邪魔をする。
    ・人間が原因で起こる問題を解決するのは、問題を分かっている人と話し合うのが一番いい。
    ・人間は道具を使うのが好きだ。だからこそ文明を築くことができた。危険なのは、ツールそのものを解決策と勘違いし、ツールさえあれば関係者が連携しなくてもうまくいくと思ってしまうことだ。
    ・企業がこれほどまでに数値評価基準を好むのは、数値評価は本物で信頼できるデータだと勘違いしているからだ。「数字は嘘をつかない」という間違った経営スローガンも、モニタリングやデータの収集・集計や結果報告を行うのは人間だということを忘れている。
    ・業務オペレーション改善のポイントは、それぞれのオペレーションから人間の判断を取り除くことではなく、オペレーションを行う人間の判断を向上させることにある。(その判断力こそ、かなり向上させる必要のある場合が多い)
    ・従業員は評価基準に合わせようとする!評価基準を操作してしまうことすらある!/指標スコアカードは自動車のダッシュボードと同じ。ダッシュボードだけ見て道路を見なければ、衝突してしまう!
    ・日々のふれあいの中で指導やフィードバックを行ってこそ、社員の業績は向上する。上司と部下(そして同僚間)のコミュニケーションこを、業績の向上には欠かせない手段だ。
    ・マネージャーとして成功しなかった人がどうしてリーダーの座を獲得できるというのだろうか?部下をインスパイアし、ヤル気にさせる方法を知らない人が、どうして優れたマネージャーになれるだろうか。
    ・<グーグルによる「優れたマネージャーの8つの習慣」>
    ・「このあいだ私た指示書だけど、ちょっとわかりにくかったかな、と思って。まずなにからやろうと思ってる?」
    ・付き合いをしないマネージャーは、マネジメントはサイエンスだ、ルールだ、方法論だと、専門家の言うことを鵜呑みにしてしまっている。そのせいでよそよそしい態度を取り、自分で判断しようともせず、ひたすらガイドラインに従っている。
    ・ピータの法則:階層社会では、すべての人は昇進を重ね、各々の無能レベルに到達する。
    ・このようなタレントマネジメント精度を実施すれば、最終的には全員が注目されない中間層へ押しやられてしまい、その結果、凡庸な組織になってしまうのだ。
    ・ガードナーは「リーダー」が「マネージャー」とは異なる点を6つ上げている。1:物事を長期的に考える、2:物事を広い視野で見る、3:自分の管理下以外の人々にも影響をおよぼすことができる、4:人々の言動に潜む非合理的で、無意識の、目に見えない面を大事にする、5:多くの関係者とうまく付き合うための政治的手腕を発揮する、6:現状に疑問を抱く。
    ・「僕のビジネスモデルはビートルズだ。4人の男がお互いの悪い部分をうまく抑え合っている。それでバランスが取れて、ただ4人の能力を集めたよりはるかに大きな相乗効果が生まれた。僕はビジネスも同じだと思っている。ビジネスでも偉大なことは決して一人では成し遂げられない。チームで成し遂げるんだ。」
    ・「どうしたら人の命を救う薬を開発できるか」と言っていた企業が「どうしたら巨額の利益を出せる薬品を開発できるか」などと言い始めたりしたら、企業が衰退に向かっている警告のサインだ。
    ・多くのビジネス問題の根本的な原因は、ビジネスとは「人」であることを見失い、ビジネス問題とそのソリューション(解決策)について間違った思い込みを持ってしまうことだ。
    ・専門用語を使うと、考え方が本筋からそれたり、狭まったりしてしまう。実態をありのままに表現してこそ、問題が初めて明らかになるのだ。
    ・それがどんなに頭が切れる人間だとしても、嫌なやつと発展的な関係を築くことは望めない。
    ・メソッドやベストプラクティスやビジネスソリューションを実行する前に、それを実行したらどのような影響が出る家について、予めよく考えることだ。他社がやっているからと言って、それを実行することが正しいとは限らない。
    ・新商品開発の成功の秘訣は、早く完成させることではなく早い段階で失敗することだ。ポイントは、その商品のダメな点をなるべく早いうちに洗い出し、欠点を取り除くことによって、その後の余計な手間を省くことである。

  • 元コンサルタントの懺悔。コンサルタントは、(本気で思っているか商売上そういう振りをしているかは別として)形式化されたリーダーシップや人材マネジメントといった方法論やツール、プロセスを適用することで常に効果を発揮すると考える。一方、クライアントはコンサルタントが解決策を示してくれると考える。結果、現場のことを分かっていない人間があれこれやって前の状態よりも悪くなる。本来方法論などは、そこで働く人々がより良く連携できるようにするためにあるはずのものが、いつのまにか方法論そのものが重要視されて人が置き去りにされる。
    いろいろと思い当たるフシがあって腹立たしくなったり、この先も、現場を見ずに方法論を押し付けてくる人が出てくることは普通にあるだろうと残念な気持ちになったりしたけれど、この本で指摘されていた「業務をまわしているのは人。コミュニケーションをもっと取りましょう」と「コンサルタント(他人)に頼り過ぎず自分で考えましょう」という当たり前なことが大事なんだと思った。

  • 最大のソリューションは”コミュニケーション”でありあらゆるコンサルサービス・数値化した物は真の解決ではない。はい。ずっとそう思ってました。
    ただ使う側の組織・経営者・管理職がだめだと更にね。

  • これまで読んだ中で、最高のビジネス書といっても過言ではない。過激なタイトルからキワモノのように捉えられるかもしれないが、そうではない。単なるコンサル批判ではなく、本当に必要な経営メソッドの数々が、凡百のビジネス書とは違う切り口で綴られている。作者の実体験に基づいた事例が数多くあり、かつユーモアに富んだ語り口も素晴らしい。経営に近いところにいる人にとって必読の一冊。

  • 『人材はビジネスの一部分ではない。人材なくしてビジネスは成り立たないからだ。オフィスや設備だけでは、どうしようもない。ビジネスとはすなわち「人」なのだ。

    非理性的で感情的で気まぐれで、クリエイティブで、面白い才能や独創的な才能を持っている人間たちのことだ。そんな人間が理屈どおりに動くはずがない。

    私が本書によって訴えたいのは、これ以上、職場から人間性を奪うのはやめるべきだということ。そして人材のマネジメントさえできれば、あとはすべてうまくいったも同然ということだ。』

    すごく納得。仕事の仕方を考えさせられる一冊。結局はコミュニケーションが全てなんだな。戦略的コミュニケーション能力がさ。

  • 数値や機械的な評価、管理システムで会社や組織がダメになっていく理由と過程がわかる。
    結局、人には人らしいアナログなやり方がベストなのだなぁ。
    東洋哲学に関する誤解があるのは、おそらく筆者の参考書の質が悪いか、思い込みによるものだろう。

  •  元コンサルタントの著者が、コンサル稼業の内情と功罪を、開き直って暴露している本。
     ひと頃のブームが去ってコンサルアレルギーの会社も増えてきているが、依然としてコンサルに頼りすぎてしまう経営者への警告のような内容。コンサルの言うことやプレゼンは「新たなダイエット法の紹介」程度に思った方がいい、とかなり手厳しいが、的を射ている。
     著者が指摘していることは、企業や市場は人間の営みで成り立っているのだから、科学的にすべてを判断しようとするアプローチはそろそろ卒業した方がいい、という至極まっとうなことで、あまり目新しい結論がある訳ではない。

全206件中 91 - 100件を表示

カレン・フェランの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リー・コールドウ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×