- Amazon.co.jp ・本 (565ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480031723
感想・レビュー・書評
-
「黒百合」では権力を振りかざして無理やり女性を手に入れようとする警察が描かれる。この警察の体質は21世紀になっても変わっていない。埼玉県警羽生署地域課須影駐在所の巡査部長は警察業務で知った個人情報を不正に利用して女性を呼び出し、強制わいせつ未遂を起こした(「埼玉県羽生市「わいせつ巡査部長」のヤバすぎるウラの顔」FRIDAY 2021年5月1日)。
「黒百合」の滝太郎は支配に反旗を翻す瀧太郎は痛快なアンチ・ヒーローである。「鏡花作品が今なお多くのメディアに翻訳され、人気が高い理由」は「現実を打破するエネルギーを感じさせてくれる」こととする(159頁)。アンチ・ヒーローの痛快さだけでなく、アンチ・ヒーローが破壊する現実の陰惨さも色褪せないこともあるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
収録作すべてではないが、人が発狂したり死んでしまったりという結末の話が多い。それも皆美しい女性で・・・(いい人か悪い人かはともかく)「湯女の魂」「わか紫」あたりに、やや幻想的な雰囲気が感じられるが、「貧民倶楽部」や「化銀杏」のように、人間心理の暗い、複雑な部分を描いた話がよいと思った。特に「化銀杏」の、お貞の主人の独白には、ゾッとした。怖い。
-
「黒百合」が一番好きです。多分購入してから十年くらい経っているのですが、「滝という名の付く格好良い少年が出てくる本」とだけ記憶に残っていたくらい、今読んでも滝太郎が格好良すぎます。次に好きなのが「わか紫」です。
個人的には死ななくてもいいような人が死んでしまうので、作者には何かトラウマがあるのかなぁと思ったり。