- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480033727
感想・レビュー・書評
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マイファースト三島。激しい人だったようだがやはり小説も激しい。古臭くなくて読みやすくて驚いた。
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1968年の小説。なんだけど、全然古さを感じさせない。お金の単位が1つ違うくらいかな。
新聞の文字がゴキブリみたいだったとかいう理由で、なぜか自殺しようとした主人公の青年が一命をとりとめた。開き直っていつ死んでもいいという覚悟を決めて、命売りますという商売を始め、奇妙な人たちと関わり合いになるという話。
主人公の開き直りっぷりが清々しくて楽しくなります。ああ、自分もこれだけ開き直って生きれたらなあと思うんですが、なかなかそうはいかないですね。案外、生への執着があるのかな?なんて考えたり。 -
札幌の書店で平積みされていた本書を眼に留めた。題名や表紙の感じを視て「最近、少し流行っている小説?」というように思った。が、よく視ると「没後50年で注目」という趣旨と推察されたが、「三島由紀夫の作品」の文庫本が集められた一隅に在った。本書は三島由紀夫作品なのである。
昭和40年代前半の雑誌連載が初出という小説であるようだ。確かに作中に出て来る風俗等はそういう時代の様子だ。が、そういう様子の作中世界というだけのことで、「最近、少し流行っている小説?」という気分で愉しくドンドン読み進められる作品だった。
「とある男が、少し変わったことを始めて、それが如何なって行くのか?」というような、或る意味では「古くから在って、現在でも見受けられる」というような、「非常に小説らしい」という感じの作品であるとも思った。そして「三島由紀夫の作品」でも、そういうような例が幾分思い浮かぶが…
本作の主人公、羽仁男(はにお)が病院の病室で眼を覚ますという場面から物語は起こる。
羽仁男(はにお)は睡眠薬を多量に服用した状態で電車に乗り、そのまま何処かで死んでしまおうとしていた。自殺を図ったのだ。それが助けられ、病院に収容されて気付いたという訳である。
自殺を図った、捨ててしまおうとした命である。帰宅した羽仁男(はにお)は「命売ります」という妙な広告を出し、自身が如何なっても構わないから何でも請け負うという、妙な商売を始めたのだった。
妙な広告を眼に留めた人達の依頼を羽仁男(はにお)は請け負うようになる。その行動を通じ、羽仁男(はにお)は如何なって行くのか?捨ててしまおうとして「売ります」と公言した彼の「命」の行方は?
そういうような物語が「艶やかな三島由紀夫の文章」で淡々と綴られるのだが、何か「昭和の寓話」が時を経て「古典」となっているような、そんな気もした。そして「自身の命が如何なる?如何する?」というのは、何時の時代にも「考えるべき事柄」なのであろう。
偶然に、なかなかに魅力的な作品に出遭ったことを善としたい。 -
実は三島は初めて読んだ。
特に飯能に流れ着いてからの羽仁男の心の描写がとても美しい。死にたくないと執着する気持ちを表現する言葉羅列が美しく感じた。
私の星評価基準は
物語のテンポがよく、臨場感があり、登場人物および風景が容易に想像でき、かつ1cm以下の厚みの文庫本
です。
星1つ20点の100点満点で満足度を表しています。 -
三島由紀夫全集のなかに入っていた。
読んだことをすっかり忘れて読みふけってた。
100pくらいまでは。
読みながらだんだん思い出してきたのだが、
一回目とは違う箇所に心惹かれる。
読書は一度ではやはり無理なんだなあ。
見落とす生き物なんだなあ。
むっちゃくちゃおもしろいやん、
と一回目も思ったのは同じだけど。 -
三島由紀夫らしからぬ小説。
読んでいて本当に三島由紀夫が書いたの?と思わず疑いたくなってしまうほどでした。
『春の雪』のような文学も書くし、『命売ります』のようなエンターテイメント性溢れる小説も書く。
そして、どちらの作風でも、読者の心をしっかり掴んで離さない・・・彼の凄さを改めて思い知った感じです。
読みやすくて面白い!所々に独特な美しさ溢れる文章表現も出て来る!数ある彼の小説の中でも安心して人に薦めることが出来る一冊だなと思いました。
文学的ではないという点も、特に初めて三島作品に手を出そうとしている方に薦めやすくて良いなと。-
三島由紀夫には安部譲二をモデルにした『複雑な彼』という、この作品に似た雰囲気の作品もあります。ご参考までに。三島由紀夫には安部譲二をモデルにした『複雑な彼』という、この作品に似た雰囲気の作品もあります。ご参考までに。2016/12/11
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三島由紀夫の言葉選び、うるさいくらいにそのセンスを感じる。声に出して読みたくなるようなアーティスティックな詩的な文が2、300ページの中に所狭しと詰まってる。
何回生まれ変わっても、何度頭をぶっても「温かい毛だらけの恐怖」だったり「赤いポストが雪の綿帽子をかぶっている、あんな具合に、死がすっかりその瞬間から、彼に似合ってしまったのだ。」なんてフレーズは出てこない。詩的表現の泉。美しいものをこうも美しく、醜いものをこうも醜く表現できるなんて、ジーニアスオブジーニアス。 -
一冊の小説を二日で一気に読んでしまうのなんて本当に久しぶり。それぐらい読みやすいし面白かった。
金閣寺を読んだときは書きぶりが高尚すぎてとても苦労したものだが、それで挫折してしまっていたら、この本を読むことはなかっただろうから、あのときがんばってよかった。金閣寺もちゃんとおもしろかったしね。
中盤はなんだか村上春樹作品を読んでいるような気分だったが、終盤で死生観とか社会性への認識とかがぐんと深いところまで掘り下げられているような感があって、舌を巻いた。
これまでに読んだ三島由紀夫作品は『金閣寺』、『不道徳教育講座』、そしてこの『命売ります』の三作だけだが、色んな作品を書ける人だったんだなあ、と驚くばかり。 -
主人公のあれほど命を売りたかったのに、読み進めていくにつれ、死への恐怖と闘うラストは滑稽で面白かった