眺めのいい部屋 (ちくま文庫 ふ 16-2)

  • 筑摩書房
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036766

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな映画の原作を初めて読みました。あの映画が、小説に忠実だった事がよくわかりました。
    いとこ役のマギースミスは小説を読んでさらに、はまり役だったことがわかります。
    この映画のヘナムボナムカーターはとてもかわいくて、まさかあんな悪女(ベラトリックス)になれるとは思わず。(小説の感想なのにまるで映画の評)
    100年以上前のイギリスアッパー階級の恋愛小説。
    イギリス片田舎で育った娘とフィレンツェ旅行で知り合った青年との恋物語で、自由や民主主義に目覚めていく、第一次世界大戦前のお話です。
    ちょいちょい作者の主観が書かれているところは読まないとわからないので、読んでよかった。
    エマーソン父の熱弁で、私の好きな一節を。
    「ジョージに二度と会うことがなかろうが、あいつの名前さえ忘れてしまおうが、ジョージは死ぬまであなたの心に残り続ける、愛しているものから離れることはできないのだ」
    また、あの映画、見たくなりました。

  • 『人生とは、聴衆の前でヴァイオリンを弾くようなものだ。そして君は弾きながらヴァイオリンのことを学ばなくてはならない』
    人は生活をしながら、自分のもっている力の使い方を見つけなければならない、とくに愛の使い方を

    封建的な風潮が強い時代においては、恋愛をするのもとても大変だったんだなあ。その中で、エマースンさんが息子に教えてきたことや、言動は、とても説得力があって共感できる。

  • 「この熱意。この無私無欲。シャーロットの人生はずっとこうだった。」「もし淑女たるものが自ら事に当たれば、まわりの人に眉を顰められ、それから軽蔑され、最後は無視されるのです」「僕はたぶん生きたいのだと思う」「女に決めさせないのだ。ヨーロッパを千年もの間このままにしておいたのはセシルのような人間だ。彼は一時も休まずに君を作り上げ、どんなことが魅力的で、楽しくて、淑女らしいかを君に教えている。そして君は、君たち女の人は、自分の声に耳を貸さずに彼の声に聞き入るんだ。」「婚約してからはじめて彼はルーシーを見た。ルーシー越しに何かを見たのではなく。ルーシーはダ・ヴィンチの女から現実の女に変わっていた。」
    「眺めのいい部屋を断った時のことを憶えているかな?あれが自分を見失ったということなのだ。些細なことだ」「人生はとても美しいものだが、とても難しいものでもある」

  • 慣習や宗教の型にはまって思考を放棄した生き方は楽だろう。
    けれど、それでは決して見ることの出来ない美しい「眺め」があるのだ。
    登場人物達がとても丹念に描かれていて、「いるいるこういう人!」と思わず笑ってしまうのだけど、ステレオタイプで終わることなく、必ず多面的に造形しているのが素晴らしい。
    そしてこの時代にこの女性への眼差し。
    結婚してもしなくても女性の自立は可能なのだと書いてくれたフォースターに、拍手喝采!
    選び抜かれた文章の的確さと美しさは今作でも見事。

  • 何度読み返したか知れない、大好きな本。先行訳のみすず書房版と比べるとよりこなれて、くだけた現代日本語になっている。ルーシーやフレディの言葉遣いなどはみすず版の方が好みな部分もあるけれど、概ねちくま文庫版の方が読みやすい。

    処女長篇『天使も踏むを恐れるところ』とともに「初期イタリア二部作」として語られることが多いという。『天使も…』との違いは、フィレンツェはモンテリアーノよりさらに魅力的に、そしてサマー・ストリートはソーストンよりはるかに好意を持って描かれているところ。そしてなんといってもルーシーはアボット嬢と違い愛する人と結ばれる。この明るく幸せな空気の中に、さりげなく前作にも共通する諷刺と真摯なメッセージが込められている。

    解説では英国文学の伝統である「キャラクター」がこの小説で最大限に発揮されていることに触れられている。映画の配役があれほど見事に嵌っているのも、原作で各登場人物の魅力が余す所なく描かれているゆえのことだろう。マギー・スミスの名演を得てシャーロットはますます愛嬌たっぷりの人物になった。

  • イギリスの片田舎の娘が年とった従姉妹とイタリアに旅行し、ホテルで口さがない宿泊客たちと交際するはめになる。交際に疲れた娘は一人街にくりだすが、偶然、殺人事件に出くわし、その場にいた一人の男に助けられる。男は同じホテルで他の客たちに疎まれていた卑しい生まれの青年だった・・・云々。ヴィクトリア朝式の保守的な家に生まれた女が、結婚と恋愛をつうじて、周囲の人々の間違いに気づき、やがて自分の本心を知るにいたるというジェイン・オースティン的なテーマ。でもオースティンよりずっとバロックで、登場人物も決して「類型」にはまってない。フェミや同性愛のテイストもそこここに見られて、思わずにんまりしてしまう。タイトルに見合う不思議な魅力をたたえた傑作。


  • ヴィクトリア朝が終わってもなお、
    自らの階級やしきたりに縛られ、自分が好きな人を正面から素直に愛することのできない時代は、
    女性にとって辛いことも多かっただろうなと思いました。

    「肉体に対する軽蔑がなくなったとき、僚友となった男女はエデンの園にいけるのだ」

    というエマーソン氏のセリフは、はじめは意味がよく分からなかったのですが、全文読み終わった今、
    このセリフこそが本書の主題なんだなと感じることができました。

    原作が古いので、翻訳で全ての意味を汲み取るのは少し難しいですが、原作と照らし合わせて読むと理解も深まるとおもいます。

  • 翻訳に問題があるような気がして、ずいぶんと読むのに手間取ってしまった。ストーリー自体は面白かったが、「天使も〜」に比べてややプロットのダイナミズムに欠ける気もする。誰のセリフか分かりづらいのがキツかったな。

  • うーんちょっとあっさりしすぎ??

  • 階級が描かれ、紳士淑女のたしなみが描かれるところが、英国の小説だと思わせられる。

    語り部がいて、事件が時系列に描かれるところが、古典的だと思わされる。

    英国的な古典という立ち位置で、約束事を守りながらきめ細かく丁寧に言葉を積み上げると「眺めのいい部屋」のような小説が建築されるのだろう。

    解説で紹介される、著者自身が語る後日談「部屋のない眺め」がお得でよい。

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