フ-コ-入門 (ちくま新書 71)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480056719

感想・レビュー・書評

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  • 「監獄の誕生」を読んでみたくて、まずはとっかかりとして読んだ本です。
    真理は権力と結びついている、真理を語っている人を見ないとダメ、といったあたりが新鮮でした。
    次は「監獄の誕生」に行ってみよう!

  • 生活に応用できる哲学。
    今現在の自分の立ち位置を見つめ直すいい機会になりました。
    途中はしょりすぎて意味不明、難解な箇所もありましたが(言説の部分)個人的に興味深い理論なので別の解説書を手にとって補おうと思います。

  •  ちくま新書には、他にもカントやデカルト、ハイデガー等の哲学者や思想家の入門本があるので、それを読んでみたいと思った。自分は本来そういった分かった気になるようなものを読むのは好きでないのだが、思想の流れのようなものを大まかに掴んでみたいし、一人ひとり丁寧に作品を読んでいったのではかなりの時間がかかり疲れる。
     以上の理由から本書を読んでみた。以前にバタイユ入門を読んだが、それよりも非常に分かりやすく、内容も自分にとって興味深かった。フーコーの造語であるエスピテーメー、エノンセ等の概念が理解しづらかったがそれ以外は問題なかった。以下に、自分が考えさせられたところを箇条書きで記す。

    「人間学の罠」
     人間を研究するということ自体が根本に矛盾を孕んでいるということが説明される。研究の対象それ自体が研究の主体になるという点で、新に科学的にはなりえない。
     心理学の矛盾についても触れられる。精神学や心理学は精神病患者をとらえられている何かから解放することを目的としているが、精神病患者というくくりそれ自体が、人間は本来このようにあるべきという「人間性」を前提としている。このような人間性を用いている限りで、人間を解放するのではなく、実際には人間の抑圧を強化する可能性があるとフーコーは考える。

    「知の考古学」
     この章では狂気や精神病院や監獄やまなざしといったことが取り上げられる。読んでから時間がたっているのでその内容はうろ覚えなので、ここには詳しく書かない。概要は理性が信頼され全盛の時代に第二次世界大戦などの大きな戦争があり、大量の殺人がなされたことからなぜ有史以来最も理性的であった国家がこのような大量殺人を巣に至ったか、それをどのように合理化していったのか。また、これまで信じてきた理性について疑いを抱き、理性は必ずしも万能ではなく、理性以外の人間の原始的な欲望も重要であると考えられ、研究され始めるという流れが説明される。

    「監視と処罰」パノプティコン・訓練・従順な身体
     パノプティコンの概念は、フロイト心理学の超自我の概念に似ていた。
     学校などの機関においての勉学の奨励、または罰則などの訓練によって、社会にとって都合のよい存在「従順な身体」を作っているということは私人も考えていたことで、面白かった。特に興味深いのは、社会における訓練が監獄に利用されたのではなく、監獄や精神病院において発展してきた訓練の概念が社会に利用されているという指摘だった。

    レヴィストロース「構造主義」
     社会を構造的に解析することによって、一見無意味に見えることも実は大きな意味があるというもの。レヴィストロースの思想は全く触れたことがなかったので、新しい発見だった。例として近親相姦の禁止というのは、遺伝子的な問題ではなく、女性の交換を通して集団を開いたものとするという目的があるという。これだけで説明できるとは考えられないが、親族結婚では子供に遺伝子異常が生じる可能性が高まるというのは、実は何の科学的根拠がないと、何かの本で読んだことがあるので、科学的な根拠がないと、社会・人文的問題であり、この説明が最も有力なのかなあと思える。

     フーコーは全ての思考の過程で共通して、本書にも書いてあるように、「人々が真理だと信じているものが、実は歴史的な根拠から作り上げられたものにすぎず、普遍的なものでも、絶対的に正しいものでもないということを示すことによって、自明で見慣れたものと考えていたものを覆すこと」を目標としていた。私自身もこの世の中の道徳や規則など、納得できなかったり、あまりにも手前勝手なものであるように感じられることが多い。日ごろからこのようなことを感じているので、フーコーの思考は自分にとっても分かりやすく、共感できるところが多かった。

  • 世界に対する視点を180度転換するほどの威力。自分たちが今まで「真理」と信じてきたものが、歴史的産物に過ぎないということを示してくれる。フーコーの思想は間違いなくそういう威力を持っている。その威力は入門書ですら損なわれない。(というよりも、原典は誤訳もあるし、読みにくくもあるので、入門書の方が手取り早いといえば早い。)「言葉と物」の章は個人的にイマイチピンと来なかったんだが、「規律訓練型権力」や<生権力>を提示する他の章は抜群に面白い。

  • 思想の難所・要所を誠実にしめしながらも、平易さに貫かれたよい解説書でした。

  • [ 内容 ]
    「真理」「ヒューマニズム」「セクシュアリティ」といった様々の知の「権力」の鎖を解きはなち、「別の仕方」で考えることの可能性を提起した哲学者、フーコー。
    われわれの思考を規定する諸思想の枠組みを掘り起こす「考古学」においても、われわれという主体の根拠と条件を問う「系譜学」においても、フーコーが一貫して追求したのは「思考のエチカ」であった。
    変容しつつ持続するその歩みを明快に描きだす、新鮮な人門書。

    [ 目次 ]
    序 現在の診断
    第1章 人間学の「罠」
    第2章 狂気の逆説
    第3章 知の考古学の方法
    第4章 真理への意志
    第5章 生を与える権力
    第6章 近代国家と司牧者権力
    第7章 実存の美学
    第8章 真理のゲーム

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • フーコーの思想に興味を持ち斜め読みしました。筆者は下記のようにサマライズしています。

    フーコーは、哲学のつとめは真理が自明なものでも普遍的なものでもなく、歴史的に作られたものであることを暴露することによって、その真理の絶対性を崩壊させることにあると考えていた。

    我々が当然と思っている事項は長い歴史によって作られてきたものが多いのでしょう。
    我々はそれを学校教育などを通して学んで当然のように受け入れているが、当然でもないよ、ということでしょう。フーコーはゲイだったそうです。彼は、異性愛が普通で同性愛は異常のように思われているが、それも歴史的に作られてきたものだ、というのも特に言いたかったのではないでしょうか?

    フーコーの有名な概念として、エピステーメー、があります。知の枠組み、といった概念であり、中世とルネッサンス、古典主義時代、近代、と3つのエピステーメーに変化していることを考古学的に分析しています。エピステーメー、納得感があります。我々が無意識のうちに捕らわれている思考の枠組み、といったものは確かにあるでしょう。またこれが大きく変換するときが来るのでしょうか。

  • 5/19
    ルネサンス→古典主義に至って「まなざし」の覇権に。
    監視の視線の内在化による抑圧。
    「普遍的な真理」の欺瞞→「真理ゲーム」

    ちくま新書の「○○入門」シリーズは質が高い。

  • フーコーの思想を、著作を追いながら解説。わかりやすいが、結局のところはフーコー自身の著作にあたらなければ・・・入口にはいいかもしれない。

  • 1年前くらいから読んでるけどまだ読み終わらない
    ∴まだ入門できてない

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著者プロフィール

中山 元(なかやま・げん)
1949年生まれ。東京大学教養学部中退。思想家・翻訳家。著書に『思考の用語辞典』などが、訳書にカント『純粋理性批判』、ハイデガー『存在と時間』などがある。

「2022年 『道徳および立法の諸原理序説 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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