作品紹介・あらすじ
マンガの「吹き出し」とは何だろう。マンガと絵画のちがいは?マンガに「コマ割り」があるのはなぜか。改めて考えると、マンガというメディアはすごく面白い。マンガの絵と文字の関係は日本語の漢字とかな(ルビ)の関係に似ている、マンガは脳と一体化したメディアである(だからマンガを読むと脳が鍛えられる!)、マンガの原型はルネサンス絵画にある-等々、美学と科学を貫く斬新な視点と鮮やかな手さばきで、特異なメディアであるマンガの本質を解明する。
感想・レビュー・書評
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養老孟司さんの研究室のひとのよう。脳科学と結び付けた話が多く、雑学本的には面白かった。ただ作品評が私の肌に合わず読んでいてむずむずする。
ただ、アニメと漫画が脳科学的にも全然事なたメディアだという繰り返しは面白い。
157pあたりで「かわいい」についての話をしていたけど、「かわいい」という言葉と「かわいい」という感覚をごっちゃにしているのが気に食わなった。
参考文献をあげてくれ…と思った。頭にある吹き出しの話とかは面白かったけどエッセイの域を出ないと思った。いやもしかしたらそもそもそういう本なのかもしれないけど。ただあとがきには「マンガ論」とあった。
項目別に雑感
Ⅰ、言語論
漫画と漢字の構造は同じ、という漫画論系によくある話とその仲間の話をまとめてある項目。
Ⅱ、絵画論
描画の手法や効果について。
構図や遠近法が心を表現することにも用いられているのだ、という話は面白かった。
「線」の項では、頭頂葉を損傷した女性が動いている車を認識できない話をし、それが漫画のコマ割りと同じではないか!?という話ををしていた。この前後は脳機能と漫画を結び付けた話が多く面白い。
Ⅲ、身体論
Ⅳ、科学論
死ぬほど個人的な感想だけど、いちいち各項目の結びの文章が鼻につく。多分そこだけちがうだけでももっと快適に読めたと思う。
抜粋
p46
かつてトルストイは「優れた文学とか、何かの答えを与えるものではなくて、大きな問いを投げかけるものだ」と言った。
(ここの部分の引用元がわからない…)
p103(孫引き)
「命は闇の中のまったく光だ!!すべては闇から生まれ闇に帰る」
ナウシカの漫画の最後の方のセリフらしい。
p146
人の脳には「動きだけ」を認識する部位がある。だからマン値、脳に障害が起こってその動きを近くする部位以外が働かなくなってしまったら、世界は「動く線の軌跡」のとうに。抽象的な光景として見えるだけかもしれない。
p153
ところで「新進二元論か否か」ではないが、心と体というのはけっして別物ではない。どのような身体をもっているかが、どのような心を持つかに影響する。
p242(ドーキンスの引用)
「自然は残酷ななのではなく、非常で冷淡なだけである。これは人間におって知らないですませたい最も不快な教訓である。われわれは認める気にはなれないが、自然の事情には善も悪もなければ、残酷も新設もなく、ただひたすらにーー何の目的意識もなく、あらゆる苦しみに無関心ーーなのかもしれない」『遺伝子の川』
157 キネティックアート
赤塚図書館726
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2004年刊。著者は東京芸術大学美術学部助教授(東京大学医学部養老孟司研究室助手歴あり)。経歴から窺い知れるとおり、科学と美学(絵画・仏像などの文化財を含む)の両面からマンガを解読。確かに、マンガにおける「絵」というものの意義を明快に叙述した「Ⅰ言語論」「Ⅱ絵画論」はこれまで無意識であった領域に焦点が合い、得心する読後感。特に①少女マンガにおけるコマ割と描線の絵画性・非記号性(手塚漫画の主流とは一線を画している)、②アニメーションではなかなか使いづらい明暗・光闇のコントラストを、マンガでは上手く利用。
しかし、肝心の科学面では期待外れ。身体論の中で「体は子供、頭脳は大人」(感覚器が異なれば、異なる意識を持ちうるという意味で)という名探偵コナンを引き合いに出したのはまあいいとして、大人が子供の世界を覗きうるテクストとして「ドラえもん」が意義深い主旨の指摘には唖然。また、エヴァをマシーンによる身体機能の拡張と見る指摘は、明らかに誤読。こういう側面は先行作品たるマジンガーZに妥当し、エヴァは自我の消失・自他境界の消滅のように思う。その他も電脳(攻殻機動隊)、ネオテニー(AKIRA)と、選択はともかく内容は薄い
長短ない交ぜの一書である。PS.光と闇を描こうとしているアニメーションはないかな、ということで「M3ソノ黒キ鋼」が思いついたところ(その演出が成功していたかどうかは別儀。特に光の使い方)。他にもあるかなぁ?
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<閲覧スタッフより>
美術論の視点からマンガを読むとどうなるか。コマ割り、構図、陰影や吹き出しの持つ意味などマンガを構成する様々な要素を造形として解剖・分析。マンガの斬新な読み方論です。
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所在記号:新書||726.1||フセ
資料番号:10165768
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うーおもしろい!
無類の漫画好きなんで、こういった風に理論的に、且つ、好意的に漫画の面白さを説いてもらうと違うベクトルに興味が広がるので、嬉しくもあります(´ー`)
漫画は勿論ストーリーも大事だけど、いろんな魅せ方の手法があるからより面白くなることを改めて感じる一冊。
コマ割り、構図などは石ノ森先生もすごいよ!と思ったり。
とりあえず、大友克洋先生はマスト、と…。
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≪目次≫
1、言語論
2、絵画論
3、身体論
4、科学論
≪内容≫
美術評論家による、マンガの解析。医学部で解剖学を学んだ著者は、そうした知識も駆使しながら、マンガを様々な面から読み解いている。
納得する部分もあるが、深読みかと思える部分もある。
自分の子供の様子から読み説いている部分は、「なるほど」と思えるところでした。
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前半は、マンガの基礎的な手法やその絵画性、芸術性について語っており、後半は脳科学や解剖学のエッセンスをマンガにみる、という構成になっています。
マンガを見るという視点を極まればここまでくるんだなぁ、という印象。あからさまに深読み?の連発なので、単純に「マンガ論」的なものを見たいと思っている方にはあまりオススメできません。が、こういう視点を持った人の意見というのは貴重だと思うので、そういう意味では個人的にすごく楽しめました。
ただ、後半部分はマンガというよりは科学だとか倫理だとか、ちょっと論点がずれた話になっているので、その辺に興味のない人は読み飛ばしても構わないと思います。
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様々な視点から漫画の細部まで解剖していく。
当たり前となっている「ふきだし」「コマ割り」など基礎的な面から「倫理」「科学」など専門的な面まで読み取っていく。
古本屋で100円やったから買ったけど定価でも十分すぎる内容。
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近年稀に見る駄本。ひどい箇所だと段落ごとに論理の飛躍があり、とてもマトモに読めたものではない。そのくせ、文体だけはコピーライターというかギョーカイ人を意識したような洒脱風なもので、そこがまた読者を苛立たせる。
問題点を全部述べていたら本当にキリがないので、1点だけ。芸術作品に似てりゃ偉いのか?というのは、もうだいぶ前に呉智英がいっていたことである。まぁ本書の場合はそれ以前に、このマンガが〜に似ているっていう説明自体出来てないんだけど。
徹底的に意味の解体された文章が続き、ただ雰囲気だけが漂っているという、ある意味最高にポストモダンな一冊。
-1000円。
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著者プロフィール
解剖学者・美術批評家
「2021年 『養老孟司入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」
布施英利の作品