宗教に関心がなければいけないのか (ちくま新書 1170)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068668

感想・レビュー・書評

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  • 宗教とはあまり関係のないエッセイ集だが、ここ最近の新書系では面白かった。

  •  二日間、夢中で読んだ。
     もっとも深いのは、最後の「本書に「宗教の深み」とか「本質論」だのを求めてもムダである」の一言だ。これは色んなことを「深い」と思いたい人にとってはきついものだ。
     「深い」とは便利な信仰である。なぜなら、「君は深いかもしれない。けれど、僕は深いということを深いと知っている」というやり方ができるからだ。
     このやり方を行えば、事実を積み重ねて深みまで到達した人を、「深いと知っている」という「思索の深さ」によって、楽に並び立つような快楽を得られるからだ。
     この本は、宗教論ではなく、学問が宗教的になってしまう罠をあばくものである。

     また、芥川を論じるところで「畢竟」を使うのはニヤリとした。谷崎に認められたい説は面白い。人間洞察の無さもそうで、結局、芥川は死ぬまで吉田弥生との失恋を引きずって、頭の良い美人が好きという、小谷野氏と同じ好みを持ちながら、でも文という良い嫁を迎えたけれども、でも知的美人のことが忘れられないし、谷崎がうらやましいし……でも、フキの目もあるし……として何をしたらいいかわからなくなったから死んだのではないか。
     最後にハイデガー以降の哲学についての指摘も実に面白いけれども、そんな中、佐々木中や若松英輔が、同じようなタイトルの本を出しながら、「だからこそ世界は美しい」みたいな感じの「だからこそ哲学」をやっているのはどう考えればいいのだろう。「だからこそ教」というべきか。
     「太陽系第三惑星にたまたま偶然生まれた知的生命体でしかないのである。」と言っても、キラキラと目を輝かせ、「だからこそ世界は美しい」と付け加えることができる。どんな事実であっても、こういう、妙にポジティブな、悲しみを乗り越える考え方の再発見という深みを付け足す。
    「自分で考えるということは自分の個性と戦うということです」と言い放った人がいたが、ここでいう「個性」は、宗教に関心を持たなければならない「深み」や「だからこそ教」のような気がする。

    以下、気になったところ。
    P155
    【ペット好きな人というのは、ペットが言葉を話さないからいいのであろう。もしペットが口を利いたら、さぞ嫌だろう】

    P157
    【カマキリのメスが、交尾のあとでオスを食べてしまうのはよく知られていて、私も子供の頃見たことがある。人間がそんなことをしたら殺人で人肉食だ。すると、アダムとイヴについてはおかしなことになる。アダムとイヴは、智恵の木の実を食べて、動物ばなれをした。だから、是非善悪を判断するようになったが、それが原罪だというのである。】

    P163
    【「生きづらい」とか「生きづらさ」とかいう言葉を題名に含んだ本が妙に多いのであるが、こういう本に飛びついているのは、中学生とか高校生なのか、と思ってしまうのである。現世が苦悩に満ちていることなど、大人にとっては常識だと思っていたから、二十歳過ぎてこんな本を歓迎する読者というのは、どういうファンタジーな人生を送ってきたのだろうと思ってしまう。】

     あと、「ナルニア国」のオチが、登場人物と家族が列車事故で死んでしまい、神の国に生まれ変わるというのが面白かった。では、なぜ人が死んだらキリスト教徒は悲しむのか。死後の神の国なんぞ信じていないのではないか、というツッコミがよかった。「天皇って素敵よね、というおばちゃんの意見には勝てない」など、こねくり回さないストレートな言葉がさくさくあってとても良い。

  • 宗教遍歴:ほぼ無縁 キリスト教のおもしろさ 不安神経症 森田療法・あるがまま・岩井寛 死の恐怖 知識人による宗教ブーム 反知性主義 大学:学院≒キリスト教系 現代仏教のぬるさ 捨身しこ:ほぼ無縁 キリスト教のおもしろさ 不安神経症 森田療法・あるがまま・岩井寛 死の恐怖 知識人による宗教ブーム 反知性主義 現代仏教のぬるさ 捨身飼虎  宗教のさまざま:神道と天皇教  文学:キリスト教徒居合わからない 善と悪、道徳について 生と死;死は怖い 個人主義者:信奉するのは事実 宗教に関心ないほうがまし

  • インテリ先生の一人語りをうっかり聴講してしまった。さくさく読めるが、最終的に全部著者の主観です。それでも他人の経験は面白いものですが、この本は基本的に否定、批判的なのでずっと読んでると疲れます。これを知的疲労と考えるか、単なる疲労ととるかです。
    とくに誰もあなたに宗教に関心をもてと強制してませんよ…あなたが一人勝手にあちこち出張っているだけですよ…という内容。

  • いつもの小谷野節ですね。以前の本との重複が多いです。

  • 3時間で読む。エッセイ風の宗教論でした。

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著者プロフィール

小谷野 敦(こやの・あつし):1962年茨城県生まれ。東京大学文学部大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士。大阪大学助教授、東大非常勤講師などを経て、作家、文筆家。著書に『もてない男』『宗教に関心がなければいけないのか』『大相撲40年史』(ちくま新書)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『現代文学論争』(筑摩選書)、『谷崎潤一郎伝』『里見弴伝』『久米正雄伝』『川端康成伝』(以上、中央公論新社)ほか多数。小説に『悲望』(幻冬舎文庫)、『母子寮前』(文藝春秋)など。

「2023年 『直木賞をとれなかった名作たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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