教育格差 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 108
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480072375

感想・レビュー・書評

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  • 小中高と自分が僅かながらも感じてきた家庭間格差を如実に著していた本だった。過去の記憶を辿りグルグルと頭を巡らせながら、あの時の感覚は正しかったんだと認識するに至る。親が大卒かそうじゃないかでこうも子供の成長に影響を及ぼすとは何とも遣る瀬無い。社会的経済背景の格差をどうにかしないと教育格差に終止符は打たれないのだと思い知らされた。ズッシリと重い読後感が残るが、教育問題と向き合う良いきっかけとなったのは間違いない。自分自身大学で教育学を専攻しているのでこうした新書にこれからもどんどん広げて先々の学びに活かしていきたい。

  • この本を読んだ今は、新型コロナウィルス感染予防の長い休校期間にも両親教育熱心か両親メディア消費量多いかの家庭事情の違いによりさらに子どもたちの教育格差が拡大する期間に思えてならないです。

  • 力作だが、格差の生ずる経路として遺伝的要因の有無につき触れられていないのが気になった。

  • なんとなくそうではないかと薄々感じていたことが、膨大な統計データを元に論じられている。結論だけ知りたい人は総括の7章を読めば良いようにも感じた。しかし一番興味深いのは「おわりに」。著者の熱い想いが込められている。目次を後ろから前に向かって完全に逆に読むと面白いかもしれない。

  • 格差がどこにあるのかよく分かる。
    データは豊富だし、言っていることはシンプルなので分かりやすいのだが、読み進めるのには体力が必要。

  • 世界中で似たような傾向にはあるが、日本にいると特に一部地区で受験熱が偏って高い事に気付く。通勤圏や地価からある程度収入の似通った家族が集まり、塾などの教育施設も充実。周囲との交流の中でも加熱していくのだろう。レールに沿って似たような価値観が集まる中学、場合によっては小学校を受験する事に、教育の格差以上に多様性の偏りが生まれる事に不安がある。島田紳助が昔、学校の教室は社会の縮図で、能力や親の年収、素行の良し悪しが混ざり合った公立に我が子を通わせたいと言っていて共感した事を覚えている。偏った集団意識から差別意識が生まれ、そこで刷り込まれた狭い承認欲求は社会生産性を高めるためのもので、必ずしも複雑な価値観を涵養しない。計測可能な偏差値が正義で、良い学校、良い就職先、良い友達付き合い、良い年収と、比較論による「良い」という価値観が形成される。やがてアルゴリズムさえ「良いね」で人同士を操り始める。

    比較論で「ただ良い」事を追求しない社会。社会的に埋め込まれた価値観のKPIから自由になる事が必要と成田悠輔。これも大賛成。今、ダイバーシティと言えば、着替えやトイレなどの性区別の関係からLGBTQ、人不足の関係から外国文化に対して寛容さを高めつつあるが、学歴に対しては多様性が認められない。学力の基準で閉ざす方が、生産性には有利だからだ。

    本著に書かれるような家庭環境、地域、親の学歴や年収、蔵書数などが子供に教育格差を齎す事は、肌感覚で分かっている。分かっているものをデータで立証した事に本著の価値がある。まるで、トマ・ピケティが縮まらない社会格差を立証したように。

    学校現場でも諦められた低学歴。自覚と共にレールから外れていく教育落伍者の烙印。レールを走る労働者は与えられた幸福モデルの範囲で生き、外れたものは貧困、あるいは独自の幸福モデルを生きる。案外、後者の方がイキイキとした人生を送っていて、教育格差の上位者は、その優越感の代償として、社会による都合の良いイメージ、それによる搾取の累進性に踊らされているのかも知れない。

  •  子供が受け取れる機会は、親が与える環境による格差がある。これが公共教育で埋められない学力差を産んでいることをデータを基に示された本。
     また、その格差を意識せず、あの子は頭が良いから良い大学に行っていい職に着く、と済ましてしまうことは、公平平等であるべき公共教育の瑕疵であると整理された本。

     第1〜5章までは社会調査データにより、上記の内容が複数の側面から検証されている。しかし同じ結論の主張が繰り返し説明されるため、正直退屈で読みづらい。
     第6章は、前章までの経緯を総括したうえで筆者の意見を述べられている。面白くて読みやすい。教育は、全員に良い機会を与えるべきである。一方で教育後に就く仕事は、席の数が決まっているため、教育が平等にレベルアップするほど、その後の競争は過酷になることに言及されている点が印象に残りました。

  • 事実に基づいて、教育格差について知ることができる本。解決できた社会はないが、よりベターな方向に向かう作者の姿勢が好印象でした。

    以前『教育という病』という本を昔読んだのですが、その本と共通して、データをとってちゃんと検証することが必要と書かれていました。当たり前だとは思うんですが、こと日本においては教育となると個人情報がからんで継続的なデータ取得と結果のトレースは行われていないようです。

    面白いと思ったのは、
    学校に求められているのは、「教育(子供が社会に適用できるようにする)」と「選別(能力によって格付け、適切な進路に割り振る)」の2点だということ、学力テストを行い、適切な偏差値の高校や大学に割り振るというのは当たり前といえば当たり前なんですが、あまり気にしたことはなかったです。

    また世界的にみて、日本の高校制度というのは、学力で分けるという意味で特殊だという点ですね。ほかの国の教育制度と比べることがないので意外でした。ちなみに日本の教育格差は、世界的にみて普通にあって。緩い身分社会といえるそうです。

    また、だれでも聞けばわかるとは思うのですが、公立小学校、公立中学校においても、学校間で大学進学や学習に関する常識(「普通大学いくやろ」とか、「普通は就職して、優秀な奴が大学は行くんや」みたいな)や、親がどういった文化資本や、資本を持っているかは違っていて、それによって学校間の学力格差は存在しているんですが、学習指導要領に従っているので、公立学校間の学力に差はないと誤認している人がいるようです。
    その誤認によって、勉強ができないことが自己責任になっているということが書かれていました。

    教育だけにかかわらないとは思うのですが、「自由と効率」と、「平等」はトレードオフの関係にあります。学習進度別のクラスを設ければ、優秀な人はより優秀になるので、「格差」はより拡大しますし、みんなに同じ画一的な教育を与えると優秀な人の学習効率は下がります。教育制度を考えるときには、その制度がどちらに立脚した制度なのかを意識して、その制度が誰を軽視したのかを意識しておくことが大事というのはなかなか響くものがありました。

    また、以前どこかに、「教育の機会平等が徹底された場合、遺伝子レベルで進路が決まってしまうディストピアが来る」と書いたのですが、まさにそれについて、遠い先のことを、今の不平等を放置していい理由にはできないといったことが書いてあり、ちょっと赤面しました。

    教育格差について格差社会の勝ち組といわれる、早大生に教育することによって、格差を助長している。つまり私の手も血に染まっているのだ。と書かれているあたりに真摯さを感じたりしました。

  • そうだろうなぁ思っていたことを、ファクトを基にキチンと数字で示してくれた本。

    高学歴の両親は、子供に金をかけられるし、大学に行かせるのが当たり前だと思っているから、子供のゲームとテレビ視聴時間に制限をかけ、勉強するように仕向ける。

    小学校入学時点でついた差は、日を追うごとに拡大し、高校入学時には決定的な差になる。底辺高校は一切勉強せず、そのまま就職し、同じような子供を再生産していく。。。

    残酷な現実を、示された!

  • 『感想』
    〇教育格差について、数字で説明がこれでもかとされており、分かりやすいようで機械的に感じ分かりにくい部分がある。

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著者プロフィール

2021年10月現在
早稲田大学准教授

「2021年 『現場で使える教育社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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