教育格差 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480072375

感想・レビュー・書評

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  • 小学校から大学まで、段階ごとに統計データを基に客観的且つ緻密に分析されている。日本における教育格差の現状を知る上で必読書。多くのデータを用いた分析は客観的でありながら、「凡庸な格差社会」である日本をどのような社会にしていきたいか、この著書がどのように役立つ事ができるのか、終盤にかけて著者の深い思慮や熱い思いが溢れてくる。

  • 私の両親の世代(昭和一桁生まれ)はほとんど大学には行っていないだろう。私の世代(昭和30~40年代生まれ)は大学卒も増える。私は社会に出てから、職場では大卒の人ばかりと接してきた。顧客にも大卒が多かったと思う。しかし、お付き合いのあるご近所さんには非大卒の方もいる。職業は様々だが、皆我が家と同じくらいの生活レベルである。(同じような家に暮らしている。)本書を読んでいて、5章あたりまで、ずっと違和感があった。非大卒より大卒の方が幸せである。と受け取れるように感じたからである。著者自身が書いていたが、例外を探せばいくらでもいる。相対的にそういう傾向があるということ。でも、やはり身近で感じるのは違う。親自身非大卒で、子どもにも大学進学を希望しない、けれども、いつも子どもと野球をしていて楽しそうである。幸せそうである。そんな家庭がいくつもある。幸せの形は人それぞれだろう。ただ、極端に貧しいのは困る。そのためのセーフティネットは必要だろう。教育政策は万人に有効なものは難しい。それぞれの現場で、それぞれに対応するしかない。システムの改善は常に必要だが、教職員にゆだねられる部分が大きい。だから教職を魅力あるものにすることが必要だ。ただそれも、何を魅力と感じるかは人それぞれで難しい。難しいけれども大事なことだから考えなければならない。試行錯誤を続けなければならない。教育社会学を科学的にするには、地球科学の手法が使える気がする。実験・検証というのは難しい。が、過去の具体的ないろいろな動きを見る中で共通性は見出せるのではないか。一般化可能なこともあるだろう。それも、ときと場合、人によるのだろうが。うーん、難しい問題だ。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/663823

  • 不憫

  • ・海外では、読書週間、環境、博物館訪問や観劇、文化的授業、課外活動、親子館の文化についての会話、文化や文学への態度、家庭の教育的資源などが指標化され、文化資本と学力などの教育成果は関係している
    ・大卒だと本や美術品を多く所持し、知識や教養なども身につけている傾向にある←美術品とは、、
    ・高学歴であればあるほど父母は読書をしている
    ・両親大卒層は多くの蔵書と読書週間を持つ傾向にある
    ・東京区内の私立中進学率は43%(想像より高い)
    ・東京区内の子供中3時点での年収中央値は約900万
    ・進学校では授業に規律があり、学ぶ喜びに溢れ、同級生と協同し、成功にこだわる競争意識があり、学校の一員であることに誇りを持つ
    ・ゆとり教育により土曜が休日になったことで学力格差が拡大(高SESは文化的な体験をしたり学習塾で勉強したり、低SESはメディアに時間を割いたり)更には低SESの生徒には学習へのインセンティブ(勉強するといいことがあるよ!という誘因)が見えづらくなり、学習時間の格差が拡大
    ・ゆとりを忌避する親は私立中を選ぶリッチフライト現象が報告された
    ・詰め込み教育に意義を唱えたのは殆どが難関大出身だった。実際に全体像で見るとそこまで白熱した受験戦争が行われていた訳ではない

  • 丁寧なデータ分析を元にした、印象論や経験則ではない日本の教育の実態を示す本。
    私個人は、全体として格差の縮小に努めるべきであるというスタンスである一方で、自身の子どもには(格差の再生産になろうとも)少しでもより良い教育環境を与えたいと願う、一般的な大卒である。そのことに自覚的でありつつ、教育のあるべき姿を考えていたい。

  • 2022I226 371.3/Ma
    配架書架:A4(立志課題図書 学んで知って考える)

  • 何となく気付いてはいたけど、様々なデータに基づいて改めて気付かされた感じ。
    特に幼少期の環境は大事だなと感じた。

  • 教育格差、生まれによる格差はある。その上でどういう社会を望むか。

    ■初期条件(「生まれ」)である、出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status, 「SES」)と出身地域
    ■意図的教養と放任的教養
    意図的教養:中流階級 習い事の参加、大人との議論・交渉の奨励→結果、子供は相手が社会的立場のある大人であっても臆さず交渉し 自分の要求を叶えようとする意識を持つようになる
    放任的教養:貧困層 子供の日常生活は大人によって組織化されてない。「自由」な時間が多い(テレビ無制限とか)。親は命令口調が多く、言語的な伝達は最小限にとどまる。→結果、子供は大人に対して自分の要求を伝えることを躊躇し、権威に対して従う成約感覚を持つようになる。
    ■文化資本:3つの形態がある。本や美術品など「客体化された文化資本」、学歴 資格など制度に承認された「制度化された文化資本 」、言語力 知識 教養など簡単に相続されない「身体化された文化資本」。
    ■国際的に見た日本の特殊性は、高校階層構造(偏差値ランキング)。制度的に教育困難校を作り、そこに勤める教師たちも教育を諦めるのが「普通」。(国際比較すると異常な仕組み)

  • 社会関係資本や文化資本の「相続」と「階層」の再生産というテーゼは、古くはフランスの思想家P・ブルデューが定式化した。そのテーゼに則し本書は、大規模縦断データをもとに日本の教育状況を検討し、階層間や地域間での教育格差が存在し、それが世代を超えて引き継がれていることを実証する。都市部出身で比較的裕福かつ文化水準の高い家庭出身者の割合の大きい、東工大生にこそ、本書は読んで欲しい。自己の「意志」や「努力」のほかに、所与に存在する構造的な格差や階層性が個人の人生や選択に大きく影響を与えていることを知ることは、みなさんが自身を相対化し、より良い知性と人間性を獲得する上での一助となるだろう。
    (選定年度:2023~)

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著者プロフィール

2021年10月現在
早稲田大学准教授

「2021年 『現場で使える教育社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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