十牛図 (ちくま学芸文庫 ウ 2-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480080240

感想・レビュー・書評

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  • 仏教の教えを求めることを、牛をさがすということとかさねている、例え話。群盲をおもいだした。

  •  十牛図は求められる真の自己を探求する姿が表されている。

    第一には尋牛、
    第二には見跡、
    第三には見牛
    第四には得牛
    第五には牧牛
    第六には騎牛帰家
    第七には忘牛存人
    第八には人牛倶忘
    第九には返本還源
    第十には入鄽垂手

    私たちが現代において思い浮かべることができる自己実現の達成は、普通第七の境位までである。すなわち、
    1)自己の問題に目覚め、自己を求めることで行きづまり、その過程で自分自身が徹底的に問題化すること。

    2)そこではじめて教を聞き得ること。すなわち、教えを請うことを覚えること。そして、それらが身体化しなければならないことを知ること。

    3)行としての自己を獲得し、かつその不断の連続が質へと転化すること

    4)自己を探していたことを忘れ己自身になることで自己自身が現成すること。

    である。

    しかし、それにはとどまらないその先にある真の自己とは何か。続きがあるのである。かなり奥深い思想がそこにはある。

  • 京極夏彦さんの『鉄鼠の織』を読んでからずっと気になっていた十牛図。
    20年前から興味があった本書をようやく読みました(笑)。

    そんなミーハーな(?)立場からすると、序論の十牛図解説や柳田聖山さんの書かれた解説の部分はある程度面白く読めたけれど、本書の核心である「現象学」の部分は門外漢には正直難しくって、?でした。

    久しぶりに『鉄鼠の織』を読みたくなってきました。

  • とりあえず上田閑照の分だけ読了。まずは十牛図に沿って、その後にとりわけ第八図〜第十図を中心に円相の境地や、それをヨーロッパの思想として比較して位置づける。
    有の否定であるだけでなく無の否定ですらある絶対無。追いかける自己と捉えられる自己の合一とそこからの消滅。そのうえで自ら紅しといった境地。
    例えば神秘主義、あるいは詩人、あるいは否定神学やニヒリズムとも比較される。禅はそれらと比べて徹底的な無とされる。(詩も「〜ゆえ」があるし、否定神学もあらゆる否定の裏に神が絶対視されている、など)
    まだ理解が甘いのでまた折を見て何度か読み返したいものだ。自分にとって、自己の問題も無の問題も非常に重要なところではある。

  • 牛のいる風景。
    一応禅の本ですかこれ。

  • 十牛図という禅の教科書のようなものを通じて、真の自己とは何かを
    西洋思想・哲学との比較を交えつつ考えていく本です。
    読んでいる内に頭がこんがらがってきます。
    私は西洋思想について何も知らないので、余計混乱したかもしれません。
    しかし、「現実の自己」と「真の自己」、「自己ならざる自己」などの箇所は
    大変面白く読ませていただきました。
    単なる自己実現・自分一人の自己実現の話ではなく、無・自然・他との関わり
    に於ける自己にまで言及しています。

    この本を受けて上田閑照さんは『十牛図を歩む 真の自己への道』という
    本を出されましたが、こちらは話体ですし、随分読みやすくなっています。
    初めて十牛図に触れるなら、『十牛図を歩む』の方がオススメです。

  • 大変難解な本です。しかも、こうした類の本にはたぶん(私個人の判断なので危険ではありますが)「読了」というものは存在しないのではないか、とさえ思わせる奥の深い、教訓に満ちた本です。古典と呼ばれるものの力をあらためて再確認できたと思います。今まで、「自分」という人間が何者か?いったい何をもってして世界と関わり、社会貢献に資することをできるのか?を考えながら読んできた本は、ビジネス書でも自己啓発本もたくさんありました。

    なんのことはない。ビジネスに関係するような組織、経営哲学、リーダー論などなどは、すべてこうした疑問に自分で答えを見いだすためのヒントとなる考え方は数百年も前から日本に伝わっていたのでした。ここ数年の間に、西洋的視点から分析した現代的分析(例えば、『意志力革命』や西洋思想を規範にしている点で『リーダーシップの旅』など)を参考にすることもありましたし、西洋哲学の入門編として紹介されている本などにその光を求めることもありました。

    ですが、私個人にとってはこうした指南本よりもこの『十牛図』の方が、「考える」という行為の根本にまで自分を奥底にひきずりこませてくれた気がするのです。特に、この本を著した上田閑照が、第八人牛倶忘にフォーカスして何も描かれずに真っ白な皿が記されていることが人の人生においてどのような意味を持つのかに重点的に分析を巡らせているところがこの本の特徴ともいえます。

    この本に参照される東洋哲学的思考法が必要だったのかもしれません。最近、新聞の読書広告でも新書でこの十牛図を解説したものが目につきます。『十牛図入門』がそれです。禅や東洋哲学の観点ではなく、入門編として理解するにはこちらの方が読みすすめやすいのは、パラパラっとページを眺めてみて分かりました。自分も考えを整理する上でこの新書版の方を読み返してみるのも良いかな?と思っています。

    私個人がこの本が優れていると感じたは、一人の人間が命つきるまでになせることの東洋的発想を、西洋における近現代哲学(ジレジウス、エックハルト、ニーチェなど)に照射し、理解の深さや説明に用いている言葉のえらび方の違いにまで踏み込んでいる点だと思いました。西洋の哲学にふれてきた自分としては、頭の中で西洋と東洋のどの部分がつながりうるのかを整理できたのは助けられました。この本を通じてそうした考え方に気づいて、十牛図に示された牛と自分と自然の関係性を知ることによって、自分という人間がいかなる人間なのかを知るてがかりを教えてもらえたような気がするのです。

    1回読了しただけでは、どうにも言葉に落とし込めるほど易しい本ではありませんが、読み返すことで次第に自分という人間を律していくかを考える上で大いに役に立つマイルストーン的な本です。難解な本をなんとか理解することで、見えてくるもあるとの思いで読了して良かったと今は思えます。おすすめです。

  • 十牛図について、非常にまとまった本。

  • 失われた牛を探し求めて、私たちはどうなるのか?
    現在よく言われる、【自分探し】というテーマをも、描かれた10個の画が、【あっ、そうか!】ていう直観をくれるかもしれません。読破するのはなかなか大変ですが、10個の画を観るだけでも、何かをもらえる、かな?

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