監督 小津安二郎〔増補決定版〕 (ちくま学芸文庫 ハ 1-7)

著者 :
  • 筑摩書房
4.19
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480097668

感想・レビュー・書評

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  •  小津の研究本は数多出ている。フランスでも人気だという。ローアングルなども言われ尽くしている。だからこそ実際に映画を見るのが一番。「東京物語」が傑作なのは周知だか、自分はカラー作品になってからの小津が好き。くすんだ赤をワンポイントにした画面がいい。また、今となっては貴重な昭和の衣装、街並み、会話が逆に新鮮。
     好きな作品は遺作となった「秋刀魚の味」。結果として最後にふさわしい無駄のない集大成な作品となっている。好きなシーンは「彼岸花」の十国峠でのやりとり。家族旅行で一番幸せな時。その次のシーンでは娘の結婚話が出て、幸せな家族の崩壊が始まる。

  • 読みやすさ ★★★★
    面白さ ★★★★
    ためになった度 ★★★★★

    自分にとって、折りに触れて再読する本。難解と言われることもある蓮實の著作の中でも、相当わかりやすい部類に入る。何より、蓮實の小津に対するリスペクトがすごい。小津ファンに限らず、すべての映画ファンに読んでほしい一冊。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737913


  • 本当に時間がかかったが、ようやくこの大書を読破した。明らかにこの本を読む前と比べて映画の見方が変わった、というかふくらんだ。これまでのように説話論的な機能のみを求めて画面に注意を向けていると、見えていないものがあまりに多くなってしまいかねない、そんなリスクをはじめて認識した。
    「記念写真をとってしまったゆえに、その家庭は崩壊せざるをえない」・・・記念撮影は、小津の映画の説話論的な構造にあって、別れという主題体系と深く結びついている、との指摘が特に強力。無論、自分はそんな見方をしたことがなかったから、インパクト大。
    このような論旨が盛りだくさんで、本当に重く読み応えのある本でした。

  • 再読。正確には所有しているのが初版で、増補決定版は初読。

    詳しい内容はあらかた忘れていたが、初回にはえらく面白くて、刺激的だったような記憶があるが、読み直してみるとさほどではなかった。初版を読んだ時は、戦前の作品はほとんど見たことがなく、戦後の作品もようやく最近全部見た程度。うーむ、映画史的に映画を見ないといけないのは大変だわ。しかし、さほどではなかったとは言いながらも、今でも知らず識らずのうちに「蓮見レンズ」をかけて映画を見ていることを再確認し、苦笑。

  • (01)
    小津の作家論ではあるが,映画論,ひいては視覚芸術論としても読める.
    各作品についてそれぞれ論究してまとめたわけではないし,小津の生い立ちや人生から作品に現れたものを観察したわけでもない.映画を視覚そのまままに見えてくるものを,徹頭徹尾,ひたすらに記述しようという試みである.
    また,黒澤,溝口,成瀬といった同時代の映画作家たちとの比較や,小津が大きな影響を受けたハリウッド映画との比較を主題においたものでもない.
    その観照と記述を突き詰めたとき,映画が映画だりうる限界を本書は発見している.著者は,小津の映画に見られる衣食住(*02)の特徴的な現われ方から説き起こし,映画に起こっている運動(*03),画面と画面が繋がり,映画と映画とが互いに響き合う構造を見出し,小津の実存をとらえている.

    (02)
    特に第4章の「住むこと」は圧巻でもあり,小津の空間感覚や建築の受容を考える上での興味深い指摘にあふれている.その後は,視線や天気の問題にまで踏み込んでおり,風景論としても示唆に富んでいる.

    (03)
    付録の厚田や井上への取材は噛み合っていない部分があるものの,かつての映画の見え方についてのヒントがある.また,年譜も詳しく,特に小津自身の生身の身体について思わしげな記事がみられる.

  • 元は1983年の刊行。小津と言えば独特のカット割り、妙に静止した世界の話と思っていたら逆だった。そもそもこういった先入観が小津の世界を見る目を曇らせている、という土台から論じている。

    実はまだ『東京物語』しか観ていないのにこの本を読んだ。よかったのかな。まあいいか。未見の映画について、家の構造や人の視線、天気の扱い方などいろんな視点を与えてもらう。たぶん「小津的な映画」というフィルター越しにしか観られなかったので、まず本を読んで取っ払ってもらったのはよかったと思う。

    あまりにも愛情が深すぎて「それは言い過ぎでは」と思うところもあったけど、画面に映っているものから一つずつ誠実に意味や意図を辿る筆致は面白かった。

  • 映画を観るための新しい視点を提供してくれる、未だに強度の保った映画批評本。蓮實さんの本の中でも読みやすい。

  • 増補決定版の文庫化。
    決定版になる前のものもちくま文庫から出ているが、そっちはどうなったのだろう。流石にもう品切れかな?
    蓮實重彦というのは不思議な文章の書き手で、テーマが何であれ、『ずっと文章を読んでいたい』という気分にさせる。評論畑の著者でこういう文章を書く人は殆どいなくなってしまった……。
    映画を観なくなって随分経つので、序文にあるような良い読者にはなれないのだが。

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著者プロフィール

蓮實重彦(はすみ・しげひこ):1936年東京生まれ。60年東京大学文学部仏文学科卒業。同大学大学院人文研究科仏文学専攻修了。65年パリ大学大学院より博士号取得。東京大学教養学部教授(表象文化論)、東京大学総長を歴任。東京大学名誉教授。仏文学にとどまらず、映画、現代思想、日本文学など多方面で精力的な評論活動を展開し続けている。著書に『表層批評宣言』『凡庸な芸術家の肖像』『映画の神話学』『シネマの記憶装置』『映画はいかにして死ぬか』『映画 誘惑のエクリチュール』『ハリウッド映画史講義』『齟齬の誘惑』『映像の詩学』『『ボヴァリー夫人』論』『伯爵夫人』『ジョン・フォード論』ほか多数。

「2023年 『ゴダール革命〔増補決定版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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