カフカ・セレクション 1 (ちくま文庫 か 13-2)

  • 筑摩書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480424518

作品紹介・あらすじ

現代文学に決定的な衝撃を与え、今なお"来るべき作家"であり続けるカフカの中短篇をテーマ別に三冊に編み、それぞれ最良の訳者による新訳でおくるベストセレクション。本第1巻は「時空/認知」。

感想・レビュー・書評

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  • 「時空/認知」なるサブタイトルは編集側の意向だが、見事にその範疇の思索的散文が収載されています。文学でしか成し得ない表現がある。
    こういう所作・取り組みはカフカにしかできないのではなかろうか、とさえ思えてくる。その大半が未完結(本人の中では完結している?)なのであるがそんなことがどうでもいいことだ。…とカフカファンの私は思ってしまう。溺愛。

    土地の所有が困難なユダヤ人だからこそ、農耕以外の生業・ビジネスを発想する必要があった的な指摘が「あとがき」でなされていた。なるほど。

  • カフカは一日どれくらい書いていたのか知らないが、万年筆が紙に引っかかるのをとても気にしたというくらいだから猛烈なスピードで書いていたのだろう。確かにそれくらいのスピードで書かなければ、あの夢のような悪夢のような内容を意識の底から引っ張り出すことはできない。カフカにとって書くことは文字通り運動なのだ。
    以下、平野嘉彦訳
    「妙だな」と、まるで連れがそこにいるかのように、私は横をむいていった。そして、実際に私の横には、私を狼狽させようとするかのように、帽子も上着もつけずに、ニットの黒いチョッキを着こんだ、一人の背の高い男が立っていて、パイプをふかしているのだった。(『カフカ・セレクション1』p104~105より)
    まず横に誰かがいるような気がしたら、それはすでに存在している。この物語の展開は予め考えられたものではない。カフカは最初の文を書いた瞬間に次の男の描写を思いついた(たぶん)。思いついたというより、「連れがそこにいるかのように」と書いたときにイメージした光景が、自我の制御によって後方に消えていく前に、捕まえ、引きずり出すようにして書きつけた。これはまさに夢の形成過程に限りなく近いのではないか。だからこの男の存在感、登場感は強烈である。
    いきなり存在し始めるこの男が何を表しているか、どのような隠喩的な意味をもつか、詮索することは無駄である。そんなものは書いたカフカでさえ知らない。ただ、その男の存在に、そしてカフカの筆におののいていればいい。

  • 「古典」と呼ばれるようになって、なかなか読み手のつかない良質な作品を、もう一度息を吹き返させるには、まあ映画化とか新訳や新装版を出すとか、いくつか方法はあると思いますが、全く別の切り口で選び直す洗い直すのも有効、という、いい例です。

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著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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