- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480429025
作品紹介・あらすじ
赤字路線が生き残り、地方の幹線が分断される。新幹線が通ったせいで、毎日通勤・通学に使う路線がJRではなくなる。鉄道地図に潜む矛盾は、苦悩、迷走、謀略に満ちた歴史から生まれた!政治家の策略、実業家の野心、官民の対立が渦巻き、線路はかくも歪められる。多数の地図をもとにして、秘められた謎を解き明かす一冊。
感想・レビュー・書評
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おそらく万人の人が面白いと思う本ではないと思う。
鉄道好き。地図好き。旅行好き。歴史好きここら辺が四拍子くらい揃ってないと楽しめないかもしれない。
色んな要素が入っている本だが硬いところもあるので、読むのに骨が折れる部分があるが、個人的にはそこそこ楽しめました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
物心がついた時には既に国鉄が存在せず、JRに分割されていた自分としては国鉄時代の日本の鉄道は面白い事だらけだった。
政権が江戸幕府から明治政府に移行し、文明開化の象徴として敷設が進められてきた鉄道ではあるが戦前は私鉄がかなり多かったことには驚いた。現在では主要幹線の路線が最初は私鉄だったことにも驚いた。
一方で鉄道と政治の関係性は複雑だったと強く感じた。日本のモータリゼーションが発展する前は鉄道が重要な存在だったと強く感じた。
また、現在の新幹線の新設も色々と考えさせられる内容だった。 -
タイトルが残念だけれどまじめな本です。もう今や鉄道網は残念を通り越しているかも…というのが感想。鉄道はこれからどうなるのか…
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本書を復刊する前のタイトルが『鉄道地図の「謎」』であるが、確かに明治から現代まで見ると残念な経過を辿っていることを再認識させられた。明治期の鉄道政策から、鉄道敷設法という政治家の我田引鉄による愚策が国鉄の分割民営化へと至らざるを得なかったとは残念でならない。整備新幹線に伴う平行在来幹線の分離は、国民にとって利益があるのか? 鉄道存廃議論の中、勝山市長の「道路と同じ社会資本としてとらえ、県と地域の貴重な財産として後世に残すべきだ」という言葉に重みを感じる。
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古本で購入。タイトルからもうちょっと軽い雑学系かと思ったら語り口はともかく中身はけっこう硬めの日本の鉄道史やった。
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伊勢BF
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明治以来の鉄道網の拡充と、
モータリゼーションの進展による縮小。
それによって鉄道地図(路線図)がどう変化していったのか、
歴史という視点から分析しています。
明治・大正時代、
新線建設よりも、基軸幹線の充実を主張した「改主建従」派(後藤新平など)と、
地方新線建設を優先する「建主改従」派(原敬など政友会)の
対立で、「建主改従」に軍配が上がり、
戦後の国鉄でのローカル線建設
(+私鉄ではとっくに廃止している赤字ローカル線の廃止ができない)
それによる国鉄の巨大赤字による破綻(分割民営化)。
さらには今に続く「整備新幹線」と、
政治家による「我田引鉄」の歴史は変わっていないのだと、
再認識しました。
まさに「残念な歴史」です。
歴史的事実の調査や分析がきちんとされていて、
鉄道好きでなくても、歴史や経済的な観点で読める本です。 -
鉄道が政治等外圧によって捻じ曲げられたことの記録本。一読の価値あり。
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鉄道の歴史を、主に政治が及ぼした影響を踏まえ、事実に忠実に解説したものが本書の内容である。当時の国会での審議内容や関連法規等について詳細な注釈がつけられおり、また鉄道経営学部の視点踏まえた筆者の意見も明確に記載されていて、学術書といってもよいレベルの内容だと思う。
表題の軽い感じからは想像できない高レベルの内容だと思う。 -
元々山海堂といふ出版社から出てゐた、『鉄道地図の謎』なる本の改題発行であります。
内容からすると、改題して正解と申せませう。
まあ、鉄道地図からみた、日本の鉄道史とでも言ひますか。所澤節が全開でございます。念のためにいふと、スイッチバックとか短絡線とかルウプ線とか、さういふ類のものではありません。
原著では「路線図に隠された鉄道の憂鬱」といふサブタイトルが付されてゐました。
誰が憂鬱になるのか。著者でも読者でもなく、路線そのもののやうです。
つまり、常に政争の具にされ続けた、鉄道路線の憂鬱であります。彼らだつて、自ら望んで誕生したものばかりではないのです。
地元代議士の都合で作られた路線は、結局赤字を生み出し、国鉄の経営を圧迫しました。民営化が迫ると、今度は一律の官僚的基準でどんどん廃線となります。路線ごとの「名称」が優先されて、実情は無視されました。
また、近年新たに噴出してゐるのが、整備新幹線との「平行在来線」問題であります。
すでに「東北本線」「信越本線」「鹿児島本線」などの在来線が分断され、なんとも見つとも無い姿になつてゐます。これを憂鬱と言はずして何と言ひませうか。
今後も「長崎本線」「北陸本線」「函館本線」などで、同様の問題が起きるでせう。
残念な歴史は、実は始まつたばかりかも知れません。それを感じてゐる著者・読者は、やはり憂鬱にならざるを得ないのであります。
...それにしても、本書を発掘、再発行した筑摩書房はなかなかのものであります。
http://ameblo.jp/genjigawa/entry-11301091399.html