かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)

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著者 : 万城目学
  • 筑摩書房 (2010年1月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480688262

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)の感想・レビュー・書評

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  • 小学1年生のかのこちゃんは、明るく活発で聡明な女の子。
    外国語も話せる優雅な猫のマドレーヌ夫人。
    彼女らを取り巻く日常の機微を描く。


    かのこちゃんは、優しく大らかなお父さんとかしこく思いやりにあふれたお母さんの3人家族。
    気品すら感じさせるマドレーヌ夫人のご主人は、徳があり犬仲間から一目置かれる柴犬の玄三郎。
    この家族に起こる日常の出来事が温かい目線で、軽やかに綴られる。

    かのこちゃんはすずちゃんに出会い、ふんけー(刎頸)の友となる。
    2人が赤毛のアンをまねて、大人のように振る舞うお茶会を催す場面がなんともかわいらしく、愉快。
    想像上の大人の世界は、子どもにとって現実と地続きではないようだ。
    「~でござる」と話す2人には裃姿がはっきりと見えてくる。

    一口に子どもと言っても、赤ちゃんから幼児、園児、小学生と確実に成長しているわけで、幼稚園から小学校に上がるあたりの背伸びしたがる様子は本人たちにとっては真剣で、大人には微笑ましく笑いをこらえたり、あまりの賢さに舌を巻いたり、驚きの連続でしょう。

    かのこちゃんが「知恵が啓かれ」て、最も適切な表現ができる新しい言葉を獲得していく様子や、玄三郎夫妻の気持ちを汲み取り大人顔負けの提案をお父さんにするあたり、小さな人ではあるけれど、「子供」などと一方的に庇護されるだけの存在ではないと再認識させられる。

    後半の大人らしくお別れしようする2人のシーンでは、やっぱり「~ござる」となる。
    でも、それが本当にぴったりくる。
    「さらばでござる」と未練を断ち切り、精一杯笑顔で、最後の一瞬をお互いに焼き付けようとするあたり、まるで武士のよう。
    「蝉しぐれ」のような切なさと、愛らしさと。
    とにかくたまりません。

    また、マドレーヌと源三郎のお互いを慈しむ愛情の深さや、
    猫の集会での様子などは
    人間達のそれ以上で、なんだか「大差ないのね」などと
    妙に納得してしまう。
    庭先に我が物顔で出没するノラ猫にも、そのような世界が実はあって、大物だったりしてと想像して不思議な気分にさせられた。


    万城目さんの「プリンセストヨトミ」を途中でやめてしまって、
    映画をTVで観て満足していたけど、
    こういうのを書く人だったのねと大変得した気分です。
    もう一回、「トヨトミ」読んでみようかな。

    今、かのこちゃんは何に興味があるんだろう。
    どんな毎日をすごしているのかしら。
    近所のおばさんが家族ぐるみで応援しているような気分になっています。
    気になって仕方がありません。
    もちろん、マドレーヌのことも。

    万城目さん、また、かのこちゃんのこと、書いてくれないかしら。

  • 世界の不思議に瞳をキラキラさせている少女、かのこちゃんと
    彼女をゆったりと温かく見守る両親、
    そして日本語も外国語(?!)も堪能な気品溢れる猫、マドレーヌ夫人と
    種の壁を超えてマドレーヌを優しく包む愛妻家の犬、玄三郎が
    繰り広げる、いとしい日々。

    ヘレン・ケラーが冷たい井戸水に触れた瞬間、雷に撃たれたように
    物と名前との結びつきを悟ったように
    かのこちゃんの「知恵が啓かれた」瞬間を導いたのが
    かのこちゃんがしゃぶり続けた親指の、あまりの臭さに
    のけぞったマドレーヌの反撃のひと噛みだったり

    究極のワザ「鼻てふてふ」を編み出したすずちゃんと
    意気投合するきっかけが、トイレの中で作成する〇〇〇柱だったり

    猫の集会で尊敬を集める原因となっている
    マドレーヌが操る「外国語」の正体が、なんと犬の言葉であったり

    1年生の教室での「難しい言葉」合戦で
    「シーラカンス」とか「コエンザイムQ10」とかの名詞が飛び交う中、
    答えに詰まったすずちゃんのために
    戦いに乱入したかのこちゃんの武器が
    「いかんせん」とか「たまさか」とか、妙に古めかしい副詞だったり

    綴られるエピソードがどれもこれも素敵すぎます♪

    普段は優雅で物静かなマドレーヌが
    「猫股」となってひとたび人間に化けた途端、
    愛する玄三郎やかのこちゃんのためになりふり構わず奔走する姿に
    お腹を抱えながら、やがて涙を誘われます。

    図書館から借りて読んだけれど
    ぜったい手許に置いておきたい、珠玉の名作です!

  • 小学1年生のかのこちゃんと猫のマドレーヌ夫人の日常で起こる不思議で思いがけない出来事。

    ほのぼのとした気分になれるお話でした。

    マドレーヌ夫人と犬の玄三郎夫婦の愛には思わず涙しました。
    最後、かのこちゃんとマドレーヌ夫人がお互いに真摯な決断、行動をしていて素敵だなと思いました。

    かのこちゃんとすずちゃん、2人のやりとりもかわいくて楽しい。お茶会の場面がお気に入りです。お別れの場面はやっぱり寂しくて切ないのだけれど、不思議とからりとした気持ちになりました。「さらばでござる」がとても素敵。

    猫たちの話し方の上品さや気品あるたたずまいがすごく自然に描かれていておもしろかったです。

    小学1年生の行動や考え方の等身大さに(かのこちゃんとすずちゃんは少し変わった子ではあるけど)懐かしさを覚えました(笑)

    あと、かのこちゃんのお父さんがとても素敵!

  • 元気いっぱいな小学生の女の子かのこちゃん。
    かのこちゃんちにふらっとやって来て住みついた猫のマドレーヌ夫人。
    かのこちゃん目線、マドレーヌ夫人目線で物語が絡み合って、
    不思議な出来事も起きて、とっても心温まる話。

    読んで驚いたのが、これってあれの密かな続き?
    かのこちゃんのお父さんは鹿と話せる。
    そしてかのこって名前を付けたのも鹿。

    万城目さんの本を久しぶりに読みました。
    もっともっと万城目ワールドの本、出ないかな~

  • 小学1年生の女の子・かのこちゃん。
    かのこちゃんのおうちで暮らすアカトラ猫のマドレーヌ夫人。
    1人と1匹の目線から進む物語はちょっと不思議で、ちょっと切なくて、でもたくさんの発見とどきどきに満ちている。
    読み終えると、近所の風景がきらきらしたみずみずしさをたたえて見えてきます。
    子供向けの装丁でも刊行されていますが、個人的には大人の夏休みにぴったりの作品だと思いました。

    万城目さんは関西方面を舞台にした意外な設定の物語や歴史を題材にした小説を書く印象だったので、こんな作品も書けるのかとうれしい驚きを感じました。
    特に猫のしぐさや表情の描写が猫好きにはたまりません。
    ふげ、とあくびするマドレーヌの姿が我が家のにゃんことかぶってにんまりしてしまいました。

    かのこちゃんの名前の由来によると、彼女のお父さんはどうやらあの人らしい…ということで『鹿男あをによし』の再読を決意。

  • かのこちゃん、可愛い。
    自分が小学校一年生の頃の、友だちが出来た時の嬉しさや、毎日が発見のワクワクした気持ち、うまくいかない不安な気持ちを、かのこちゃんの毎日に映して読み、懐かしく切なく幸せな気持ちになった。

    童話的なお話かと思いきや、「夫婦」「友」「出会い」「別れ」など、ほっこりとした中にもシンと考えさせられるテーマが散りばめてあって、不覚にも泣いてしまった。特に、犬の玄三郎と猫のマドレーヌ夫人の夫婦愛、
    かのこちゃんとすずちゃんの別れの場面は心に沁みた。

    かのこちゃんを見守るお父さんとお母さんも素敵。
    相手を想うことの温かさに溢れている本。

    マドレーヌ夫人はその後どうしたのか、かのこちゃんは成長してどんな大人になるのか、読後も読んだ人それぞれが想像の翼を広げて楽しめると思います。

  • 子供が少しずつ友達と、現実と、触れあって、経験して
    自分の肌でいろんなことを感じて成長していく様子を
    同じく体験するかのように感じられる文章がとても魅力的でした。

    学校のざわついた音、匂いを感じたり、
    たくさんのことにキモチがどんどんと飛んでいくけど
    子供なりにとっても真剣に1つ1つが不安だったり不思議だったり
    興味を持ったり、喜んだり、悲しんだりしていたあの頃に
    タイムトリップできたかのような時間でした。

    後半からはひたひたと近づいてくる別れの匂いと
    それを受け止めていく家族の一員になったキモチがして
    静かにでも着実に色濃くなっていく悲しい予感に涙が止まらなかった。

    それとは対照的に、かのこちゃんの日常はイキイキとしていて
    日々のリアルと生きることの輝きと、さよならの時間が
    すぐそこまできている切なさのコントラストがとても印象的でした。

    すべての出逢いに別れは必ずつきもので、
    生を受けたものすべてがそこから逃げることも抗うこともできないけど
    別れるために出逢ったんぢゃなく、出逢うために生まれてきたんだと
    泣きながらも静かに思えた読後感でした。

    買ったまま、早く読みたいなぁと思いつつもずっと積読していた
    本の1冊だったけど、今読めてよかったなぁと、心から思いました。

  • 児童向けかのような易しく優しい文章。
    いつものマキメさんっポくない、
    でも『現実』と薄皮一枚離れているような
    なんとも不思議さ漂うあたりはしっかりマキメさんの本。
    それが嬉しいマキメ作品ファンには
    「お もしかして♪」と
    ちょっとウキウキな設定かも って思わせる記述があったり。
    なんてたって主人公の一方は「かのこ」ちゃんだも。
    ■ ■ ■ ■ ■
    この本、好き。すんごい好き。
    ■ ■ ■ ■ ■
    切なさとあたたかさってさ、
    脳の司ってる部分が超ご近所なんじゃね?って思う。
    これって、この文章だからこそ受けられる感覚かも。
    こどもに向けて書かれたかのように思ったけど
    何事にも「終わり」があって
    でも生きてれば「終わり」は「区切り」にできることを知っている、
    そんな大人こそ胸のなかのなにかを味わえるお話。

  • 結構好きな感じ。
    児童書なのかファンタジーなのか
    ジャンル分けは難しいですが、
    子供が読んでも大丈夫だけど、
    大人にしかわからない感情がある本って感じです。
    マドレーヌ夫人、素敵だなぁ。
    帰ってきてほしいなぁ。
    あと、万城目ファンには
    「かのこちゃん」の名前の由来は嬉しい設定です。

  • 大震災の日に読了したという意味でも、忘れがたい一冊。
    残った10ページがあまりにも気がかりで、停電のさなかろうそくの灯りで読み終えた。
    ああ、前髪が焦げなくて良かった(笑)

    泣けるような種類の本ではないのに、何故か涙がしみじみと湧いていくる。
    小学校低学年の頃の女の子って、ああそう言えばこんなことを考えているのかな。
    その年齢で何が一番大事だったか、作者さんは実によく記憶していて驚いてしまう。
    クラスでの様子、友だちとのこと、家族のこと、懐かしくも甘酸っぱい。
    そしてそれを一切否定せずに受け止める父と母の存在がとてもいい。
    友だち(作中では刎頸の友、と言っている)との別れと、飼い猫・マドレーヌが夫である玄三郎との永久の別れとシンクロする。
    途中様々な逸話があったけど、まさか最後になって泣かされるとはね。


    西加奈子の「きりこについて」と同じような話かしらと思っていると、はずれます。
    こちらは、かのこちゃんとマドレーヌの話がそれぞれ並行して進み、ラストでぐっとふたりの心が接近するという仕掛け。
    賢く魅力的なマドレーヌには、してやられますよ。

    可笑しくて、甘くて切なくて、そして泣ける。今年一番の(笑)おすすめです。
    猫がおうちにいるひとと、小さな女の子のお母さんには特に。

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