たましいのふたりごと (単行本)

  • 筑摩書房
3.42
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480815279

感想・レビュー・書評

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  • 編集部はじめにより
    (穂村弘さんと、川上未映子さんの)お二人にそれぞれこれまで生きてきたなかでこだわりのある言葉を26個ずつあげていただいて、編集部からも26個、計78個の言葉について話していくーという本だそうです。


    「永遠」川上さんが挙げた「永遠」といわれて思い出すものは笹井宏之さんの『えーえんとくちから』。
    穂村さんはランボーの詩。
    「また見付った、/何が、/永遠が/海と溶け合ふ、/太陽が」こういう会話が日常的にできるのって憧れます。


    「お別れ」(川上さんが挙げた)
    「お別れ」がこの世でいちばん本質的なイベントだと思うんですけど、穂村さんはどうですか?と訊かれているのが印象的。
    弔辞って不思議なアイテムで、本当に伝えたいひとはもうそこにはいないのに、いちばんそのひとに伝えたいことが言われる。だから穂村さんが生きているうちに弔辞を書いて伝えておくべきじゃないかって真剣に考えたりするんですね。ーと川上さん。


    また穂村さんが「先日、文芸評論家で創作も教えている池上冬樹さんと喋ったんだけど、彼は本当に虚栄心を感じさせないひとで、いい先生ってこういうひとだと思ったのね。先生が生徒の作品に次々とコメントしていくときって、いつもうまく言葉を選べるとは限らない。ある作品についてつい悪く言ってしまった場合に、その作者は傷つくよね。でもいい先生だと、そこまで傷つかない、真っ暗なところまで落とさないというか、人格的な灯りが常についている。」
    とおっしゃられているのは、私は今は通っていませんが、私たち「山形小説家・ライター講座」の世話役である恩師の池上冬樹先生がいきなり登場され大変褒められているので、とても嬉しく思いました。池上先生は本当にいい先生なんです。穂村さんのお話にはオチもありますが、それは内緒です。
    穂村さん、来年は是非山形の講座にいらっしゃってください!


    川上さんが、お子さんのことを「オニ」と呼び、穂村さんに「将来のオニと話しているみたいで不安になる」と話されていたのが可愛かったです。
    「オニ」はいま、幾つになられたのでしょう。

    • 傍らに珈琲を。さん
      まことさん、こんばんは☆

      『えーえんとくちから』、川上さんの方から挙げられたのですね。
      先日『えーえんとくちから』を読み終えたばかりだった...
      まことさん、こんばんは☆

      『えーえんとくちから』、川上さんの方から挙げられたのですね。
      先日『えーえんとくちから』を読み終えたばかりだったので、ハッとしました。

      弔辞については、なるほどな、でした。
      以前は不思議に思っていましたが、生前葬ってアリですよね。
      2023/09/28
    • まことさん
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは♪

      『えーえんとくちから』、レビューされてましたよね!
      私もしましたが、私とは比べ物にならない洞察力に溢れた...
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは♪

      『えーえんとくちから』、レビューされてましたよね!
      私もしましたが、私とは比べ物にならない洞察力に溢れたレビューで、感心して、拝読していました。
      川上さんが、「永遠」と言う言葉を挙げられて、川上さんが、『えーえんとくちから』を挙げられました。

      私の昨年、亡くなった叔父も、生前葬を音楽葬でやりたいと、よく口にしていましたが、叶わず昨年、ごく普通の葬儀をしました。
      2023/09/28
  • キーワードを元にサクサクと進む対談集。川上さんの本は少ししか読んだことがなくて、自分の立ち位置としては自意識過剰で消極的モードの穂村さんに考え方が近い気がするので川上さんの真摯な発言が新鮮で楽しかった。

  • 川上未映子さんと穂村弘さんによる対談集。
    お二人が思い浮かべた好きな単語をそれぞれ26個と、編集部による単語も26個。合計78個のテーマについて自由に話していきましょうという構成になっている。テーマが多岐にわたるので、あまり深く掘り下げずにぽんぽんテンポよく会話がすすんでいる印象。

    一発目から未映子さんが選んだ「打擲」なのがおもしろい。打擲のフレーバー(言葉で罵倒して打ちのめすような)がある小説が好きというのは、私もわりにそうかもしれない。
    あとはまた未映子さん選「媚び」というテーマで、憧れの人からリアクションをもらったときに「あわわわ」と言う輩に対して冷ややかな視線を持っているってことは絶対に覚えておきたいと思った。。。笑
    「スノードーム」には世界がより完全に閉じ込められている、というのも好き。

  • 表紙の川上さんの字がとてもきれい。
    川上さんの小説を読むと、同じことを考えてるって自分とダブらせてしまうけど、エッセイを読むたびにやっぱり違ったと訂正する。
    考え方が同じかは別として、川上さんがエッセイで言ってることってすごくわかる。
    それに対して、穂村さんの受け答え…、
    会話すれちがってない!?と思うことがしばしば。
    私は川上さんのファンで、穂村さんの短歌を特に好きではないからそう思うのかもしれないけど、とんちんかんすぎる…。
    そしてこの対談を読むかぎり、
    こういう人あんまり好きじゃない…。
    川上さんの言葉のみがすごくおもしろかった。

  • 手にとった本が
    対談集である事を知った時の
    (なぁんだ)感は半端無い。

    ただ、穂村さんの語りは
    (テーマ)を与えられると
    着火してもらった線香花火の様に
    ぽんぽんと美しく弾け散らかす感が面白くて、
    いつも見る様な心持ちにて読んでいる。

    今回対談相手の川上美映子さんは
    穂村さんが散らかす<火の粉>じゃなくて
    元の火の玉をじっ…と見てる人。の印象が強かった。
    (単なる私の思い込みに過ぎませんが。^^;)

  • 私は、他人にさほど興味がないからか?雑談のできないタイプなんだけど、誰かとこういう話をしたいなと思った本。対談本って読むモチベーションがわからなくて選ばないけど、そういう思いになって、惹き付けられたわけがわかったような。

    で内容とは関係なしに。これを書き起こしたライターさんの句読点の打ち方と、漢字からひらがなへひらく/ひらかないのリズムが合わなくて微妙に読みづらく、そういうこともあるのか…と思ったな。

  • おや、ほむほむと未映子姐さんが対談とは。意外なようなそうでもないような、ちょっと不思議な取り合わせだが、お二人は仲良しなんだそうだ。へぇ~。期待通りにおもしろく、あちこちで感心しながら読んだ。

    まず穂村さんが「まえがき」で、川上さんのことを「どうしてか未だに小学生の真面目と本気を維持している」と書いていて、これには唸った。そうだ、ほんとにそうだよ。あの独特のスタイルはポーズなんかじゃなく、「真面目と本気」の表れなのだ。わたしはエキセントリックな人はすごく苦手なのに、なんで川上さんについてはそう思わないのか、前からちょっと不思議だったのだが、一挙に腑に落ちた気がした。

    対談は、お二人と編集部が選んだ言葉を一つずつあげて、それについて思うことを話すという形。最初のほうで出てきた〈銀色夏生〉での川上さんの話が、なんだか胸にずーんと来て、小学校高学年くらいから中学校あたりまでの記憶に新しい光が当たったみたいだった(←大げさな言い方だけどまさにそんな感じだったのだ)。うまく要約できないので、長くなるけど引用。

    「わりと多くの女の子が、一度は銀色夏生さんを通ってきますよね。それは、きっと、いっけん他愛のない恋愛のポエムばかりのようでいて、じつは別のなにか、生の一回性のようなものがそこに現れているのを見出すからだと思います」「一般的に女の子は、九~一一歳のころが最後のイノセンスがある時期で … 儚くて、きれいでせつないような風景の写真に、銀色さんの言葉がのっている。そういったものと自分が同質のものであるって思える、あれは最後の時期なんですね」
    「男性社会の中で女性であることの違和感を言葉にできるのが早熟な才能だと思うんですが、わたしはぜんぜんできなくて、その違和感を、男の子を好きな気持ちとかに転化させて発露させていたところがあると思う」「女の子が銀色さんみたいないわゆるポエムを書くのは、自分が社会によって抱かされる違和感を少しでも世間的に認められた形式に落として消化するしかないからだと思うんです」「言葉や主体性を奪われて、世界に対して感じていることや言いたいことはあるのに、あのような言葉でしか叫べない感じがクリアに出ていて、ああいうふうにしか書けない少女の歴史があると思う」

    これに対する穂村さんの言葉。
    「自分が危機にあって救われたいと思っても、完全に独自のジャンルをいきなりひとりで切りひらくなんて無理だから、拠って立つ場所-銀色夏生的なポエムなりゴシックロリータ的なファッションなり、萩尾望都さんならSFとか-が必要なんだよね。若い頃のぼくにとっての短歌もそうで … マイナーなジャンルに身を寄せることでサバイブしていくということがある」

    子ども時代が終わろうとする頃のことを思い出すと、ワーッと大声出してその辺を三周くらいしたくなるって人は少なくないと思う。振り返ると自分でも意味不明だったりするアレもコレも「サバイブ」だったのかもしれない。こういう言葉を与えてもらって、なんというかちょっと胸がいっぱいになってしまった。

    あとはちょっとおもしろいなと思ったことを断片的に。

    〈喧嘩〉
    川上「対峙するのはひととしてまっとうだけど、反面、相手と同じ粗暴さの土俵に立つことでもあるよね。そういう人を見ていて、『ああ、知性がないなあ』とかぼんやりおもったり」

    〈生活感〉
    川上「最新鋭のシステムキッチンだったとしても、ママレモンがあると台無し、みたいな感じかな。でもこれが外国だったらママレモン的な一般的な洗剤があってもおしゃれにみえてしまう(笑)」

    〈旅行〉
    川上「初めて飛行機に乗ったとき、雲を上から見てすっごく感動したんです。あまりに美しくて。 … その瞬間におばあちゃんはもう八十歳だからこれを一生知らずに死ぬんだというのに気がついた。それがもうなんだか苦しくて、この雲の美しさにいうほどの価値なんてないんだ、と言い聞かせて日よけを下ろした(笑)」

    〈自己愛〉
    川上「文章の場合、不思議なくらいそのひとがどれくらいの自己愛を持っているかわかる気がします」
    穂村「なぜかあれは消そうとしても消せないんだよね。岸本佐知子さんの文章を読むたびに、これくらい消さないと駄目だと思うけど消せない(笑)」

    〈伊勢神宮〉
    川上「そもそもパワースポットが好きなひとたちが苦手」「今の『ちょっと足しとくか』みたいな感じなのが、どうも」「スピリチュアルなひとって、精神的なことを言っているようで、じつはかなり現世利益的。パワースポットにそれだけまめに通える時間と経済的余裕があるなら、もうじゅうぶん幸せでしょうよ、それ以上なにを望むんだ、しかも他力本願で、とか思う」

  • 78の単語を巡るゆるやかな言葉の交歓。「打擲」から始まるところがとても「らしい」。「弔辞」は生きている時にこそ聞きたい(伝えるべき)ものだというくだりが印象的。

  • 好きな2人の対談。
    この2人だったらもっと面白くできたんじゃないの?と思ってしまった。
    面白くなくはないんだけど、割と普通。
    浅く広くという感じ?
    編集部からのお題はいらなかったのでは…狙いすぎな感。

  • 読みながら、わたしも思うことがたくさんあるなあと思って、近くにいる人に同じ話を持ちかけ、議論をした

    価値観の違いって言葉が良い意味で感じられる本

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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上未映子の作品

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