- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480815507
感想・レビュー・書評
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『ぼくイエ』で私たちに「無知であること」をたたきつけたカッコいいかあちゃんの連れ合いや、近所のおっさんやおばさんの人生はとても賑やかでカラフルで楽しくて、そしてちょっと悲しい。
若者でも老人でもなく、エリートでも最貧困層でもない。いわゆる労働者層としてイギリスのブライトンで暮らす彼らへの、愛に溢れるエッセイ。
日本の地方都市とは全く違う暮らしぶり。へぇー、とか、ほぉー、とかいちいち感心したりネットで調べたりしながら読みました。
「家族」とか「仕事」とか「政治」とか、そのひとつひとつが自分の生活圏内のそれと違っていて興味の塊になってしまいました。
ベビーブーマー世代のおっさんたちが、一生懸命働いて、目いっぱいお酒を飲んで、家族や友達とバカンスを楽しむその生活もうらやましくもあるけれど、一番うらやましいのは「仕事」を介さない付き合いがきちんと存在することでしょうか。
日本のおっさんたちは、仕事関係以外の友だちってあまりいないかもしれない。おばさんにしてみたらもっといないでしょう。そういう仲間との付き合いがあるから彼らの日々がとても鮮やかなのですね。
いろんなことに失敗して、家族を失ったり、仕事を失ったりしながらも、しぶとくたくましく今日も友だちと酒を飲んでるおっさん、おばさんのいきのいい人生から、ワイルドさを少しおすそ分けしてもらった気分です。
いやぁ、人生っていろいろあるから楽しいんですね。死ぬまで生きるぞ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の
ブレイディみかこさんが、イギリスの労働者階級オヤジたちの姿を書いたもの。
相変わらず、皆の普段の生活から、社会問題も透けて見えるような卓越した筆なのですが、
題材がオジサンだけに、読んでいるうちにだんだん辛くなってくる感じ。
未来がないというか。
面白おかしく、ちょっぴり悲しく書いてあるのだけど。
完全に弱肉強食社会になってしまったイギリスでどう生きていけばよいのか。
なぜ、EU離脱してしまったのか。いろいろ想像すると、どうしても暗い気分に。
イギリスでは保険に入っていない人はがんの診療ですら、何か月後しか受けられない。など日本からすると衝撃的な話もたくさん。 -
第1章はPR誌ちくまに掲載されたもの。色々な曲が散りばめられていて、内容にリンクしているのでググりながら楽しんだ。
愛すべきワイルドサイドをほっつき歩いているおっさんたちがてんこ盛り。
第2章には英国の世代や階級などが分かりやすく書かれていて、今後日本で更に縮小社会が進んだら同じ様に緊縮財政となり経済格差や排他主義の嫌な空気が出てくるのかなと考えさせられた。
色んなことが対岸の火事では無くなってきている今、これからを生きる子どもたちに何をしてあげられるのか。作者の他の作品も追っかけてみたい。 -
おもしろくて、どんどんページが進んだ。
おじさんたちがかわいらしい。
おじさんに対して、これからは見る目が変わりそうだ。おじさんも若い時代があったのだ。
イギリスでも、日本と同様に若者とおじさんとの間に対立がある。ただ、おじさんたちの生き様、背景を知らず、どういう理由でそう思うに至ったのか知らずに、意見だけを聞いて批判するのは、間違っていると思った。
逃げ恥で、ゆりさんが、若い子から年齢のことで差別的発言をされたときに、「私たちはあなたの未来なのよ」と諭したのを思い出した。
誰でも老いるし、みんな昔は若かった。
想像力を持って接することが大事だ。 -
何でイギリスが離脱に傾いたのか、理由がイマイチわからなかったが、本書を読めばそれがよくわかる。
医療保険、大事ですよ。
そして、緊縮は国を滅ぼす政策なのかもしれないと、強く思いました。
テンポ良いエッセイで、サクサク読めて、今のイギリスの労働者階級の状況がよくわかる、ありがたい本でした。 -
英国在住で保育士でもある著者の、身の回りのオッサンたちの生態を描きながら英国の経済や政治の状況をあぶりだすエッセイ。
前著「ぼくはイエローでホワイトで、そしてちょっとブルー」が自身の息子やその友人たち、つまり子供たちの事を描いていたのに対し今回打って変わってオッサンたちが主人公。
私もまごうかたなきオッサンなので、本書を読んで「ご同輩、お互い生きるって大変ですな~」と声をかけたい気分になった。
あと、本書の内容とは関係ないが、一時期本書と「ぼくはイエローで~」の2冊が同時に週間の本売り上げランキングの上位に入っていたことがあり、この出版不況の時代に同著者の本が2冊連続してランクインするとは、と大層驚いた次第。 -
地べたから社会を見る視線はホットでクールでだった。
″それでも“しぶとく生きるおっさんたち。中高年の悲喜こもごもは日本人にも共感できるわと思いつつ読んだが、やはりブリテンは違う!と感じたのは次の2点である。
アニバーサリーには、亡き人を思いながら賑やかに飲み食いする。ビールがスムージーに変わったとしても、とにかく人はよく集う。パーティーをする。この人とのつながりが密なところ。
もうひとつは、著者の父の意向にも、娘である著者のためらいにもかまわず、夫と息子が父に良かれと思い芝犬を飼ってやってしまう行動力(おかげで父は見違えるように元気になる)。ほかにもいろいろやらかすおっさんたちがイイ。
後半の現代ブリテンのジェネレーション論考と酒の話は、日本との共通点と異なる点を思い浮かべつつ読んだ。次作がたのしみ。 -
なんとなく、
英国=いろいろ整ってそう
日本=よくない と思ってたけど...
その格差っぷりたるや日本以上だった。
特に医療制度が
無料=ただし死ぬほど待つ
有料=ただし100%自費
という事実に驚愕してしまった。
こんな制度導入したら日本のジジババはどうなるんだ...( ; ; )
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前作の“.....ちょっとブルー”と同時期のブレグジット時代のおっさん達の話。切なく哀感漂う話が多いがおっさん達は自分好きの楽しい人達である。
色々あるけど、頑張ってきた人達。
各章にワイルドサイドを歩け……等の歌詞が使われている。聞き直したくなる
『ハマータウンの野郎ども』も筑摩書房からでてますね。