- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480815569
感想・レビュー・書評
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もともと大好きな作家さんだけれど、これはまたすごく良かった。人生とは、物語を紡ぐことだ、ということをかいてくれている。市井の人々が、どうにか生き抜く日々に想像力を掻き立てられながら(これがなんせ楽し)ページを次々とめくった。猛烈に心打たれ、淋しくも温かい気持ちになりながら、淋しくも温かい涙が流れた話がいくつかあった。
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目次で大体のあらすじがわかる
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何度も読み返したい本 -
33の短編集。短編のタイトルが長いので本文を読まなくてもある程度内容を理解できました。どれも淡々と無機質な感じがし、他人の日々の思い出の一コマを聞かせて貰っている感覚になりました。また、こういった短編を読んだ事が無いので新しい感覚にもなりました。感情の起伏がなくフラットな気持ちで読了しました。
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日常ってこんな感じだ。
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残念ながら、良さが少しも理解出来なかった。特につながりのないショートストーリーの連続。淡々と進む。最後まで読んだが、苦痛しかなかった。
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『9 一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話』
「黄色い本」のような目次。だからといって高野文子の描く「実ッつぁん」のように目次をクリップで留めずともよい。その言葉の連なりはそれ自体で小さな物語を紡ぎ出しているとはいえ、示された頁の先に展開する物語を語り尽くしている訳ではないし、そもそも要約され得るような物語は存在しない。ここにあるのは、帯にもある通り、柴崎友香の「新境地」。
東欧の奇譚集の翻訳のようでもあり、漱石の夢十夜のようでもあり。あるいは今昔物語のように淡々として、かつ、おどろおどろしい物語のようでもある。あるいはそれを無国籍化した物語と言ってもいいのかも知れない。アイオワ大学国際創作プログラムへの参加が作家の創作の思考の奥行きを深めたのか。参加後に発表された幾つかの作品と比べても本作は作家の新しい想像力が発揮された作品のように思う。
短い文章の連なり。話の流れからの唐突な逸脱。特定され得ない場所、そして時間。どの登場人物も主人公ではなく、かと言って誰もが脇役という訳でもない。方丈記の言葉を持ち出すまでもなく、一人の生はひと時のことでありながらそれが互いに関わり合って織りなす物語は絶えず、いつも同じように流れてゆく。だからこそ、その人の物語が妙に身近な人の声のように聞こえ、いつかどこかで聞いた話のように響く。
短い物語の中に幾つもの更に短い物語が数珠つなぎのように織り込まれ、一つひとつはエピローグもなく霧散していくようであるが、例えば夢十夜の第一夜のように、伏線めいた符牒が全て一つに還元されてくるようでもあって、その時に「百年はもう来ていたんだな」と気づかされる、そんな感覚を覚えるようでもある。案外と「百年と一日」というのは漱石へのオマージュなのかも知れない。
『「こわいな」と四階の子供は言った。「こわいじゃなくて、きれいっていうんだ」と、隣のアパートの同級生は言った。空は暗いのに、足もとはぼんやりと青白く光る街、まだいくらでもそこに落ちてくる雪を見つめながら、その二つは同じ意味じゃないのかと、四階の子供は思った』―『雪が積もらない町にある日大雪が降り続き、家を抜け出した子供は公園で黒い犬を見かけ、その直後に同級生から名前を呼ばれた』
それでもやはりこの作家らしい言葉の連なりはある。だが敢えて、その色を出すまいと、新しい文体に挑んでいる印象を強く受ける。新しい柴崎友香との出会い。 -
終始淡々とした短編集。