- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784484002101
感想・レビュー・書評
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西成→山谷→開高健賞 という稀な経歴を持つ著者の、山谷での人間観察記録と私は受け止めた。実に冷静に詳細に、期待することを恐れるような眼差しで山谷に暮らす人々や自分自身を見つめていた。
不況下において最低限の衣食住を得られるかどうかという問題は一般に逼迫してきていて、そうなるかならないかは紙一重ではないかという思いが私にはある。だからこそ、来るべきときのための予習にとこれを読んだのだが、あまりに浅はかな考えであった。著者が山谷にこそ生きる場所を見つけたようには、私はなれないだろう。
最終章の天国地獄の考え方が私には新鮮だった。「美徳には天国の恵みで、悪徳には地獄の苦しみで報いてやろうという報酬の体系こそが、相対的な思惑に満ちているのではないか」というものだ。また「現世の向こうには無差別の、絶対的な救済の世界が控えているべきだろう」とも著者は語る。現世は相対的に、死後は絶対的な旧姓をという考えは人間のもっとも望むところかもしれないと感じた。 -
2003年12月24日読了。以下、過去の日記から抜粋。
数学の先生からかなり熱心に勧められた一冊。
初めてタイトルを聞いたとき、「サンヤ」が変換できず、
実物を手にして、ようやく地名であることが分かった。
筆者は実際、山谷で生活する労務者の一人。
いわゆるサラリーマン人生に一線を画した男性が、
自分の目に映る光景を淡々と描き出しているエッセイである。
なにせオビが振るっている・・・「現代の方丈記」
なるほど、確かに鴨長明も世を捨てた人間であった。
大山氏も結局、自ら世を捨てる選択をしたのだ。
だから、本文には世間に対する恨みつらみは見られない。
あくまでも冷静なのだ。勿論、自身の行く末に対しても。
真似ができるかと言われれば、できないと答える。
真似をしたいかと言われても、答えはノーだ。
しかし、類稀なる彼の世界観には敬服する価値がある。
読む人により受ける印象は様々だろうが、だからこそ、
多くの読後感想を聞いてみたいと思わせる1冊である。 -
面白い。過不足なく冷静。丁寧に表面をなぞれば、おのずと中身は見えてくる。んだなあ。と思わせる。
複雑すぎず単純すぎず、良質のシンプル。