刑事何森 逃走の行先

著者 :
  • 東京創元社
3.76
  • (9)
  • (25)
  • (20)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 215
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028947

作品紹介・あらすじ

ベトナム人技能実習生が派遣先の上司を刺して行方をくらました。ようとして行方が掴めない中、埼玉県警刑事の何森稔と荒井みゆきは加害者と同じ会社に務める同僚から、ある重要な情報を聞き出す――。技能実習生や入管の仮放免、高齢女性のホームレス問題など、罪を起こさざるを得なかった女性たちに対峙する何森刑事の苦悩。〈デフ・ヴォイス〉シリーズスピンオフ、第2弾。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 〈デフ・ヴォイス〉シリーズスピンオフ〈刑事何森〉シリーズ第二作。
    はみ出し刑事・何森が、〈デフ・ヴォイス〉シリーズの荒井みゆきとタッグを組んで三つの事件の捜査をする。

    読み終えて何ともモヤモヤする作品だった。
    弱者の女性たちの犯罪を描いているのだが、何森とみゆきが犯人を捕まえてお仕舞いではない。それどころか捕まえることさえ出来ない事件もある。

    作中に出てくる『クー・ハン』なる組織も、そこに助けを求めるしかない女性たちも、その先には何があるのか。
    映画のようなハッピーエンドが待っていれば良いが、本当にそうなるのか。一生守られて逃げ続ける日々が続くのは辛くないのか。

    今の日本社会にある様々な問題。救済が必要な人、救済を求める人がたくさんいても、全ての人を救うことは出来ない。そもそも今の日本にそんな経済力などない。みんなが今日生きるのにいっぱいいっぱいな、貧しい国になっている。
    一方で様々な救済措置を悪用し、法の隙間をすり抜けて不法行為・違法行為をする人間がいるのも事実。得てしてそちらの人間に少ないペイが渡るのも事実。

    最後の事件で何森は自分で選択して自分で女性を取り調べた。
    女性は救われたのか、どうなのか。


    何森は作品の最後でまもなく定年を迎える設定となっている。次の作品があるとすれば、刑事ではない何森としての姿が描かれるのか。第二の人生の舞台はどこなのか。そこで何森は何をするのか。機会があれば読んでみたい。

  • 「デフ・ヴォイス」シリーズの刑事・何森が主人公の第二弾です。
    何森が定年間近…哀愁漂ってます。

    短編3作どの話も女性、外国人女性に関わる事件です。《技能実習生》《パパ活》《売春斡旋》など
    ニュースで聞いた事のある話とコロナによって仕事を無くした貧困を絡めて、やりきれない事件の真相に何森の苦悩が切ない(*_*)

    • 1Q84O1さん
      「デフ・ヴォイス」シリーズ好きです♪
      そして、何森さん第二弾出たんですね^_^
      「デフ・ヴォイス」シリーズ好きです♪
      そして、何森さん第二弾出たんですね^_^
      2023/07/31
    • みんみんさん
      売れないと第三弾出ないらしい笑
      売れないと第三弾出ないらしい笑
      2023/07/31
    • 1Q84O1さん
      えっ!?
      そうなんですか〜
      何森刑事がんばれ〜(^^)/~~~
      えっ!?
      そうなんですか〜
      何森刑事がんばれ〜(^^)/~~~
      2023/07/31
  • 刑事何森シリーズの2作目。
    何気に気に入っているこのシリーズ。
    何森さん、いよいよ定年となってしまい、
    もっと続いてほしいのに…
    この先の彼がどうなるのか気になる。

    作者があとがきにも書いているように、
    作品に対して反響がなく、話題にならなければ
    このまま終わってしまうことになるのかも。
    そうならないよう、祈るのみ。

    今回も世の中でなかなかスポットライトの当たりづらい、しかし見過ごしてはいけない人々に対して問題提起している。
    実際に起こっている事件や出来事が下敷きとなっていて、その悲惨さが胸を突く。

  • 「デフ・ヴォイス」シリーズのスピンオフ、“刑事何森”第二弾。

    「逃走の行先」というタイトルにもある通り、“逃げる女”(逃げざるを得なくなった女)をテーマにした、連作三話が収録されています。

    定年間近(!)の何森刑事とバディの荒井みゆきが追うのは、派遣先の上司を刺して行方をくらましたベトナム人技能実習生。その背景には非合法の救済組織があるようで・・(第一話「逃女」)。

    丸山さんの作品には毎回考えさせられていますが、今回も、この国が抱える厳しい実情が浮き彫りになるような内容となっております。
    技能実習生の厳しい現実を扱った、第一話「逃女」。
    ホストに嵌った女性の末路・・売春斡旋、パパ活問題の第二話「永遠」。
    難民申請の困難と非正規滞在外国人問題、そして高齢単身女性の貧困を描いた第三話「小火」。
    各話、追い詰められた女性達の悲痛な思いが伝わってきて、読んでいて心がえぐられるようでした。
    勿論フィクションではあるのですが、実際に起こった事件がベースになっているので、リアルな問題提起になってもいるのですよね。
    という訳でスッキリ解決!という展開ではないのですが、本書を読んで“この国のセーフティーネットは一体どうなっているんだろう・・?”と、関心を向けるきっかけになりました。

    さて、やりきれない事件への対峙でいつも以上に哀愁漂う何森さんでしたが、定年を迎えた後の彼の進路(?)も気になるところです。
    あと、第二話で、捜査の為にホストクラブに通う羽目になったりと、本編シリーズとは違った面をみせてくれるみゆきさんでしたが、どうやら次女の瞳美ちゃんの学校の事でお悩みを抱えている模様です。
    荒井ファミリーの状況が心配なので、本編シリーズの続きも是非お願いいたします~。

  • 【収録作品】逃女/永遠/小火

    「デフ・ヴォイス」シリーズのスピンオフ。
    すっきりしたミステリではない。むしろ、現代日本において弱い立場に置かれている人たちに焦点を当てた作品。解決よりも問題提起が重視されている。

  • ベトナムの人たち今はまだ日本に働きに来てくれているかもしれないけど、そのうち日本以外の国行っちゃうだろうな、もっと大事にしろよって思いながら読んだ。

  • 外国人技能実習生の妊娠問題「仮放免」、パパ活の実態、入管難民法の改正問題、の3話短編。

    平和で閉鎖的な日本で起きている大切な問題提起本。
    きっかけになれば、という思いか…

    あとがきに記載されたように、読者の人気次第で、定年何森刑事のその後物語、続編が出るか決まるらしい。読んでみたい気もするが、どうも理屈っぽさに飽きも感じる。



    全世代で最も貧困率が高いのは、65歳以上の高齢単身女性。コロナ禍以前から4人に1人が貧困で、65歳以上だと2人に1人になる。

    フードバンクの中に、支援したい人からの提供を受け付けることを「フードドライブ」といい、集まった食品を配布する場所や作業を「フードパントリー」というらしい。

    名古屋の入管施設での死亡事故により、入管収容施設での人権侵害の実態から、収容、仮放免、難民申請、の問題が明らかに。

  • 刑事何森シリーズ第2弾。今の日本の社会の問題点を題材にしてる。外国人就労、貧困、差別、医療費問題点に絡めて書いてある。これが現在の日本の実情と言ってもいい内容。
    今後日本はどうなるのか。
    何森さんは定年したらどうなるのか。このシリーズまだまだ続いて欲しい。

  • 『デフ・ヴォイス』シリーズのスピンオフ第二弾です。

    埼玉県警の何森稔(いずもりみのる)は優秀な刑事だが協調性がなく上司や同僚からも疎まれる存在だった。相棒の荒井みゆきはデフ・ヴォイスシリーズの手話通訳士・荒井の奥様。二人の娘である美和は高校生となり、瞳美は来春には小学生になるらしい。

    外国人の技能実習生、パパ活、コロナ禍による失業と貧困、非正規滞在外国人などなど、罪を犯さざるを得なかった女性たちを描く3篇です。

    もちろん罪を犯すことはよくないことですが、そこへ至った経緯を考えるとやるせなさを感じる事件ばかり。でもこれらは完全なフィクションとは言えないんですよね。現実にも同じような境遇の人たちがいることを、私たちは知らなくちゃいけないし、関心を持たなくちゃいけない。

    あと2ヶ月で定年を迎える何森刑事。刑事ではなくなった何森さんはこれから、いったいどう社会と関わっていくのか…気になります。ぜひ続きが読みたいです。

    草彅剛さん主演でドラマ化される『デフ・ヴォイス』も楽しみだし、そちらの続編も期待したいですね。

  • 「逃女(とうじょ)」ー ベトナム人技能実習生
    「永遠(エターナル)」ー パパ活
    「小火(しょうか)」ー 高齢者ホームレス
    3つの事件が収められている。
    どれも貧しく孤独な女性が加害者の事件で、事件によって現代社会の現状を訴える作品。

    実際の事件や事象が書かれているので読みやすい。先2篇は小説というより作者の思いを書いたという印象が強かった。3つ目は1と2を受けて少し長く書かれているので小説感があって良かった。
    作者の丸山さんはとっても優しくて良い人だなぁと分かる。弱き者が冷遇され見捨てられる国の制度への憤り、一個人ではどうする事もできないことへの虚しさ。作家として伝えたいという強い思いが作品になっている。ただ、現実要素が強いから主人公の何森刑事の考えというより作者の考えという感じがしてしまう。前半は小説というよりニュースを知った感想のような…。
    個人的には長編にして、3つ目の感じ(読者に提唱する形)で、もう少し小説っぽさがあった方が読み応えが出るように感じた。

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

京都大学大学院理学研究科教授。

「2004年 『代数幾何学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

丸山正樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×