月長石 (創元推理文庫 109-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (779ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488109011

感想・レビュー・書評

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  • 盗まれたインドの秘宝「月長石(ムーンストーン)」を巡る大作。上下合本700ページ超で、重い。文庫本なのに腕が疲れた。
    各登場人物がそれぞれの視点で事件について回想を書き繋いでいくという構成。一人一人の癖が強くて面白い。「あの時の意味不明な行動言動はこういう背景があったのね……」と腑に落ちる。
    確かに長かったけど、ヴィクトリア時代イギリス上流階級の仲間入りをしたつもりで物語の流れに身を任せてゆったりじっくりと読み進められた。謎解きよりも人間模様が魅力的。
    あと、『ロビンソン・クルーソー』読んだことないって言うと彼に怒られそうなので、いつかタイミングを見つけて読んでおきたい。

  • 長い。けれど面白い。関係者によって語られる証言により真実が姿を現わすってパターンは湊さんの作品のような感じ。150年も前に書かれた作品とは思えないほど今風な構成だけれど、描かれる風俗や社会制度は、たしかに19世紀だわ。第1の証言者の語りは日の名残りを彷彿とさせるし、第2の証言者の信仰的偏見に満ちた語りはとても面白い。

  • 「ミステリ好き」を名乗るのならばやはり、読んでおきたい!

    ずーっと私の本棚にはあって、
    あまりの厚さに怯んで、
    朝、出がけに持ったり、そしてやっぱり置いたりで、
    なかなか読まなかったけれど、
    とうとう読了!

    ストーリーは、インド寺院の宝「月長石」(イエローダイヤモンド)は
    数奇な運命を経てイギリスにやってきた。

    誕生日にその宝を貰い受けることになった、ヴェリンダー家の娘レイチェル、
    しかし、その宝石は翌日忽然と消えてしまった…!

    なんとなく「僧正殺人事件」とか、「黄色い部屋の謎」みたいな
    超がつくほど本格ミステリで、真面目一本やりと勝手に想像していたけれど、
    全然違った!

    第一章、ヴェリンダー家に仕える老執事ベタレッジの手記からが
    もうともかく面白くて楽しくて、
    「なんだ、なんだ、こういう種類の面白いなら私大好きなのに…!
    言ってよ言ってよ!」と言う感じ。

    出来る執事ベタレッジ、常に冷静、純粋に主人に仕えるけれど、
    どこか冷めた視線を送ったり…

    そしてどうしても困ったときは「ロビンソン・クルーソー」を繙き、
    必要なメッセージを受けとる…

    レイチェル様と従兄弟のフランクリン様が、上流階級の人たち特有の
    習性、資質でもって「ドアの装飾」をしているのを
    横目で見ているところなんかはもう秀逸。(おかしくって仕方ない)

    ずっとずっとベタレッジが書いてくれてても良かったんだけど、
    第二章ではレイチェル様の従姉妹で、貧乏で狂信的なクラックさんに担当変更。

    このクラックさんがまた、自分の不幸と人生が上手く立ちいかないのは
    「正しく生きている」からで、そうでないとクラックさんが思う人を
    ちゃんとした道に誘おうとするんだけど、その方法がまた、厄介!

    いかした刑事カッフや、執事の娘優しいペネロープ、
    その他の登場人物も魅力的。

    謎解きについては首を傾げてしまうし、
    突っ込みどころもあちこちにあり、
    後半は少々失速気味の感はあるけれど、

    血なまぐさいことは無いし、
    私も一員となって
    ただただ面白おかしく過ごしていたら、終わった、と言う印象。

    犯人に関して言えば
    「意外」と言うのをどこかで聞いたから
    あの人を捜査線上から外したのに…!
    (自分も刑事気分)

    作者コリンズさんはディケンズと仲良しだったと
    後書きに書いてある。

    ちょうど、ほぼ同時進行で読んでいた石井桃子さんのエッセイで
    ディケンズについて興味深いエピソードがあって
    気になっていたところだったから、
    早速読んでみよう。

    この本を知ったのはコニー・ウィリスの小説
    「犬は勘定に入れません」の謎解き部分に関わってくる、
    と聞いて、パッと買うには買ったのだが、放置していたもの。

    だからいま一つその点ピンと来なかったけど…
    なので「犬は…」も今一度読み返さなくては!

    いつものミステリ指南書では51位。
    (結構下ですね)

  • 1868年発表の古典ミステリ。長くて表現古めかしいけど意外に読みやすかった。ロビンソン・クルーソーオタクの老執事(前半の語り手)が可愛い。すぐ聖書みたく引用するの。ミステリ面より英国階級社会の人間ドラマのが面白かった。

  • 700ページを超す大作である。インド寺院の秘宝、黄色のダイヤ(月長石=本書のタイトル)が盗まれ、その行く末とともに物語が展開していく。
    秘宝を守るべく宿命付けられてきた3人組のインド人、彼らは何世代にもわたり、秘宝を追って取り返すべく暗躍している。彼らの活動は通奏低音のように物語のなかを流れている。
    イギリスへダイヤが渡っていくが、令嬢の誕生日のプレゼントとして突然登場、だが、その夜のうちに忽然となくなってしまう。誰が盗んだのか?
    登場人物の手記を通じて、事件が追いかけられていくが、そこにはドラマがあり、謎解きの推理が刺激されていく。一人の視点だけでなく、多くの登場人物の視点を通じて、輻輳する事件が解きほぐされていく。そのプロセスには斬新さがあり、その先に驚くべき真相が待ち構えている。
    十分楽しめる重厚さが魅力である。

  • はぁぁ、重たかった!(物理的に。
    取り合えず読み始めて、月長石ってイエローダイヤモンドなのかよう!と叫んだ石好きです。
    ムーンストーンって邦題で良かったんでないかい。
    和名だと長石って入るからどうも違和感が。ムーンストーンならまだ直訳月の石だしねぇ。もしくは月光石とか…うーん。

    クラック嬢の章が読んでて一番辛かったです…。
    ここはやっぱり宗教観の違いなんだろうなぁ。
    すれ違いすれ違いで命を落とすロザンナに「なんなのよもう!」って思ったり、はけーはくんだレイチェルー!だったり。
    女性陣が手強すぎた。
    カッフさん好きなんだけどあんまり活躍しなくて残念。
    カッフさんだけで別の物語が出来そうなくらい、いいキャラしてたのに!
    今なら園芸刑事でコージーミステリになりそな雰囲気。
    まぁなんだかんだ、最初の方のベタレッジさんとオチも好きです。
    ロビンソン・クルーソー、読んでみようかな(笑。

    よし、次は軽い本を読もう!(物理的に。

  • 2022/7/20読了
    本作の発表は1868年、シャーロック・ホームズよりも時代は早い(『緋色の研究』の発表は1887年)。長編推理小説の興隆は第一次大戦後という認識だったが、こんな超・長編もあったのだね。そして、この長~いお話の大部分の語り部であり、主家に忠実で、『ロビンソン・クルーソー』を信仰する老執事ベタレッジには、是非是非長生きして欲しいと思った。

  • 「最初の、最大にして最良の推理小説」という惹句そのまんまの良作だった。
    複数人による報告の体を取っている大部の小説だが、それぞれのキャラクターがどれも個性的で生き生きした魅力に満ちていて、途中ダレることもなく最後まで読み切らせる筆力は流石だと思う。
    ただ、古い時代の常識で書かれているので、肝心の部分の仕掛けが現代の目で見ると怪しいものになってしまっているのは少し残念。

  •  著名古典の一作。
     ミステリではあるが、いかんせん昔の作品(だから、古典なのだが)であるので、謎のオチは「そのまんま」という感じで、期待しすぎると拍子抜けするかも知れない。
     ただ、本作の素晴らしいところは、登場人物の個性が際立っているという点ではなかろうか。執事ベタレッジもさることながら、ほかの登場人物も総じてみな、人物を確立させている。
     物語運びもなかなか上手いので、読ませる読ませる。
     やはり、古典的名作たる、と読了して思う。

  • 誕生パーティーの夜に盗まれた月長石を巡る物語。

    語り手が入れ替わり進む物語は、小説を何作も読んだかのような充実感。
    語り手によって文体が変わり、そのどれもがその人物を見事に表している。
    誰かに肩入れせずにはいられないようなミステリだった。
    自分としては老執事ベタレッジの執事っぷりが堪らなくよかった。
    謎解きとしては正直頭をひねらざるを得ないけれど、まあ書かれた時代を考えたらこんなものか。

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