曲った蝶番 (創元推理文庫 118)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118075

感想・レビュー・書評

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  • 1年前の謎の殺人事件、悪魔崇拝、カラクリ自動人形、25年ぶりに帰国した現在の当主と、それに対して自分こそ本当の当主であると名乗りを上げてきた謎の男…どちらが本当の後継ぎなのか。本物を判定するテストの最中に現当主が謎の死を遂げる。自殺か、他殺か?!
    ……とまぁ、次々と謎が提示され、かつ序盤から良いテンポで話が進みます。ちょっぴりロマンスもありつつ、犯人を追い詰める辺りは怒濤の展開でかなり面白かった。見事などんでん返し! ラストの締め方も良い。(カーであのラストは珍しいパターンかと)

    これはカーのベストに含められることが多いのも納得のデキですね。

  • もし私がカーの作品(もちろんカーター・ディクスン名義も含めて)の中でベスト5を挙げてと頼まれたら、間違いなく本書はその1つに数えられるだろう。一般的に代表作とされる『三つの棺』、『プレーグ・コートの殺人』、『火刑法廷』などと比べると知名度の低い本書であるが、真相の衝撃度で云えば、カー作品の中でも随一ではないだろうか。

    まず発端からして面白い。タイタニック号の事件ですり代わりが行われたと称する男が結婚したばかりのファーンリ卿に偽者の疑いがかかる。そして我こそはファーンリ卿だと主張するのだ。そこからどちらが本物で偽者なのかの真贋をテストするがどれも決定的な証拠が挙がらず、関係者一同、途方に暮れているうちに庭先でファーンリ卿(と思われていた人物)が刺殺されるという事件
    が起こる。

    本作のテーマは衆人環視の庭の中で起こる殺人事件、つまり「開かれた密室」だ。カーにはこのテーマを扱った作品は他にも数あるが、この真相というかトリックは誰もが唖然とするに違いない。かの藤原宰太郎もカーのトリックを自身の推理クイズ本でほとんど暴露しているが、この作品に関してはなかった。それは恐らく載せるのをためらうほど突拍子も無かったからに違いない。そのトリックは仰天するに加え、なおかつその模様を映像で想像するとなんとも怖気が出るような代物なのだ。とにかく怖い。
    この題名の意味が今では何を指しているのか、そして結局本物のファーンリ卿はどっちだったのかという真相については全く忘却の彼方だが、この殺人事件のトリックだけはもう読んでから20年近くも経つというのに未だに鮮明に覚えている。物語の導入から最後の真相に至るまで、とにかくリーダビリティに溢れた一作だ。地味な作品だと捉えられがちだが、カー作品の必読本と云えよう。

  • 桜庭一樹さんの本で紹介されていた一冊。「吸血鬼カーミラ」がちょっと不発だった分、この本はどうかなーと思って読んだら…意外と面白かった。

    個別の事件が一つの線でつながり、更にその一つの線上に複数の人の感情が詰まっているという、まさに複雑な人物模様が推理小説だなぁ…と。日本の小説も面白いけれども、海外の少し古い小説も面白いな、と思った一冊。

  • 再読。ケント州の名家ファーリング家に、突然、現在の当主は偽者であり、自分こそが本物だと主張する男が現れる。二人のファーリング卿の真贋論争が繰り広げられる中、現在の当主が殺害され……。
    謎めいた導入部に始まり、タイタニック号、悪魔崇拝、自動人形といった道具立てが何とも魅力的。二転三転する展開の末明かされる不可能犯罪の(人を喰った)真相や、伏線の貼り方も見事だね。

  • 終盤に用意された伏線が
    驚きの連続という
    すばらしき作品。

    もちろんトリックも
    すばらしいぐらいに秀逸で
    普段では思いつきもしない
    トリックを使っているのです。

    とにかく最後まで油断は禁物です。
    気を抜くとたくさんの真相に
    襲われてしまいますから。

  • 登場人物に「マーリ」と「モーリ」と「デーリ」がいるのは、名前を覚えられない私に対する挑戦ですか。

    古典ですが、実はこの作者の作品読んだことありませんでした。
    犯人からの手紙で伏線をきちんと説明してくれるのはわかりやすいですよね。
    というか、最近読んだ古典はどちらも犯人の手記でおわってますな。

    内容は、ああ、うん、翻訳古典だなという感じ。

  • フェル博士もの。現ジョン卿が偽物だとして、われ本物という相続請求者が現れ、その真偽を知る最中、現ジョン卿が、殺人でも自殺でも思われずに死体となって発見される。タイトルとは異なり、不可能犯罪ではあるけれど、密「室」での事件ではなかったのにはちょっとびっくりしました。内容自体は妖術の影が渦巻き、殺人か自殺いずれも無理だという不可能犯罪等々、カーらしい作品ではありました。ですが、どうも解決に至るトリック等にはびっくりさせられたりなんだり。なんか煩雑だったようなそうじゃなかったような、微妙な読み応えでした。まあ、読みやすいっちゃ読みやすかったのですが、なんとも言えないでしたね。

  • 最後のどんでん返しが、
    正当なような卑怯なような。

    カーのフェル博士ものということで安心して読めます。
    無意味に理解のないローカル警官とかが出てこなくて宜しい。

    しかしタイタニック号が出てくるとは。

  • フェル博士シリーズです。
    由緒ある家柄のファーンリ家に現在のジョン卿は偽者であり、自分こそが本物であると主張する1人の男が現われて相続争いが始まります。
    そんな中、真偽の鑑別がつかないままに現在の当主が殺されて指紋帳も紛失してしまいます。
    相続人の真贋、ジョン卿の死の謎、自動人形の謎、1年前の死亡事件との関係と次から次へと謎が現れてきます。
    犯人もまた意外です。
    1つの作品の中にこんなにも多くの要素を詰め込んでいるというのに作品を破綻させない構成力は素晴らしいです。

  • これはまあなんともすごい。次から次へと繰り出されるいくつもの謎謎謎。相続人の真贋、ジョン卿の死の謎、自動人形の謎、一年前の死亡事件との関係、そして真犯人の謎。これだけの要素が350ページ弱に収まってるんだから。不気味な雰囲気と不可能で不可解な犯罪の感じが巧くマッチしてて読みながら全く飽きることがない。最初の真相は正直「えー?」なものだったんだけどさらに明かされる真相は見事でとてつもないものだった。

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