血の収穫【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488130060

作品紹介・あらすじ

ポイズンヴィルは鉱山会社社長の大物が労働争議対策として集めたギャングたちによって、支配され汚濁に満ちた市(まち)になっていた。その浄化を望む男に呼ばれたコンティネンタル探偵社の私が市に着いた途端に、その男は殺されてしまう。その男の父親である鉱山会社社長がそのまま、市の浄化を私に依頼した! 銃弾飛び交う、血で血を洗う抗争を巧みに利用しながら私は市の毒に挑んだ。ハードボイルドの巨匠ハメットの長編デビュー作を名手の翻訳で。

感想・レビュー・書評

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  • ゴリゴリのハードボイルド。面白かったです。
    表題作は裏切りに次ぐ裏切りで人死が多い。いつの間にか人が少なくなっていてどの人がどの陣営かわからない…命がけの町だ。。
    「クックフィニャル島の夜襲」も面白かった。銀行爆破による強盗事件でわちゃわちゃし始める島民。悪人なら女性にも容赦しない私立探偵。良きです。
    ジョークがブラックなのも、これこれ!みたいになりました。

  • 新訳になったのを機に読んでみたけれど、プロットの面白さ、主人公の造形が見事で一気読み。対立を作り出し、双方をぶつからせる。その中にあるそれぞれの思惑や欲望。町を浄化しようとする者、手に入れようとする者。血で血を洗う迫力のある展開。ハードボイルドの魅力が詰まっていて、この作品が今現在に繋がっていることを感じられるしそれが嬉しい。

  • 黒澤明が映画『用心棒』の参考にしたことが知られる名作です。
    ハメットは、チャンドラー、マクドナルドと並びハードボイルド御三家と言われていますがは、この作品はハードボイルドよりはノワールに近いです。
    硬派なマフィアたちが多く登場してきます。
    魅力的な作品です。後半のスピード感がとても良いです。





    「探偵会社コンチネンタルのオプ(探偵員)は、鉱山会社社長の息子ドン・ウィルソンの依頼を受け、鉱山町パースンヴィルにやってきた。

    パースンヴィルは、鉱山会社の社長エリヒューが雇ったマフィア(ピート、ルー・ヤード、ウィスパー)が町に居つき、これに対抗する警察(ジョン・ヌーナン)までマフィアのようになってしまい、ポイゾンヴィル(毒の村)の異名をとるほど荒れ果てていた。
    その状況を改善しようとしていたドンは、オプが着いたその日に街中で射殺される。

    エリヒューは、これを機にこの町のマフィアの一掃をオプに頼む。オプはドンを殺したのが銀行の出納係アルベリーであることを突き止める。アルベリーは、ドンと情婦ダイナどの関係をあやしみ、犯行に及んだ。エリヒューは事件がマフィアの仕業でなかったことからオプへの依頼を終了させようとするが、オプはそれを拒否する。

    マフィアのボスの一人、ウィスパーにオプはボクシングの八百長をひっくり返させ、損をさせる。さらにオプはダイナを味方につける。オプとホイスパー一味は銃撃戦になる。オプは、警察署長ヌーナンに近づく。ヌーナンは2年前に弟が自殺していたが、その犯人がホイスパーであるとオプに騙され、協力体制に入る。
    ホイスパーは逮捕されるが、すぐ脱獄し、警察(ヌーナン一派)とウィスパー一家の銃撃戦が町のあちこちで始まる。
    ピート、ルー・ヤードといった他のマフィア達もこれに乗じて活動を始め、ついにルウは射殺されてリノ・スターキーが後を引き継ぐ。
    やがて皆がエリヒュー老の元に集まり講和しようとする。しかしその場でオプはすべての事情を暴露する。ヌーナンの弟を殺したのはウィスパーでなく、当時の警官であること。さらにヌーナンがリノと手を組み、でっちあげの銀行強盗をホイスパー一家の仕業に見せかけたこと。その調査の過程でヌーナンはピートの密造酒工場も破壊したこと。講和は決裂し、ヌーナン&レノ一派、ホイスパー一家&ピート一家の全面抗争が勃発する。ウィスパーによってヌーナンは射殺される。その  ダイナも殺され、オプに容疑がかかる。
    ウィスパーが、彼をダイナ殺しの犯人と思い込んだダイナの情婦(ダン・ロルフ)と相討ちになる。

    ことを知ったオプは、そのことをリノに伝えて彼を味方につける。リノはピート一味を皆殺しにする。
    オプはエリヒュー老がダイナに熱を上げていたことを突き止め、今すぐ軍隊を呼んで真っ当な警察機構を入れるよう彼を脅迫する。
    そしてレノは死を偽装していたウィスパーと相討ちとなる。ダイナを殺したのはレノであった。レノはダイナに嵌められたと勘違いして、ダイナを殺した。
    死体の山、血の収穫によってポイゾン・ヴィルは浄化された。

    「一人でも彼を見ているものがいるかぎり。
    彼はリノ・スターキーでありつづけるだろう。世界が差し出すものならなんでも瞬きひとつすることなく受け入れてきた男が、その生き様を最後まで全うしようとしていた。」

  • 3.3

  • ハメット長編第一作であり古典的名作。ハードボイルドの元祖であり、名プロットが高く評価され、黒澤明監督の「用心棒」を始め、数々の映画のお手本になりました。諸勢力入り乱れるなか、主人公が暗躍し、流れる血は計り知れず、最終的に全てを壊滅するあれデス。はったり、誘導、引掛け、罠と、主人公が【黒い】そして【リアリズム】に溢れています。意外なのが主人公コンチネンタル・オプの推理力が高いこと、名探偵でした。新訳ということもあり大興奮のうちに読了しました。みなさん、是非お読みください。強烈におすすめです。(1929年)

  • 血で血を洗う抗争の力学の細かいところは、雰囲気をなんとなく掴みながら、カッコ良いセリフや地の文の箇所に付箋を貼りながら読む読書に徹した。〈「ポイズンヴィルには法律があるなんて金輪際思わないことだ。自分がつくる法律以外はな」〉。

    〈蓋の下でポイズンヴィルが煮立ちはじめた。私はこの市の人間になったかのような気分だった。そのせいだろうか、市を煮立せるために自分が取ったあまりよろしくない行動の記憶も、睡眠の邪魔にはならなかった〉。やはり「“状況”を用意する」プロットには、スケール感の大きさが漂う。

  • 旧訳の「血の収穫」を読んだのは、少なくとも35年以上前だと思う。
    新訳を読んで、内容をまるで憶えていないのが分かった。
    冒頭しか印象に残っていないのだ。
    数年前、古本の「おれの血は他人の血」を読んで微かに「血の収穫」みたいだなと思ったら、解説にそのようなことが書いてあり、その時はぼんやりこの作品の印象は残っていたのだろう。
    ともかく凄まじい作品で、主要な登場人物が悉く死んでしまい、終盤では主人公がヒロインの殺人を犯しているのではという疑惑まで、浮上する。
    この作品ではヒロインが、一人しか出て来ないが、その描写も客観的で、見方によっては味気ない。
    一つの街に巣食う互いに対立する悪に諍いを起こさせて、依頼人のために浄化する。
    最終的にその依頼は達成されるのだが、終わりの方では、あまりに人が殺されるので、主人公の探偵自身も殺されるのではないかと、疑心暗鬼になった。
    解説を読んだら、この作品が前に上げた筒井康隆の作品だけでなく、多くの映画や小説に影響を与えていることを知った。
    ハメットの文庫本は「デイン家の呪い」と「影なき男」があったように思う。
    機会があれば読みたい。

  • チャンドラーと並んでハードボイルド御三家と評される著者の初長編作。これはハードボイルドではなくギャングアクションでは…?という疑問が頭をよぎるが、ハードボイルドの原則に則った文体であればそう成り得るという解説は非常に理に叶っていた。中盤はコメディチックな雰囲気もあり思わず笑ってしまったが、これが真剣か狙いかは分からず終い。主人公を突き動かす行動原理が全く見えてこず、最後まで作品に馴染めないまま読了してしまったが、対立抗争系プロットの元祖というだけあって、街の顔役同士が潰し合う様子は確かに読み応えがあった。

  • 2019/07/17読了

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著者プロフィール

1894 年アメリカ生まれ。1961 年没。親はポーランド系の移民で農家。フィラデルフィアとボルチモアで育つ。貧しかったので13 歳ぐらいから職を転々としたあと、とくに有名なピンカートン探偵社につとめ後年の推理作家の基盤を作った。両大戦への軍役、1920 年代の「ブラックマスク」への寄稿から始まる人気作家への道、共産主義に共鳴したことによる服役、後年は過度の飲酒や病気等で創作活動が途絶える。推理小説の世界にハードボイルドスタイルを確立した先駆者にして代表的な作家。『血の収穫』『マルタの鷹』他多数。

「2015年 『チューリップ ダシール・ハメット中短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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