雨の殺人者 チャンドラー短編全集 (4) 創元推理文庫 (131‐6) (創元推理文庫 131-6 チャンドラー短編全集 4)

  • 東京創元社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488131067

感想・レビュー・書評

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  • 「あ、これは『大いなる眠り』に出てくるエピソード…」
    「…これは『さらば愛しき人よ』のシチュエーション…」
    ん?これは…、ああ、これは…と、
    読んだことのあるマーロウ君の長篇のどれかに酷似
    (と、もう言おう)した3編と、

    尻すぼみで終わった、「謎」の話と、

    しっちゃかめっちゃかで結局主人公の人物像が
    いま一つ伝わってこない話。

    の、以上、計5編収録の、中編集。

    今、年表で確認したけれど、
    この短編の発表のあと、

    練られ、研ぎ澄まされ、
    あの、マーロウ君の長編シリーズが世に出たのだね。

    全体的に荒削りで、やや乱暴、

    マーロウ君が出てくる回もあるけれど、
    いつものようにはマーロウ君マーロウ君していないよ。

    「へえ、こう言う中編集もあるんだ」と思って
    手に取ったけど、
    うーん、まあ、そういう事だ。
    (知らなかったのには意味がある)

    モース警部やポアロみたいに、
    マーロウ君の短いお話バージョンもあるのかと思ったら
    違い、残念だった。

    でも、フィリップ・マーロウファン
    チャンドラーファンとしては、
    サラリとでも読んでおくと、
    後々何かの役にたつかもね。

  • 79073.73

    今回はハードボイルドばかり4冊も!!これも皆ハードボイルドについての作文を書きあげるため。

  • 眠れない夜にどうぞ。
    長編よりまとまっていて良し。
    ただし話がおもしろいかというと、
    全然おもしろくない。
    チャンドラーは話の筋ではなく
    雰囲気を読むものです。
    訳もほとんど古典。

  • 「雨の殺人者」は、「大いなる眠り」の事件のあらましがコンパクトに描かれている。

    「カーテン」は、出だしだけ「長いお別れ」といっしょ。中身はまた「大いなる眠り」の素材が多い。主人公はマーロウ。ウィンズロー将軍に娘の婿探しを頼まれた彼は…。自動車塗装工アートハックや、シルバーウィグことモナ・メザーヴィが味わい深い。

    「ヌーン街で拾ったもの」は、主人公が潜入捜査専門の刑事という、ちょっと珍しい話。

    「青銅の扉」はダーク・ファンタジー。
    主人公は、散歩中に立ち寄った骨董屋で、不可思議な青銅の扉に出逢う。青銅の扉をくぐったものは…?

    「女で試せ」は、「さらば愛しき女よ」のテーマと一緒。ムース・マロイは本作ではスティーヴ・スカラと名付けられている。話の展開などは「さらば愛しき女よ」とは異なるけれど、この本で一番の出来だと思います。スカラが亡くなるときに、ピューラが寄り添ってあげるところはとても好きです。
    チャンドラーの小説では、男女が結ばれるとことはあまりにも少ないから。 

    「でも、もし幾分でもスティーブのためになるなら、あたしーーーほんとうのことを話すつもりよ」

  • 東京創元社によるオリジナル短編集第4集。
    収録作は表題作、「カーテン」、「ヌーン街で拾ったもの」、「青銅の扉」、「女で試せ」の短編5編。

    表題作の主人公には名がないが、マーロウだというのが定説になっている。これは『大いなる眠り』の原形とされる作品。

    「カーテン」は探偵カーマディが、逃亡幇助を頼まれた友人のラリーが結局自分一人で逃げた矢先に殺されてしまった事から、ラリーの関わった友人の捜索に乗り出す。
    金持ちの依頼人と蘭の温室で対面するシーンは確かに『大いなる眠り』にも見られたシーン。

    「ヌーン街で拾ったもの」はヌーン街で見かけた金髪の女性の代わりに、一台の高級車から落とされた荷物を拾ったことからハリウッドスターとマフィアとのある企みに巻き込まれる話。

    「青銅の扉」は夫婦仲の悪いうだつの上がらない亭主が散歩中、出くわした馬車に連れられ、ある骨董商の競売に参加し、そこで青銅の扉を手に入れるところから物語は始まる。この重厚な扉は実は時空の狭間とも云うべき無の空間に繋がる扉で、主人公がこの扉で気に食わない人間を次々に消してしまうという話だ。結末はこういう話にありがちな、誤って主人公がその空間に入ってしまうというものだが、危うく難を逃れた警官がその後たびたび誰かに突き飛ばされやしないかと怯えるラストがいい。こういうところがやはりチャンドラーはうまい。

    「女を試せ」では再びカーマディが登場。ギリシア人の床屋の主人の捜索でセントラル・アベニューを訪れたカーマディが、たまたま出くわした大男スティーブ・スカラに否応無く彼のかつて愛した女ビューラの捜索に巻き込まれる話。
    ここで現れる一人の女を追い掛ける大男は大鹿マロイではなく、スティーブ・スカラ。最後の幕引きも同じようなものだったか?凶暴かつ乱暴で野獣のように思われた大男。自分の目的のためには人を殺す事も躊躇わない大男。だのに女にはこの上ない優しさを見せる。自分を撃った女に対して「放っておいてやれ。やつを愛していたんだろう」と慈悲を与える不思議な魅力を持った男だ。こういう男は多分に母親の愛情に飢えていたのだと思われる。

    本作では『大いなる眠り』と『さらば愛しき女よ』というチャンドラーの2大傑作の原型となった作品が読める。長編と読み比べてどう変わったのか確認してみるのもまた面白いだろう。
    従ってベストは「女を試せ」。次点は変り種「青銅の扉」か。

    この東京創元社が編んだ短編集には抜けている作品もあり、これらを全て補完したのが後年早川書房から出た文庫版短編集である。ただあちらはこちらと区別するためか題名が原題のカタカナ表記であり、なんとも味気ない感じがする。チャンドラーの持つ叙情性は日本語の美しさと通じるものがあると私は思っているのだが、それが見事に損なわれている。
    表紙も含め、チャンドラーのイメージに合うのはこちらの短編集なのだがチャンドラーの作品を網羅しようと思うと物足りない。チャンドラリアンにとって日本の出版事情とはなんとも具合の悪いことだろうか。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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