シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488142063

作品紹介・あらすじ

わたし、ミは、火事で大火傷を負い、顔を焼かれ皮膚移植をし一命をとりとめたが、一緒にいたドは焼死。火事の真相を知るのはわたしだけだというのに記憶を失ってしまった。わたしは本当に皆の言うように大金持ちの伯母から遺産を相続するというミなのか?死んだ娘がミで、わたしはドなのではないのか?わたしは探偵で犯人で被害者で証人なのだ。ミステリ史上燦然と輝く傑作。フランス推理小説大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーのガイドブックでだいぶ前に知り、ずっと読んでみたかった一冊です。
    フランス推理大賞受賞作。

    私の名前はミシェル・イゾラ。
    私は二十歳。
    わたしが語るのは殺人事件の物語です。
    わたしはその事件の探偵です。
    そして証人です。
    また被害者です。
    さらに犯人です。
    わたしは四人全部なのです。いったいわたしは何者でしょう?

    これは、1962年に本書が発刊されたときに掲げられた内容紹介文だそうです。

    「内容的には巨額の遺産争いに巻きこまれた貧しい娘をめぐる犯罪の話なのだが、書きたかたがいかにも新鮮だった。とくにモダン・ジャズか前衛絵画を想わせる文章の魅力!ただしこれを読んで、何やらわけのわからぬ箇所があると感じた人がいたとしてもしかたがない。何しろすべてのいきさつを読者にきちんと説明するような文体ではない上に、細部の辻つまを厳密に合わせることなどは初めから目的としていないみたいな作風だからだ。まるで、新感覚派の詩人か画家か作曲家が感興のおもむくままに奔放におのれの世界をくり広げたという感じ。些細な辻つまなんぞたいして合っていなくたっていいんだ。とうそぶいている感じ」(小泉喜美子『メインディッシュはミステリー』新潮文庫より)

    独特の雰囲気のある話でした。
    ストーリーとしては最後にどんでん返しがあります。
    記憶喪失がキーポイントです。
    最後の方は「は?」「は?」「え?」と狐につままれたような感じで、何度も文章を読み直しました。
    一体、何がどうなったのかのかと思い、自分の頭がおかしいのかとも思いました。
    真相は訳者あとがきを読むまでわかりませんでした。

  • ミとドとラという呼び名の少女の物語が導入、そして顔と手にやけどを負い包帯でミイラのようになった、わたし、の独白。5,6歳からの記憶が無くなっているらしい。名前はミシェルだという。・・少し読むと、これはなりすましの物語か? 飛行機事故での整形なりすましの「コピー・フェイス」をちょっと思い浮かべる。しかしなりすましって最後はうまくゆかないんだよなあ、と思いながら読み進める。そして現れる後見人女性ジャンヌ。中ほどで、ああこの二人の陰謀ね、となるが、しかし最後に「シンデレラの罠」の意味するところが記され、するとわたしはミなのかドなのか? 

    一番印象的なのはミとドとラという呼び名だった。ミシェル、ドムニカ、アンジェラ。犯罪の原因は遺産というよくあるもの。だが語り口が引き込まれる。



    著者のセバスチアン・ジャプリゾの説明が無いので調べると、なんと「新車の中の女」の著者。これは翻案ドラマで浅丘ルリ子が印象的だった。ほとんどの著作が映像化されている。このシンデレラの罠も1965にフランスで映画化。
    ほかに「さらば友よ」1968 「雨の訪問者」1970 など。

    セバスチアン・シャブリゾ:1931-2003 フランス。1950年ソルボンヌ大学在学中に純文学的な "Les Mal partis”でデビュー。


    1962発表 フランス
    2012.2.29初版 図書館

  • もやもや……
    読後、すっきりせずに、?が頭に渦巻いてしまう。

    しかし、この曖昧な解決がこの作品の持ち味なのだろう。
    「わたしはこの慈研の探偵であり、証人であり、被害者であり、犯人なのです」という有名な謳い文句は、まぎれもなく本当だ。
    夢中になって、一気読みした。

    二人の友人同士で、岬にある別荘滞在中に起こる火災。
    生き残った一人は、顔も焼けただれ、記憶喪失。
    「わたしはどっち?」でラストまで引っ張るのだ。

    ジャプリゾ作品、もっと読みたいのに、絶版になっている作品が多いですね。最近は、ルメートルが流行っていることもあり、フランス産ミステリはもっと盛り上がっても良いと思う。そして、そのどれもがトリッキーな作品で驚かされてしまう。ミステリファンはもちろんのこと、エンタメ小説ファンにはおすすめできるものばかり。

  • 顔に大火傷を負い記憶喪失になった『ミ』。
    だけど数々の違和感により、自分は死んだ『ド』なのでは?と思うようになる。
    探偵で犯人で被害者で証人でもある『わたし』は一体誰なのか。
    読めば読むほど『ミ』にも『ド』にも思えてくる。
    加えて、回想と想像の区別がつきにくい文章でもあるので、読んでいるこちらを余計に混乱させる。

  • 言わずとしれた帯が有名な名作。
    「わたしはこの事件の探偵であり、証人であり、被害者であり、犯人なのです」

    新訳だからかすごく読みやすい。たまに言い回しにおフランスを感じる。
    結末ははっきりさせても無粋だし考えるほど深みにハマる

  • 新訳で読みやすくかつ理解しやすくなったらしい。が、やはりモヤモヤ。真相は藪の中。これが作者の狙いなんでしょう。

  • シンデレラの罠
    210612
    今年31冊目今月2冊目。
    #読了
    #シンデレラの罠
    #セバスチアンジャプリゾ

    帯の惹句が秀逸。
    火事、殺人、生き残り。
    欲しいのは遺産なのか愛なのか。

    「ミ」も「ド」も魅力と難点がある。
    それはどちら側から見るかだし、愛への渇望も見える。

    愛や憧れは執着のプラス面、憎しみはマイナス面だな。

    記述を鵜呑みにするな。

  • 「私はこの事件の、探偵であり、証人であり、被害者であり、犯人なのです。」

    この帯を考えた人は天才だと思う。
    この作品は、"帯負け"してる感が否めない。

    純粋に考えれば「わたし」はミなのだが、訳者の解説のようにも考えられるので、結局どっちなのか分からない。
     
    例えば、岡嶋二人さんの『クラインの壺』では真相が分からないことがとても良い余韻を残していたが、この作品ではただただモヤモヤする。

    東西ミステリーベスト100にも入っているらしいが、正直あまりスゴさが分からなかった。

  • 旧訳でも読みましたが、読みやすかったです。
    最後まで、火事で生き残ったのはどちらなんだろう?
    とサスペンス感がありました。

  • 名作の底力をこれでもかと感じさせられる極上のミステリー。自分は誰なのか?探偵であり、証人であり、被害者であり、犯人である彼女。読了後も深まる謎。こりゃすごいや。

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