- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488184018
作品紹介・あらすじ
シャーロック・ホームズを模して書かれた贋作、偽作の類は、天文学的な数字に上っている。中でもダーレスの創造したソーラー・ポンズは〈プレイド街のシャーロック・ホームズ〉といわれるほど生き写しのキャラクターだった。その全70編の作品中から、「アルミの松葉杖」「ファヴァシャム教授の失踪」等、聖典中の〈語られざる物語〉を取り上げた短編など13編を収録した。解説=戸川安宣
感想・レビュー・書評
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ふざけた名前だと思いきやめちゃくちゃおもしろい。
聖典へのリスペクトを感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
オーガスト・ダーレスがホームズの続きを自分が書くしかないと思った結果、できあがったパスティーシュ。原典に忠実な作風は、イギリスの考証にそこそこ問題を抱えているらしいものの、イメージはバッチリつかめていて、いかにも続編らしく読める。あくまで純粋にホームズ(ホームズではないけれども)が活躍するという点でも、実に違和感がない。ラヴクラフト神話においては功罪相半ばするダーレスだが、この本ではよく頑張ったと思う。
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ソーラー・ポンズ?
けったいな名前だなあと侮るなかれ。
シャーロック・ホームズのパスティーシュとして、これほど優れたものは、そうそうない。
作者、オーガスト・ダーレスの、愛ゆえの産物なのである。
シャーロック・ホームズ・シリーズをすべて読み終えてしまった時、読み返して、読み返して、もっと読みたいと思った時、たいていの人は、よいパロディやパスティーシュがないかを探し始める。
しかし、オーガスト・ダーレス(1909~1971)はちがう。
アメリカはウィスコンシン州、ソークシティの街から、作者サー・アーサー・コナン・ドイルに手紙を出したのだ。
「シャーロック・ホームズの新しい話は書かないのですか?」
羨ましいことに、コナン・ドイルから返信があった。
「書かないよ」
「じゃあ、ぼくが書いていいですか?」
「だめだよ」
そんなわけで、オーガスト・ダーレスは自分で書くことにした。
シャーロック・ホームズの名前は使わず――ソーラー・ポンズなる名前にして!
さらに、ワトソン役には、リンドン・パーカー医師、
ハドソン夫人には、ジョンソン夫人、
ホームズの兄マイクロフトには、バンクロフトなる人物を配する。
そうして、本家そのままの事件、冒険を次々に描いたのだ。
中には、シャーロック・ホームズ譚に名前だけが述べられ、どんな事件か語られなかったものを、ポンズの推理譚として描いたものさえある。
これが世にうけないはずがない。
書きも書いたり、80編!
本家シャーロック・ホームズ譚の60編という数を、優に超えてしまった。
一度もロンドンを訪れることなく、これだけのものを書けるとは、オーガスト・ダーレス、ただものではない。
シャーロック・ホームズへの並ならぬ愛あらばこそだろう。
ところで――いきなり話を変えて申し訳ない――「クトゥルフ神話」の名をご存じだろうか?
ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890~1937)のものした、怪奇小説の金字塔たる作品群である。
しかし、彼は47才の若さで亡くなり、そのせいか、生前はその名も作品の数々も、まったく知られることがなかった。
オーガスト・ダーレスは、ラヴクラフトの親しい友人であった。その作品群が忘れ去られることを惜しんだ彼は、アーカム・ハウス出版社をつくったのである。
ラヴクラフトの作品を次々と世に出し、さらには、その世界につらなる作品を数々執筆し、「クトゥルフ神話」として体系化することに大いに力を注いだ。
オーガスト・ダーレスは、愛の強い人なのである。
彼のシャーロック・ホームズ愛によって生まれた作品群だが、そのソーラー・ポンズ自身にも数多くのファンがいる。
ファンクラブがあるのはもちろん、ダーレスの死後も、バジル・コッパー(英)、デビッド・マーカム(英)らの手によって、続編が次々と出されているのだ。
驚くなかれ、それは近年――2017年、2019年にも及ぶ。
愛によってうまれた作品が、こんなにもまた愛されている、それがアメリカのみならず、イギリスにまで及ぶとは、まさに愛の拡大、愛の連鎖というべきだろう。
80もの(パスティーシュをいれれば、100以上の!)作品があるにも関わらず、ソーラー・ポンズの翻訳された推理譚は、この1冊にまとめられた13編と、なにかのアンソロジーにぽつりと入った数編きりである。
他の作品も読みたいと思う私は、どこかに手紙を送るべきだろうか。
「ソーラー・ポンズの冒険譚を、もっと翻訳出版してください!」 -
「推理の術は主として観察力にかかっているんだよ」
19歳の時にドイルに送ったファンレターの返事に「ホームズものはもう書かない」と書いてあったことから、ダーレスはソーラーポンズを書き出したという。まさにホームズパスティーシュの先駆けともいえる事件簿13編収録。マズグレーブ家の儀式書に名のみ出てくる事件を描いた「アルミの松葉杖」やドイルの書いた機関車消失の話を意識したのか更に一捻りしてポンズに解決させる「消えた機関車」などそのまんまホームズの話に怪奇趣味や意外な発端を加えるあたりはさすがオーガストダーレス。 -
2020年復刊フェア。
ホームズ原典への愛が感じられるソーラー・ポンズものですね。見事な本家踏襲と言いますか。
ネタそのものが、ああ、あの話のあそこらへん意識してるのかな…?と思わせながら読めるのが面白かった。 -
2020/11/05読了
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ホームズ譚を全編読破したダーレスが、ドイル卿に続編執筆の意思がないことを確認した上で書き始めたとのエピソードが解説にある。ここまで来るとファンライティングの鑑だなあ。それだけあって楽しいけれど、トリックはともかく、ストーリーテリングはやはり本家には及ばないか、という感じ。それとワトソン博士はパーカーほどとんまじゃないぞ、とも思う。
怪奇味の強い『消えた住民』や『トットナムの狼男』なんかが面白くて、やっぱりダーレスは怪奇小説が本領なのかなと思う。 -
ダーレス初読み。ホームズのパロディやパスティーシュは数あれど、「原典」への愛をこれほどまで出している作者もあまりいないのではなかろうか。私立探偵ソーラー・ポンズはもとより、友人の医師ロンドン・パーカー、下宿の女主人ジョンソン夫人等々。それぞれの人物設定も趣向を凝らしており、特にシャーロッキアンでない読み手でも思わず微笑が零れてしまう。解説によれば、ホームズが「最後のあいさつ」をした第一次大戦勃発の年から数年後に、ポンズがパーカーと出逢っているらしい。こうした背景を踏まえ原典と併せて再読するのもまた一興だろう。
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「シャーロック・ホームズのライヴァル」というかホームズパロディですね。