殺人交叉点 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M カ 8-1)

  • 東京創元社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488205133

感想・レビュー・書評

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  • めっちゃ気持ち良い!
    最後の一行とまでは言わずとも、本当に最後の最後の最後で一気にひっくり返されるカタルシスがたまらない。私はフランス語は全く解りませんが平岡先生の訳の塩梅が絶妙なんでしょう。〈訳者あとがき〉における瀬戸川猛資先生による「フランス風小手先芸の極地」(p363)という評には大いに頷けます。
    頭を空っぽにして素直に騙されるべし。可能ならば記憶を失くしてもう一回騙されたい。

    中編2編収録。

    〈殺人交叉点〉前述の通り、とにかく騙されてほしい。いや、途中なんか違和感は感じるんだけども(特にプールのくだり)それはそのままにして騙されてほしい。語学堪能な方なら割とすぐカラクリには気づくのかもしれない。翻訳ってすごい。


    〈連鎖反応〉一作目とは雰囲気が変わって、企業内という狭い人間関係におけるわちゃわちゃ劇。ちょっと中弛みというか、進行がもったりしているのと実話系怪談のようなあやふやな収束が〈殺人交叉点〉で興奮した身としてはちょっと物足りない…というかコレジャナイ感。ガラッと作風は変わるのでカサックの奥深さを知るには良いのだろうけども。ルビニャックがボーマノワールを連れ出した上手い口実まで書かれていたらまだスッキリしたかも知れない。どことなく、つい最近読んだ『その可能性はすでに考えた』(9784062938532)の’奇跡的展開’という感じが似ているような気がする。
    本筋とは関係ないが「愛情問題はいつも最後にはお金の問題になるんだわ」(p236)という一節は沁みる。夫婦でも親子でもなんでもその通りだと思う。


    いずれの話にも登場するソメ警部はただのボンクラ?警察への皮肉的な意味でもあるのだろうか。

    1刷
    2023.2.1

  • フランス・ミステリ批評家賞を受賞したのは表題作『殺人交叉点』だが、僕は併録されている『連鎖反応』の方が好み。『殺人交叉点』はどんでん返しが凄いということで知られているが、期待しすぎたからだろうか?それは兎も角として、『連鎖反応』はあまりにブラックな、最早「ジョーク」で、結末で思わず笑ってしまった。よく出来たミステリだと思う。

  • あれ、2014年に読んでいたみたい。さっぱり覚えてないなあ。
    何となく嫌な人たちばっかり出てくるので、トリックはなるほど!と思ったけど、好みではないかな。「連鎖反応」もしかり。こっちはユーモアはあったけど。どうやって殺そうかと考える”表”の主人公はなかなか滑稽だった。
    たぶん倫理観が合わないかな。フランスだからかどうかは分からないけど。

  • 『殺人交差点』と『連鎖反応』の2作品が収録されており、『殺人交差点』の方が有名だが、『連鎖反応』も『殺人交差点』に優るとも劣らない素晴らしい作品だった。
    カサックの作品を初めて読んだが、非常に文章力があって、ストーリー運びも上手だと感じた。

    『殺人交差点』
    小泉喜美子さんの『弁護側の証人』を読んだ時と同じような読後感だった。叙述系、どんでん返し系のミステリーとして知られている作品だが、最後まで読んで、「あれ、どんでん返しはいったいどこに?」と思ってしまった。多分、作者が利用しようとした「読者の思い込み」というものを最初から持っていなかったからだと思う。それとも、何か勘違い、読み誤りをしているのだろうか。ネット検索しても、よくわからなかったが。
    トリックよりも、物語としての面白さの方が印象に残っている。
    もつれた男女関係が原因で起こる殺人事件で、ある意味、よくあるような話だが、登場人物の心理描写、物語の展開のさせ方が優れている。
    2人の人物の証言をもとに事件の経過が説明されるが、事件の起こる背景、事件の時の出来事、恐喝者の登場、お金の工面と駆け引き、ある人物の勘違いによる意外な終局へと、起承転結にメリハリがあって、最後まで面白く読めた。

    『連鎖反応』
    この作品で印象に残っているのは、主人公の心理描写・反応・会話の内容等にとてもユーモアがあって、面白いということだ。
    物語も次々と展開していき、最後まで息をつかせない。婚約したのにも拘わらず、愛人と関係を続けていたことで起こる主人公の破綻。それを解消しようとするも、負の連鎖で悪いことの連続。事件をきっかけに正の連鎖へと転換するが、最後は因果応報的な結末。
    事件の真相もなかなか凝っていて、面白い。
    主人公の同僚が主人公に代わって、事件の顛末を綴っているのだが、この友人の事件後の立ち位置も面白い。

  • 淘汰されずに残る作品にはやはり理由がありました。展開がわかっていても何度でも読み返したくなる。
    表題作は10年前におきた殺人事件の当事者二人の供述という形で話が進みます。その視点がまず面白い。入り乱れた恋愛関係なのに不潔な感じがなく、むしろおしゃれな雰囲気すら感じるのはさすがフランスミステリ。迫り来るタイムリミット、状況は二転三転し、当事者たちに希望を見せておいては突き落とす。読者もジェットコースターなんて例えじゃ及ばないくらいに振り回されます。それでも感情はしっかりついていく。ラストは笑っていいのか泣いていいのか分かりませんでした。
    併録の「連鎖反応」は皮肉の効いたユーモア満載。人間の浅はかさと、偶然に見せかけた必然の恐ろしさに思わず笑ってしまいます。事件の幕切れで息を抜いちゃいけない、この作品の一番の衝撃はほんとに最後の一文。「えっ!?」と声を上げることウケアイです。

    • kwosaさん
      courbetさん

      本棚に花丸をありがとうございます。

      これ、面白かったですよね。
      フランス語が理解できれば、原書と読み比べて訳者がどの...
      courbetさん

      本棚に花丸をありがとうございます。

      これ、面白かったですよね。
      フランス語が理解できれば、原書と読み比べて訳者がどのように苦心されているかを感じたい作品でした。

      courbetさんの本棚はチョイスの幅広さが魅力的です。
      特に読みたかった海外ミステリが豊富なので参考に致したくフォローさせて頂いております。
      2013/03/14
    • courbetさん
      kwosaさん
      このたびは花丸を沢山いただいた上にフォローまで…ありがとうございます!
      その時々で興味の対象を変えてしまうため、中途半端に無...
      kwosaさん
      このたびは花丸を沢山いただいた上にフォローまで…ありがとうございます!
      その時々で興味の対象を変えてしまうため、中途半端に無節操な本棚になっておりますが
      ほんの少しでも気に入っていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。

      この作品、絶版になってるのが不思議なくらい面白かったです。
      原著との比較…してみたいですね~。
      カサック自身も大変だったでしょうし、訳者さんもさぞかし気を使われたことでしょう。
      故・児玉清さんのように原著で読むのに憧れているのですが、
      第二外国語で仏語を選択したくせに冠詞の使い訳すら忘れてしまうようでは夢のまた夢。
      2013/03/14
  • 『殺人交叉点』と『連鎖反応』の中編2作。 それなりに楽しめたが「殺人交叉点にはやられた」という感想を読む前から目にしており、期待しすぎていたためか想像以上にあっさりとしていた印象。 「やられた!」というより「ですよね」という感じ。 読んでいると違和感が強すぎるのが原因だと思う。訳のせいか(訳が悪いとかではなくそもそも日本語だと難しい?)ネタバレ的なニュアンスがちりばめられすぎてるかなと。 連鎖反応はコメディとして読んだ。 こちらもそれなりにおもしろかった。

  • 十年前に起きた殺人事件の時効直前の出来事を真犯人と被害者遺族の視点から描いた表題作と、倒叙モノの「連鎖反応」の2編収録。
    傑作と名高い表題作だが、自分の不注意と思い込みによる勘違いで作者のトリックにまったく嵌らなかったので、意外性を感じることができず残念。あとがきを読んで、ようやく自分が何を読み落としていたのかわかった。
    「連鎖反応」は犯人の思考や構成などなかなかブラックで、フランスっぽいおしゃれな作品。個人的にはこちらの方が好みだった。

  • 『殺人交叉点』と『連鎖反応』の二作を収録。

    『殺人交叉点』Nocturne pour assassin は
    1957年の初出のとき、あるいは1972年の大幅改稿のときには
    とても衝撃的なものだったのかもしれません。
    しかし、同工異曲の作品が多数存在する現在では、
    「この書き方は、あのやり口だな」とすぐに分かってしまう、
    「典型的な」作品です。
    「古典」として読むのが良いと思います。

    『連鎖反応』Carambolagesは、
    上司の上司の上司の・・・である社長を殺すことによって、
    玉突き式に自身の昇進を得ようとした男。
    綿密な計画の下、社長を手にかけたが、
    社長の死は思わぬ反応の連鎖を社内に巻き起こす。
    という、ブラックユーモア作品。

  •  表題作は若者グループの愛欲がらみの殺人事件。ほんの限られた登場人物の人間関係のエピソードが、被害者の母親と犯人の独白でつづられてゆく。「最後の一撃」というどんでん返しとして有名な作品だが、そういう先入観もあり読んでいくと語り口から犯人はわかってしまうのは痛しかゆし。それより時効間際にあらわれる恐喝者との駆け引きのサスペンス性が新味かな。併録されている「連鎖反応」は一転して遠大なたくらみが思わぬ方向にころがっていくユーモアミステリで楽しめる。なかなか達者な作者とみた。

  • なんとなくクラシックなミステリが読みたくなって本書を。名作の名は伊達じゃなかった。いやあ、やられました。おもしろかった!最後にどんでん返しがあるとわかって読んでいたのだから、これは気がつくべきだったかも。今となっては特に珍しくもない仕掛けだけれど、まんまとだまされてしまったわ~。

    イマドキの、重厚長大だったり、こりに凝ったりしたものとは違って、ごくシンプルで読みやすい。何よりも、メインの仕掛けだけではなくて、そこに至るまでのストーリー運びがうまいのよね。「名作ミステリ」には、今読むと、うーん、どうなのこれは?というのが結構ありそうだけど、これは文句なし。長らく読まれているのももっともだと思いました。

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