失踪者〈上〉 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488211080

作品紹介・あらすじ

イングランドの田舎町に住むエレインは、幼馴染みのロザンナの結婚式に招待され、ジブラルタルへと出発したが、霧で空港で足止めされ、親切な弁護士の家に一泊したのを最後に失踪した。何があったのか? 結婚後、仕事から離れていた元ジャーナリストのロザンナは、五年後、事件の取材を始める。弁護士は何か知っているのか? 彼女は自発的に姿を消したのか? ロザンナは調査に深入りしていく。そしてエレイン生存の情報が……。

感想・レビュー・書評

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  • ドイツの国民的人気作家のミステリ。
    舞台はなぜかイギリスが多いようで、今回もそう。

    元ジャーナリストのロザンナが復帰後初仕事として、行方不明事件を取材することになる。
    それは5年前、ロザンナ自身の結婚式に招いた幼馴染のエレインが失踪したというもの。
    霧でジブラルタルへ向かう飛行機が欠航となり、やむなくエレインはとある弁護士の家で休んだのだが、以来行方がわからない‥
    疑われた弁護士は家庭も仕事も評判も失ったが、何の証拠もあったわけではないのだ。

    エレインの行動を追うロザンナ。
    弁護士を疑うエレインの兄。
    一方、妹を殺されたアンジェラ一家の悲しみと、誰かから逃げているパメラの章が交互に描かれ、どう関連してくるのか?わからない!

    読んで時間がたってしまったので、紹介を書くのもどうしようかと思っていましたが、いつまでも内容を覚えているので、これはそれだけインパクトがあった、ということだろうと。
    ぐいぐい読ませますよ。

  • 二件の残忍な殺人事件と、解決されていない5年前の失踪事件。
    かつて雑誌記者だったがヒロインが事件の特集記事を書くことになり、再び事件が動き出す。

    一人称を多用し、章が変わるごとに新しい登場人物が現れ、それらの人々が少しずつ事件に絡んでいくさまは面白い。一方で心理描写が細やかな割には事件の動きが遅いのが残念。

    しかし、話が良く練られていてこちらが想像している展開を見事にかわす構成に惹かれてラストまで読み続けられた。
    さて、下巻はどう転がる?

  • 著者は"ドイツの宮部みゆき"と評される国民作家で、本作も売れに売れた模様。正直、失踪者自身が「壁の花」と揶揄されるほど魅力に乏しく、謎の解明に当たる主人公への共感も薄い。むしろ彼女に振り回される男たちに同情を覚えるほど。驚天動地のアクロバティックな展開があるわけでも、せつなく泣きたくなるようなストーリーでもないのだが、とにかく読ませる。ありふれた日常性から、これほど複雑で多面的な謎を紡ぐ作者の技量に感心させられるとともに、その作者をこれだけ多くの読者が支持しているというドイツの出版界が羨ましく感じられた。

    問題なのは実は、謎そのものではなく、謎への適切なアプローチではないだろうか。すでに警察の捜査は打ち切られ、何年も経過し半ば忘れられた失踪事件を、失踪者の古くからの友人であるロザンナが昔の上司からの要請で、ジャーナリストへの復職がてら、当時の関係者にインタビューをしていく導入部。最重要容疑者として疑われ、散々マスコミに追われ辟易しているマークに、当時の状況、なぜ見ず知らずの女性を空港から連れ帰ったのかを質す時に、ロザンナが投げかけたのが「エレインは、あなたのなかの何に触れたんですか?」という問いだった。

    問われたマークは、虚を突かれたように驚き、「いい質問ですね」と応える。散々攻められた昔の事件をいまさら掘り返すジャーナリストに向かい、怒り出すのではなく、ただ「それが一番核心を突く問題だ」と取材に協力する姿勢を示していく。ここで彼はようやく「初めて、ついに決定的な問い」を投げかけられたのだ。この時に語られる彼の説明の真偽もさることながら、未解決の問題の解明につながる重要な一歩は、こうした核心を突く質問 - 適切なアプローチではないだろうか。

    空港であの日、なぜマーク・リーヴはエレイン・ドーソンを家に連れて帰ったのか? あの夜、二人に何が起こったのかという問いもさることながら、二人の兄、セドリックとジェフリーの関係性も面白い。体が麻痺して自由に歩けないジェフリーが、友人のセドリックに「おまえは心の障害者だ」と嘲る様は、この小説がどれほど複雑で多面的な関係性を扱っているかよくわかるシーンだった。

  • 5年前に突然失踪した女性の謎を、その関係者が調べていく。いろいろな視点がめまぐるしく変わり、時々混乱もするが、ここまではなかなか面白い。下巻に期待。

  • 記録

    翻訳された本はほとんど読まないけれど
    なんだか気になって読んだら
    下巻も読みたいくらい続きが気になった。
    良かれと思ってやった事が
    後戻り出来ないくらい大きな出来事になって
    でも誰か1人でも力になってくれる人がいたら
    違う展開、違う結末になるんだね。
    エイレンは生きてるのか死んでるのかな。
    謎の女は何に怯えてるのかな。

  • ドイツの作家「シャルロッテ・リンク」の長篇ミステリ作品『失踪者〈上〉〈下〉(原題:Die letzte Spur)』を読みました。
    「フォルカー・クッチャー」、「ライナー・レフラー」の作品に続き、ドイツミステリです。

    -----story-------------
    〈上〉
    イングランドの田舎町に住む「エレイン」は幼馴染みの「ロザンナ」の結婚式に招待され、ジブラルタルに向かうが、霧で空港に足止めされ、親切な弁護士の家に一泊したのを最後に失踪してしまう。
    何があったのか?
    五年後、ジャーナリストとしての仕事で「ロザンナ」は、「エレイン」を含む失踪者たちについて調べ始めた。
    すると、「エレイン」を知るという男から連絡が!
    彼女は生きているのか?!

    〈下〉
    五年前に失踪した「エレイン」生存情報に、「ロザンナ」は急遽現地に駆けつけたが、「エレイン」のパスポートを持つその女性は、まったくの別人だった。
    どうやって彼女はパスポートを手に入れたのか?
    「エレイン」失踪で疑われ、人生を狂わされた弁護士に「ロザンナ」は惹かれ始め、彼の無実を証明することに熱中する。
    真実はどこにあるのか?
    最後の最後にあなたを待つのは、震えるほどの衝撃だ。
    訳者あとがき=「浅井晶子」
    -----------------------

    ドイツの作家による、イギリスを舞台にしたミステリ… 謎に満ちた、愛憎渦巻く人間ドラマにひきずりれ込まれ、ページをめくる手が止まらない感じでした、、、

    面白かったですね… 二転三転する巧みなストーリーテリングと丁寧な心理描写により、重層的な物語に仕上がっていましたね。


    イングランドの田舎町に住む「エレイン・ドーソン」は、幼馴染みの「ロザンナ」の結婚式に招待され、ジブラルタルへと出発したが、霧で空港で足止めされ、親切な弁護士「マーク・リーヴ」の家に一泊したのを最後に失踪した… 何があったのか?  結婚後、仕事から離れていた元ジャーナリストの「ロザンナ」は、五年後、事件の取材を始める、、、

    弁護士は何か知っているのか?  彼女は自発的に姿を消したのか?  「ロザンナ」は調査に深入りしていく… そして「エレイン」生存の情報が……。

    発見された女「パメラ・ルーク」はなぜ、「エレイン」のパスポートを持ち、「エレイン」を名乗っていたのか?  彼女はなぜ隠れるように生きていたのか?  本物の「エレイン」はどこにいるのか?  生きているのか?  それとも……?  当時疑われた弁護士を取材した「ロザンナ」は、彼に惹かれ始め、その無実を証明することに熱中する… そして 彼女の行き着いた真実とは……。


    多くの登場人物の視点を切り替えながら物語は進みます… 一見、無関係とと思える人物やブツ切れに思えるエピソードや事件がじわじわと関連付けられていく展開が愉しめました、、、

    消えた女、疑われた男、死んだ女、追う男、逃げる女、助けようとする男、探る女… 点だった存在が線としてつながる瞬間が快感でしたね。

    抗い難く引き込まれる筆力… とでも言うのかな、、、

    ストーリーはシンプルで、奇抜な設定や大掛かりなトリック、どんでん返しがあるわけじゃないんだけど、登場人物の心理を絶妙に生かしたスリリングな展開に心を鷲掴みにされましたね… 理屈抜きで愉しめる作品でした。

  • 「沈黙の果て」が面白かったので手に取ったが、前評判どおり、あちらのほうが楽しめた。
    ヒーローヒロインに好感を抱けないのが最大の敗因で、上下2巻の長大な物語を伴走するには、「なんだこいつ」というキャラは不適。それだけで萎える。
    あと、いくらなんでもややこしくしすぎ。さすがの手練れで話がわからんということはないのだが、先述したヒロインの共感できなさもあいまって、だんだん食傷してくる。
    あげく、ラストの劇的さも「沈黙の果て」には及ばないとあっては、確かにあちらより落ちると言わざるをえない。

    2019/8/12〜8/13読了

  •  この著者は初見だけどなかなかのめっけものだった。解説をみるとドイツの売れっ子作家で好んでイギリスを舞台の小説を書くとのこと。ドイツの宮部みゆきとか。なるほどそれはすごい。確かにわからないでもない。ひょんなことから5年前に霧のヒースロー空港で消息を絶った友人の捜索行をはじめることになった女性ジャーナリスト。家族や関係者を巻き込みながら話は二転三転し、思いもよらない方向に転がってゆく。結局最後はそうだろうなという結末に落ち着くものの、そこに至るまでのサスペンス性と引っ張り回し感はなかなかのもので、ぐいぐい読ませる力を持っている。ドイツ人の書いたイギリス物にしちゃ通俗的というかテレビドラマ的というか、主人公のロザンナを代表とする登場人物の人物造型があまりに軽くミステリとしても底が浅いのは残念だが、エンタメと割り切れば楽しめる。

  • ドイツの作家。舞台はイギリスと、ジブラルタル。

    あらすじ
    イギリスの片田舎から、ジブラルタルへ、結婚式に招待されたさえない女性。霧のために飛行機が飛ばず、空港で知り合った男性の家に泊めてもらい、そのまま行方不明になる…。5年後、結婚生活が苦痛になっていた、招待者ロザンナは、元上司に誘われ、エレインのことを記事にまとめようとする…。

  • レビューは下巻にて。

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