彼の個人的な運命 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488236069

感想・レビュー・書評

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  • 三聖人シリーズ第3弾です。というか何で三聖人シリーズというのかなあ、今回も元内務省調査員のルイ・ケルヴェレールが主役ですね。第2弾と3弾はシリーズのスピンオフ作品というか、むしろこちらの方がシリーズと言えるのではないですかね。(笑)
    主人公のルイは場末のあか抜けないヨレヨレ探偵といった趣で、ヒキガエルのビュフォを友とするなど、ある種アメリカン的ハードボイルドの雰囲気があって、これがヴァルガスの興を得たのでしょうか。

    発達障害がある流しのアコーデオン弾きのクレマンは連続女性殺人事件の嫌疑をかけられていると知り、かつて自分に文字を教えてくれた元売春婦で今は路上本屋さんのマルトのもとに駆け込んでくる。
    何とかしてクレマンを助けたいマルトは知り合いの元内務省調査員ルイ・ケルヴェレールに相談する。事件を調査することにしたルイは、一計を案じクレマンを三聖人が住むボロ館にかくまうことにした。
    クレマンを犯人にしたてあげようとする謀略と考えたルイはクレマンに恨みを持つ人物の調査に乗り出す・・・。

    がんじがらめと思える状況、個性溢れる皮肉っぽい登場人物たち、知性的でユーモアに満ちた理屈で攻める会話、そして疾風のストーリー展開とアップダウンのある構成で、今回も魅力満載のミステリーだったと思います。
    「個人的には」、メドックやらサンセールやらワインが生活の中で普通に登場するところも琴線に触れました。(笑)
    相変わらず最初に象徴的な事柄をどーんと提示する手法は上手いですね。
    今回の象徴は「愚者」です。発達障害のある醜い風貌の男で、これが事件を最後まで混沌とさせていて、しかもところどころでキーとなっているのが良かったですね。

    以下、若干ネタばれ気味なので要注意!




    途中から、かつての名探偵の事件のごとく「見立て殺人」がミステリーのスパイスとなっていて、これが次はどうなるんだという興味を掻き立ててくれました。
    一番面白かったシーンは、聖ルカことリュシアンが「見立て殺人」であることを喝破した場面だったですね。
    やっぱりミステリーにはこうしたミステリーならではのスパイスが物語を盛り上げてくれるんですよね。
    ラストは残り30ページになってもミスリードの網が張られていて、最後まで飽きさせない構成になっていたと思います。

    解説を見ると「三聖人」シリーズは今回で休止されているようで、もっぱらアダムスベルグ警視シリーズの方に力を入れているようですが、これはこれで魅力的なシリーズなのでまた復活してほしいですね。

  • フレッド・ヴァルガスの作品はどれも好み。これは『三聖人シリーズ』の三作目。登場人物がどれも魅力的。ヴァルガスの作品もっと翻訳されて欲しい。

  • 主人公?メリキャットは全ての女子の代弁者?と感じてたが(猫のように好きに散歩して食べて面倒見てくれる人がいる)、改めて18歳という表記が冒頭にあって、それはだめだ。思考が6ー8歳で止まってる。小学校に行き始めたら捨てなければならない考え方「自分だけの殻にこもって自分の意見に従わない人間は排除する」というのは、大人が「あなたは赤ちゃんじゃないんだから恥ずかしいことなのよ」と教えなければ。やはり「普通の」姉のような人間はカーターベイゼン(ゴシップガールに出てた。今回の映画にも出てる)が来たら影響受けるのよ。

  • 三聖人が住むボロ館で女性連続殺人事件の容疑者を匿う羽目に。
    彼の無実を信じる元売春婦に頼まれ、密かに事件の捜査を始めるケルヴェレールたち。青年は果たして無実なのか…
    相変わらず登場人物たちが魅力的で、今回は子供だった頃の容疑者を教育したという元売春婦がいい味を出している。
    前作に引き続きケルヴェレールが探偵役で、歴史学者たちはそのサポートに回っているので出番が少なくてちょっと残念。しかしケルヴェレールも常にペットのカエルを連れ歩いているという変わり者でなかなか面白いキャラクタである。解説によればこのシリーズはもう一段落ということだが、できればもう少し続いてほしい。

  • 20121120

  • 元娼婦に頼まれて、殺人事件の容疑者を匿うことになったルイ。
    ちょっと「脳みその量が足りない」その青年を連れて行った先は三聖人の住むボロ屋で…。

    容疑者の青年は無実なのかそうでないのか。
    そこから物語が始まるのだけど、元娼婦の心根が泣ける。
    まさか三聖人シリーズでこんなにしんみりさせられるとは!
    事件は割と平坦で、犯人の目星もついてしまう。
    しかしそれ以上に三聖人とルイ、マルコの叔父のやり取りが面白くて、軽くさっくり読めてしまう。
    前作からルイが捜査の本流になり、三聖人はその手助けをするという形になった分、男だけの共同生活(皆貧乏)のエピが少なくてその辺りがちょっと不満だったりもする。
    三聖人シリーズはこれが最後らしいんだけど、できればもっと読みたいな~。

  • 三賢人シリーズ 3作目(一応ひとくぎり)
    ヴァルガスさんの登場人物は魅力的だ。片足を過去に突っ込んだ歴史学者の三賢人も、探偵役のケルヴェレール(カエル持参)も、また逢いたいキャラクターなのに、これ以降はアダムスベルク警視のシリーズに邁進されたようで残念。(警視のシリーズも好きですけどもね)

    家政夫のバイトをはじめてた聖マルコ……雇いたい。腕まくりしてアイロンをかけてもらいたい。

  • 3冊でている三聖人シリーズの最新作。

    途中まで、主人公は三聖人では無かった!
    元内務省調査員こそが主人公であったので、このシリーズ呼びに違和感が付き纏ったのは仕方が無い。
    最後、良いとこもってったケド!

    最後までどうなるかと、読みふけられた。
    これは、前の2冊も是非とも読んでみたい。

    ただ、これは最新作で有るが故に購入できた。
    正直、シリーズものは1巻から読む派だが、どの書店を探しても6年前の書籍は置いてなかったから仕方が無い。

    密林にお願いするしかないのだろうか・・・・。

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