正義の裁き 下 (2) (創元推理文庫 M ケ 1-12)

  • 東京創元社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488282127

感想・レビュー・書評

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  •  本当は、私は海外の小説が苦手なのです、実をいうと。

     理由は簡単。登場人物がカタカナだと、誰が誰だかいまいち覚えられない(笑)。それに、当然日本とは文化が違うので、イメージがしにくいというか、感情移入がしづらいところがあるのです。

     だから、物語の世界に入っていくのに時間がかかってしまうので、苦手、ということになっていました。

     でも、この本はいいですね。すっと、作品の世界に入っていけます。読みやすいというか、文章から映像が、ぱっと頭の中に浮かんでくる感じがします。もちろん、ミステリーとしての部分はイージーということではなく、次から次へと話が展開していきます。

     読み進めないと、一人称が誰なのかわからないような書き方も実にうまくて、あとからなるほどという場面も何度もありました。

     上巻では、嘘発見器すらパスしてしまうクールな男クリスが、テリーと出会い、恋に落ち、我を失うほど取り乱す場面が描かれています。そのことが、容疑者としての彼の立場を、より悪いものにしてしまいます。

     こう説明してしまうと、実に平凡なストーリーのように思えますが、それは私の文才がないからで、実際は、緊張感のある展開で、読み手を飽きさせません。

     刑事のデッカーは、他の容疑者の存在を疑いながらも、あまりにも状況証拠が揃いすぎているクリスを疑い、家宅捜索の中で追い詰めていきます。

    【ここから下巻】

     後半は、クリスの無実が証明される過程が実に丁寧に描かれています。前半で読者が引っかかっていたことが、ここにきてやっと一つ一つ明らかにされていきます。ちょっと待たされ過ぎの感じもしますが、それだけに、解決したときの喜びはひとしおです。

     アメリカの高校生の様子とか、人種や宗教に関するとらえ方とか、そのあたりがよく分かっている人が読むともっと別の感じ方をするのかもしれませんが、あいにく私はそっちの方は疎いので、「ふ~ん」という感じでしか読めないのが残念。分からないなりにも、結構細かい描写だな、という感想をもちました。

     それから、クリスの無実が証明されると書きましたが、クリスにはいろいろな秘密が隠されています。しかし、デッカーがそういったことを全部分かって、なお自分が正義と思う方向へ進んでいくのが格好いいです。(だからこそこのタイトルな訳ですね。)

     最後は、大枠ハッピーエンドで終わります。少し無理があるというか、ご都合主義の感じも残りますが、その方が、読者としては心地よくて、私は嫌いではありません。クリスとテリーの恋の顛末が、哀しくて、余韻が残ります。

  • シリーズ8作目、後半。

    高校の卒業の夜に起こった事件。
    捜査で浮かび上がった事情とは‥

    美形で才能があり自立していて、18歳にしてクールな、同級生とは一線を画すクリス。
    高校では、派手なグループにいたが。
    真面目で飾り気がなく、毎日まっすぐ家に帰って妹の世話をするテレサと、いつしか惹かれ合うように。
    一途な恋の思いがけない成り行きが、切ないばかり。

    捜査に当たったデッカーは、嘘発見器にも引っかからないクリスにある疑惑を抱いたが‥
    デッカーの家庭生活はいつもほど前面に出てきませんが、いいお父さんでもある誠実な刑事ぶりが、やがて生きてくることに。

    1995年の作品で、2008年の翻訳発行。
    かなり特異な環境がそもそも日本とは違うせいか、年月のずれはそれほど感じませんね。

  • (上巻より)

    とはいえ、二人の恋愛は、
    殺人やマフィヤの政略結婚や刑務所がからんできて平穏には進まず、
    愛の無い結婚をした少年と、
    結婚の無い妊娠をした少女の行く末を
    いつか風の噂に聞きたいと思うぐらいには惹きつけられた。

    その愛の軌跡に比べれば、
    事件の解決も。デッカーの上司の不正も、
    その結果デッカーが警部補に昇進したこともかすんでしまったのは否めない。

  •  リナ&デッカー シリーズ。

     高校の卒業パーティの夜、その女の子はベッドで縛られ殺された…。

     リナは、子育てに忙しくて、ほとんど活躍しません。
     デッカーが、おとーさんとして色々苦悩してますww

     導入が、デッカーの先妻の間の娘、彼女が通う大学で連続レイプ事件が起こっている、っていうので、それに悶々とするデッカーが描かれていて、おいおい、ニューヨークまでいって捜査するつもりなのか? とどうなってるんだよぉと思わせられます。

     と、女の子が、一人の魅力的な同級生にひかれている様子が、綿々とつづられてます。

     この一見ばらばらなものが、最後にきちんと集約する。
     と、えーーーー、そうなるんですかぁ、と驚愕の結末。

     やっぱ、上手いです、フェイ。
     なんつーか、心の襞ってもんがすごいわかってる作家だと思う。

     冒頭の娘を心配しているデッカー、っていうのは、最後になっても直接結びつく伏線ではないのだけど、ある意味、とても象徴的なのだ。
     うん、読んでしばらくして、胸にずしんとくる感じ。

     派手さはないけど、とても印象的な1作です。

  • 感想は上巻に書いています。

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