死者に祈りを下 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ケ 1-14)
- 東京創元社 (2009年4月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488282141
感想・レビュー・書評
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デッカー&リナのシリーズ9作目、後半。
ピーター・デッカーは昇進して部下も増え、忙しくなっています。
アメリカのユダヤ教徒の世界や、慈しみ合う家族の様子が、丁寧に描かれていくのが魅力のシリーズです。
ひとつの宗教で濃くまとまっている育ち方というのは実感としては知らないことだけど、何となく少しはわかってくるような。
デッカー自身は自分がユダヤ系とは知らなかったという育ちですが、リナと出会って、自らのルーツに目覚めたという。
医療の最先端をリードする心臓外科医が殺され、背景にある問題が、次第に明らかに。
しかも、被害者の息子の一人が、リナの古い友人だった。
ハンサムで生真面目な青年ブラムは、頼られる長男だったのに、家族の信仰となぜか決別し、今はカトリックの神父になっている。
リナの出番というか、デッカーのいないシーンでの出番が多かったですね。
若き日に深い心の交流があったブラムを心配し、個人的に接触するリナに、気を揉むデッカー。
名士の家族が崩壊していくのは、アメリカのミステリの伝統的なパターンでもあるかな。
驚かされる事情もあり、複雑な味わいでした☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々に読んだケラーマン。やっぱり読みやすくて面白く、ハズレがないなあ。リナ&デッカーシリーズはお気に入りだったのだが、次々出るので読みそびれてしまい、この第九作以降手に取っていなかった。これは再開しなければ。
ストーリー運びに無理がなく、すんなり読んでけるところがいい。米エンタメによくある読者サービスみたいな無駄なラブアフェアとかもなくて(デッカーが愛妻家という設定だもんね)、その点も気に入っている。このシリーズの重点は常に「家族」。その光と影を描くバランス感覚が好きだ。
今さらだが、アメリカ人にとっての宗教というものについて、実感としてとらえられる気がするところが、このシリーズの最大の長所だろう。特にユダヤ教について、美化することなく(もちろん矮小化もせず)、まったくの「異教徒」にも伝わる描き方がされているとあらためて思った。-
わたしもこのシリーズ大好きで読んでいたのですが、途中で見失ってしまいました。何作目まで読んだのかすらわからないです。でも、また読みたくなりま...わたしもこのシリーズ大好きで読んでいたのですが、途中で見失ってしまいました。何作目まで読んだのかすらわからないです。でも、また読みたくなりました。ほんとに、ユダヤ教の話が興味深いですよね。一作目とか、あとデッカーが改宗するあたりとかが好きでした。そのあとだんだん事件のほうが複雑になってストーリーも長くなった感じがして読むのをやめてしまったかも。ミステリだから事件が複雑なのは当然なんですけど……。2016/08/21
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私も「水の戒律」が一番好きです。デッカーが改宗するのは何作目でしたかね。あれも本当にいいですよね。たいして宗教的ではなかったデッカーが、思い...私も「水の戒律」が一番好きです。デッカーが改宗するのは何作目でしたかね。あれも本当にいいですよね。たいして宗教的ではなかったデッカーが、思い悩みながら自分にとっての信仰を探し求める姿が心に残っています。
長いシリーズなので最初の頃のワクワク感はないけれど、安定した面白さがあるなあと思いました。2016/08/22
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09/08/08 ★★★☆
高名な医師の死を追ううちに明らかになっていく、
複雑な家族構成や部下の医師との関係、そして被害者の意外な一面。
そこに第二殺人が起き、容疑者逮捕、リナと容疑者との接触などから
明らかになっていく真実。
そこには信仰と家族と性の問題が絡む問題が…
てなワケでしたが、上巻でちりばめられていた謎が段々と繋がっていくのは
読んでいて面白かったけれど、今回は複雑すぎるというか何というか
しっくりいかない部分あり。
今ひとつ殺人の実行犯がなぜあんな残忍な殺し方をしたのかが解らなかった。
あとはデッカーが管理職になったからしょうがないんだけど
もっと現場を走り回って欲しかったなぁ
ゲイの出血シーンでのマージの拒否反応はHIVが身近(?)な国ならではもんなんかなー -
うーん。おもしろくないわけではないけれど。 このシリーズは、最初のころのすごく印象深くて興味深かった感じが強すぎて、その余韻でシリーズずっと読んでしまっているような気もする。 うーん。前の話をまったく覚えてないんだけど、いつのまにデッカーが部下を何人も従えるように? 部下たちが軽口をまぜながら意見を出していく場面が長い気がした。
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高名な心臓専門医が殺される。
捜査にあたるデッカー。事件を聞いて動揺するリナ。医師の息子と、リナは知り合いだった。
フェイ・ケラーマンにとって、リナは理想の女性なのだろう。
だからこそ、リナは夫の親友であったブラムのことで揺らぐ。カソリックの神父になっているブラムもまた、リナの存在ゆえに揺れる。
事件を追うデッカーは、その揺らぎを傍観しているしかない。
揺らぐけれど、その揺らぎを自分で止められる女性。そして、自分で止まることをじっと待っていてくれる夫。
理想すぎて、デッカーが気の毒になってくる。
事件そのものは、さほどミステリアスではない。
地道な捜査で、答えはゆっくりとほぐれていく。けれど、リナとブラムのことが明らかになるにつれて、物語は別のベクトルを示していく。
フェイは、リナをどこに導こうとしてるのだろう。
物語は、振り子が揺れを止めるように終結するけれど、むしろリナの心の揺れはこれからまた始まるように感じる。
聖女になるのか、それともファムファタールになるのか、それともそのはざまで揺れ続ける姿を描くつもりなのかな…。 -
G 2009.9.27-2009.10.1
このシリーズとしては読みやすかったかも。
「良き夫にして、偉大な父。尊敬を集める名医がなぜ」
殺されたのか?非の打ち所のない表の顔とは別の裏の顔が
あって・・・という展開がびっくりするくらい常道。