卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.25
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本棚登録 : 285
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488423131

感想・レビュー・書評

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  • 酉乃初シリーズと「ココロ・ファインダ」の後にこの本を読んで、静かで抑揚が抑えられた文章が印象的でした。

  • む〜ん...(^ ^;
    作品自体のクオリティはとても高いのですが、
    これまた「おっさんが読むものじゃなかった」感が(^ ^;

    それぞれが独立した短編集で、
    共通点としては全作品にミステリ要素があることと、
    若い女性が主人公の、若い女性向け作品だ、ということか。
    昭和の香りただよう「少女小説」という単語が浮かんだ(^ ^;

    ミステリ「要素」はあるが、それが主体と言うよりは、
    登場人物たちの小さくも深い「成長の一歩」
    みたいなものに主眼を置いているような。

    作品ごとの登場人物の造形は、とてもリアルで、
    それぞれに自分たちの考えがあり、
    それぞれの人生をちゃんと生きている感じがする。

    その中でも、各主人公たちは群を抜いて繊細で、
    聡明であるが故にいろいろなものが見えて「しまい」、
    人に気遣い、自らを律し、傷つき、気疲れしてしまう。

    それでも、それぞれのきっかけを見つけて、
    小さな一歩で次の大きなステージに向かっていく。
    そんな少女たちの心象を、作者は温かい目で見守る。

    決して先を急ぐことなく、少女たちが自らの足で
    新しい一歩を踏み出した姿を見届けてから、
    そっと筆を置く...そんなイメージ。
    とても「丁寧に」綴られた印象を受ける。

    おっさんが読んでも大変面白く読ませていただきましたが、
    おそらく年齢の近い「少女まっただ中」の人とか、
    「卒業したての少女」、「少女帰りしている大人」などが読むと
    きっともっとずっと共感できるのだろうな...と思ふ(^ ^;

    同じ値段を払って、私より絶対に楽しめる人がいると思うと、
    うらやましいというか、損した気分というか(^ ^;

    読み終わってから、読んでいる間中ずっと背景に
    静かな音楽が鳴っていたことに気付くような、
    そんなほっこりした読後感の一冊でした(^ ^

  • 繊細な少女の心情を綴っているところは相沢氏らしいのですが、ミステリー要素がなく繊細さだけでは明らかにターゲットから外れている自分は楽しめなかった。
    それにしても氏の作品を読んで毎回思いますが、男性が書いているとは信じ難いです。

  • どの話もよく出来ているとは思うけど、自分には合わなかった。
    人を選ぶ小説。

  • 2018年46冊目。青春の揺れ動く感情を丁寧に描く繊細な短編集。⌈小生意気リゲット⌋謎解きの要素もあって、爽やかな読後感が光る。⌈チョコレートに、躍る指⌋一番重たい作品だけど、一番入り込める作品でもある。

  • 2017.9.15読了 112冊目

  • 問題や影を抱える少女たちの心の揺れ動きを丁寧に描く短編集。ちょっとほろ苦くて、でも優しい気持ちになる。「小生意気リゲット」と「卯月の雪のレター・レター」が好み。ともに共感するところが多くて少し刺さる。

  • 〇 概要
     揺れ動く少女達の心,温かさや切なさに満ちた謎を叙情豊かに描く,独立した5つの短編からなる短編集。青春ミステリの名手が贈る,珠玉の短編集

    〇 総合評価
     相沢沙呼の作品が持つ雰囲気は非常に好きである。この短編集にある5つの作品も,いずれも十分楽しめた。ベストは,「チョコレートに,踊る指」。この作品の叙述トリックの使い方はとてもうまい。更に,それだけでなく,ユリとヒナとスズという三人の少女の関係がなんとも言えずブラックで心に残る。相沢沙呼らしい作品だと思う。全体を通じた仕掛けもなく,「小生意気リゲット」といったミステリらしさが薄い作品もあるなど,寄せ集め的な短編集だが,相沢沙呼が好きなら読んで損はない作品集だと思う。★3で。

    〇 サプライズ ★★☆☆☆
     「チョコレートに,踊る指」は,ユリという少女をスズという少女だと思わせる叙述トリックがあり,やや驚ける。その他の作品も,日常の謎…というほどでもないような,些細な謎がある。とはいえ,サプライズは薄い。★2だろう。

    〇 熱中度 ★★☆☆☆
     どの作品も,先が気になって止まらない…!という雰囲気の作品ではない。ミステリ的な謎を用意することで興味をそそってはいるが,全体的に見てエンターテイメント性は低い。相沢沙呼らしい読みやすい文体なのではあるが,熱中度としては★2程度か。

    〇 インパクト ★★★☆☆
     「チョコレートに,踊る指」の真相,スズは既に亡くなっており,ユリがスズのフリをして見舞いに行っていたというラストは,なかなかにインパクトがある。ほかの作品はインパクトは薄い。しかし,強烈なインパクトはないが,忘れがたい印象はある。登場人物の心にちょっとした闇があったり,単なるハッピーエンドになっていないからか。

    〇 読後感 ★★★☆☆
     「小生意気リゲット」,「こそどろストレイ」は読後感がいい。「チョコレートに,踊る指」は全体的につらい話で読後感はあまりよくない。「狼少女の帰還」も,主人公がいじめられていた過去などがあって,全体的にはブラックな話。ラストにはやや救いがある。「卯月の雪のレター・レター」のラストも,まぁ,いいラスト。総合的に見て,単なるハッピーエンドではないのだが,読後感は悪くない。

    〇 キャラクター ★★★★☆
     どの登場人物もしっかり描かれている。相沢沙呼が描く少女は,いずれも心に闇っぽい部分があってよい。「小生意気リゲット」の姉妹,「こそどろストレイ」の3人姉妹,「チョコレートに,踊る指」のユリとヒナの関係,「狼少女の帰還」の主人公「三枝琴音」の過去,そして,「卯月の雪のレター・レター」の主人公の心の闇…などなど。いい味出してる。★4。

    〇 希少価値 ★★☆☆☆
     あんまり売れそうにない。創元推理文庫なので,細く長く販売する可能性もなくはないが…。そもそもミステリ的な要素が薄いので,相沢沙呼という作家が生き残っても,この作品は消えてしまうかも。

    〇 個々の作品についてのノート
    〇 小生意気リゲット ★★★★☆
     両親を失った姉と妹の話。姉は就職したタイミングで叔父の家で世話になっていた妹を引き取り,二人で生活を始めた。あるときまでは良好な関係だった二人が,1か月ほど前から関係が悪化してしまった。きっかけは1か月前。履歴書の書き方を教えるために自分の履歴書を見せたときに,妹は姉が「才能がないと取れない」ような大きな絵の賞を取っていることを知ってしまった。妹も,絵を書くことを始めており,自分が,姉の「夢」を奪ってしまったと思い姉に嫌われるのが怖くて,どう接していいか分からなくなってしまったという。妹が自分と同じ夢を目指して進んでいることを知り,嬉しく思う姉。二人の誤解が解けたところで終わる。「妹がなぜ,急に姉に冷たく接するようになったのか」という謎を絡めた話とも読めるが,単純にほっこりするいい話とも読める。なかなか。

    〇 こそどろストレイ ★★★☆☆
     同級生の島崎百織の家に遊びに来たサキと加奈。島崎家には,父親のほか,圭織,百織,沙織,小太郎がいる。人生ゲームをすることになって,沙織が人生ゲームを取りに蔵に行くが,蔵から花器がなくなっていた。当日は雪が積もっており,足跡がない。犯行ができたのは人生ゲームを取りに行った沙織だけ?しかし沙織の身長では花器には届かない。雪上密室の蔵から花器はどのようになくなったのか。長女の圭織が,数日前に花器を割ったと告白し,一応は解決するのだが…。真相は,沙織がゲームを取りに行くときに小太郎=猫を連れて行ってしまった。小太郎が花器を割ったというオチ。これは,まぁ,普通。きょうだい愛を描いたほっこりさはあるが…。

    〇 チョコレートに,踊る指 ★★★★☆
     交通事故にあったヒナという少女。ヒナという少女は,深海(スズ)という少女だけを信頼していた。ヒナは交通事故で視力を失っており,スズという少女が見舞いに来ることだけを楽しみに生きている。かつて,ヒナという少女は,ユリという少女が入院していたときに,見舞いに来ていたという過去があった。
     叙述トリックで描かれた作品。視力を失ったヒナという少女を元気付けるために,かつて,自分が入院しているときにヒナに元気付けられたユリという少女は,交通事故で死亡したスズという少女のフリをして,ヒナに会っていた。ヒナが完治する可能性があるということを知り,ユリはヒナにスズのフリをしていたこと,スズが既に死亡していることを伝える。ヒナは動揺し,ユリを追い出すが…ラストで,薄々スズは死んでおり,スズのフリをしてヒナが見舞いに来ていたと気付いていたと伝える。これは,この短編集でのベスト。叙述トリックの使い方もうまいし,作品としてのデキもいい。★4で。

    〇 狼少女の帰還 ★★☆☆☆
     教育実習生である三枝琴音が主人公。咲良という問題児の少女が登場する。この少女は,まいなという少女の家で,家政婦が通帳とハンコを盗んでいたという。真相は,まいなという少女の母親が再婚しており,まいなは自分の母を家政婦と紹介していた。琴音もかつて,小学校でいじめられていたという過去があり,まいなや咲良の気持ちを踏まえ,一人ひとりが違ってもいいという道徳の授業をするというラストで終わる。謎と真相のバランスは悪くないが,全体的な構成がいまいち相沢沙呼らしくない。勧善懲悪っぽいというか,いい話にし過ぎているというか…。★2

    〇 卯月の雪のレター・レター ★★★★☆
     読書好きで有名な進学校に通っている妹と歳の離れた姉が登場する。祖母の7回忌で祖母の家に行き,従妹の少女に再会する。従妹の少女も,妹と同じ高校に通うこと人あるという。従妹の少女は,7年前に死んだ祖母から,祖父のもとに1か月前に手紙が来たという。
     真相は、祖母は「玲子」という名前であり,「鈴子」という妹がいた。手紙は,鈴子から届いたものだった。自分で選んだ道を進むという生き方を示し,ラストでは,妹が姉から「結婚するんだ」という告白を聞くところで終わる。これはなかなかの作品。主人公の妹が相沢沙呼作品の登場人物らしい心の闇っぽい要素を持っているところがいい。★4で。

  • (内容)
    両親を亡くした後、就職を機に「わたし」は妹を引き取る。ふたりで懸命に生きてきたが、最近になって妹が不可解な行動を取るようになり……。姉妹のあやうい関係を描く「小生意気リゲット」。教育実習先の小学校で出会った、“嘘つき"と呼ばれる少女の言葉の真意を、実習生が読み解く「狼少女の帰還」。祖父宛に届いた、六年前に亡くなった祖母からの手紙。それに込められた秘密を女子高生が追う表題作など、揺れ動く少女たちの心と、暖かさや切なさに満ちた謎を叙情豊かに描く全5編。青春ミステリの名手が贈る珠玉の短編集。

  • 揺れ動く少女たちの心理を巧みに描いた日常の謎短編集。

    お互いを思いやる姉妹や女友達同士の葛藤を丁寧に描きながら、すこしだけ切ない謎を加えた5編の短編でした。

    何をやりたいのかわからず、模索して立ち止まっている若者の心の動きに魅せられます。

    将来に対する不安や懼れなど、簡単にはとても表せない気持ちを取り繕うことなく懸命に前を向いている姿には、自分も通ってきた道なので、懐かしさと尊さと感じますね。

    著者は男性だというのはすぐにわかりました。
    何となく、女性が女性を描いた時のリアルさが無いんですよねー。
    これはこれでいいと思うし、悪いわけではないのですが・・・、うっすら「うーん、違うかなー。惜しいけど。」と感じてしまいました。
    少女へのアプローチが、自分の好みと少し違いました。それだけです。

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著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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