聴き屋の芸術学部祭 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.46
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本棚登録 : 329
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488441111

作品紹介・あらすじ

類稀なる聴き屋体質の柏木君が遭遇した四つの難事件。誰よりもネガティブな性格の先輩、推理マニアの美男子学生作家など、文芸サークル第三部〈ザ・フール〉の愉快な部員たちが謎解きを繰り広げるユーモア・ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 今まで何回も読み返しているお気に入りの本。聴き屋という性質を自然と活用し謎を解いていく。4つの話が入っているが、謎や解き方がそれぞれ異なるため読み応えがある。あまり読んだことのないミステリー小説!

  • 聴き屋という設定はあまり活かせていないような気もするけど、大学の自由な雰囲気はよく伝わってくる小説でした。
    後書きで作者自身も言っていますが、人が死ぬ話と日常の謎系がまぜこぜです。作品の雰囲気としては日常の謎系に絞ったほうがよかったかもしれません。

  • ★まあ、ザ・フールだし(p.146)
    ▶四つの短編。▶殺人事件があるとは思っていなかったですが楽しいです。主にキャラクタの楽しさでしょう。キャラたちによる落語のような会話。▶スカイエマさんのイラスト。

    ■簡単なメモ
    【一行目】心理学の教授いわく、学部によって学生の服装傾向が分かれるのだという。

    【第一話 聴き屋の芸術学部祭】芸術学部祭最終日、スプリンクラーが作動し調べると焼死体が発見された。
    【第二話 からくりツィスカの余命】月子先輩の学生劇団でやる演目の原作は最終部分がないのででっち上げてくれとの依頼。米澤穂信さんの『愚者のエンドロール』みたい。
    【第三話 濡れ衣トワイライト】黒猫登場。部室のエアコンが壊れた日、模型部の紅一点、成田さんの大作が壊され牧野くんが疑われている。
    【第四話 泥棒たちの挽歌】芸術祭の打ち上げとして箱根に行ったザ・フールは死体を発見する。

    【安西芙美菜/あんざい・ふみな】写真学科四年。芸術学部祭最終日に焼死体となって発見された。
    【梅ちゃん】「ザ・フール」の後輩の女子学生。文芸学科。BL系が好き。《あたしは妄想の世界に生きるって決めたんです》p.218
    【会長】学生自治会の会長。使いものにならないと言われている。マンガなんこではふつうそういうヤツが鋭かったりするが?
    【科学研究部】芸術祭でことごとく実験演目に失敗し科学困窮部となった。
    【柏木】主人公で語り手の「ぼく」。生まれながらの聴き屋体質で誰の懺悔も苦もなくしっかり聴くことができる。《無関心であることが聴き屋を生み、聴き屋が結果的に第三者を救えているのなら、冷めた心はむしろ美徳といえる》p.14。刑事から捜査内容をある程度聞きだすことすらできる。
    【からくりツィスカの余命】ザ・ムーンが今度やる演目。原作者に対するお茶目ないたずらのせいで原作者が逃走しそのとき終幕部分を抜いていったのでどう終わるのかわからない。
    【川瀬公彦/かわせ・きみひこ】柏木くんの友人。女装がものすごく似合う。家からずっとゴージャスな女装で通学した男らしさ。二ヶ月前に文学新人賞を獲ってデビューした。純文学系だが読書傾向はミステリ寄り。作家にはわりと多いようですね。実直なタイプとの相性がものすごく悪い。
    【聴いてもらう】能動的なのではなく「聴いてもらう」という受動の面が強い。
    【聴き屋】「ザ・フール」の芸術祭での演し物のひとつ(普段もやっているようだ)。柏木くんがひとりでやらされている。なんでもただ聴くだけ。懺悔室みたいなものかと。あるいはロバの耳。無料。かなり盛況でとにかく聴いてもらいたいことがあったら皆とりあえず柏木くんを探す。
    【黒猫】キャンパスの女王。副会長からはクロちゃんと呼ばれている。
    【芸術学部】T大学芸術学部。学生数四千人ほど。キャンパスは郊外の広大な土地にあり、他学部から完全に隔離されている。全八学科で文芸学科、美術学科、音楽学科、演劇学科、写真学科、映画学科、放送学科などがある。部室棟は五十以上の部屋を抱く。《どこか人種レベルで違うよね、君たちは。》p.11。でも教授陣や上の方の人は以外に保守的で権威主義的だったりする。
    【芸術祭】突発的な演し物もOK(いちおう許可は必要)。
    【こだわり】柏木《みんなそれぞれにこだわりがあるというのなら、それを尊重したいとは思う。》p.144
    【ザ・フール】柏木くんが所属するサークル。文芸第三部。「変人集団」を率いる月子さんに「あの変人集団!」呼ばわりされた。《うちのサークルには局所的な能力を持つ人は多いけど、人と人の間に立って何かできる人材は絶無だよ》p.154。「先輩」や川瀬もここに籍を置いている。総部員数は幽霊部員も含めると百人を超えるが主要メンバーは二十名弱。柏木くん、美術学科の「先輩」、川瀬、部長、写真学科の羽鳥、美術学科の森里、デザイン学科の永江、後輩の梅ちゃん、津田などがいる。
    【ザ・ムーン】月子さんが立ち上げた学生劇団。「変人集団」と呼ばれる。
    【小説】川瀬《小説を口で説明したら、小説の意味がないだろうが。》p.33。それはその通りですね。その形式になっているからにはそれがまるごと必要なので。特に純文学系では。
    【少年窃盗団】箱根に出没する。「テツ」「ヤス」と呼ばれていた。
    【先輩】柏木くんが知る誰よりもネガティブな女性。美術学科。何十分もだらだら愚痴を続けることができる。作家や芸術家向きかもしれない。おそらくかなり才能がある。年上からも「先輩」と呼ばれている。《わたしの話を聴いてくれるの、柏木しかいないから・・・・・・》p.18。背後霊のように柏木くんの背中にくっついてくる。将来柏木くんと結婚する必要がありそうな人物。一家にひとつ柏木くん。
    【月子】演劇学科三年。目立つ演劇学科の学生の中でも特に目立つ存在。憑依型俳優。
    【成田】模型部の紅一点。国際宇宙ステーションを制作中。地球人はもともと火星人だったのかもしれないという説を唱える。あまり多く交渉をもっていなかった柏木くんとしては天然系のように思われた。
    【走れメロス】梅ちゃんに言わせるとBL系。そう思っている人は多いでしょう。
    【副会長】学生自治会の副会長。会長が使いものにならないので実質的な会長かもしれない。柏木くんに弱みを握られている。
    【部長】冬が嫌い。
    【ぼく】→柏木
    【牧野】放送学科二年。模型部所属。ちゃらんぽらんで人望がなく敵だらけ。
    【マスター】行きつけの喫茶店のマスター。ものごとに動じない。恰幅がいい。
    【模型部】弱小で全五名。部長は放送学科の三年の菅原、牧野、成田、音楽学科でフルート専攻の渡辺、映画学科の宮本、
    【森里】美術学科。
    【料理研究部】いつもユニークなものを作る。芸術祭で荒稼ぎしIHクッキングヒーターをゲットした。

  • 初めての作家さんだったけど、なんかすっごく好きだった。追いかけたい

  • 3+

  • 聴き屋という設定がまず面白い。
    つい語りかけたくなる人。話を聴いてもらえる人。
    第1話ではそれ故に事件の情報が入ってきて、解決への糸口となる。
    これは面白いと思ったら、2話以降全く違う趣向となる驚き。しかもどれもミステリとして面白い。
    こりゃすごい。

  • 聴き屋っていうのもいいし、面白かった。でもなんだかスッキリしないのはなんだろう? 結構ハードに人が死んでるのに悲壮感もなんにもなく普段通りなのも不思議な感じ。

  • 「聴き屋の芸術学部祭」★★★
    デビュー作らしくほどほどに良い。
    「からくりツィスカの余命」★★
    少しややこしい。
    「濡れ衣トワイライト」★★★
    あまり助けたくならない依頼者。
    「泥棒たちの挽歌」★★
    序盤にでてきた●●●をオチに持ってくるあたりは気持ち良いが、少しやりすぎか。
    ここで何があったか、というテーマは面白くなりそうなだけに期待値が高かったのか、残念。

    ユーモアミステリとして紹介されているが、ユーモアはそれほどではない。
    また、探偵が主人公のため、地の文に真相は書けないし、
    思考の流れに関係なく突然の解決になっているのがイマイチ。

  • 生まれながらの聴き屋体質の大学生・柏木が遭遇した四つの難事件。
    誰よりもネガティブな性格の先輩、推理マニアの美男子学生作家など、文芸サークル第三部〈ザ・フール〉の愉快な部員たちが謎解きを繰り広げるユーモア・ミステリ。

    「放課後探偵団」というミステリアンソロジーに載っていた聴き屋の短編が面白かったので読んでみました。
    期待を裏切らず、この短編集も面白かったので満足です。

    聴き屋という設定がまず面白いし、文芸サークルなどの大学の面々との会話も愉快。
    日常の謎だけではなく殺人事件も出てくるけど、何気ない手がかりを元に真実があぶり出され、論理的思考によって解決が導き出されるカタルシスがたまらない。
    読者に公平な証拠を提示してくれるので主人公と一緒に推理しながら読んでいくのも楽しい。

    次回作もあるようなので、そのうち読んでみたいと思います。

  • 聴き屋体質の大学生が遭遇する事件。人が死んだり日常の謎だったり。
    2016/5/4

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